ループどうこうよりJSが怖くて仕方がない
ネタを思い付いて細かいことはさておいて勢いで書いてます。オチまで書ききる自信はありません。誰か代わりに書いてくれ。
恙無く。
滞りなく。
なんの変哲もなく。
変化もなく。
今日もホームルームが終了した。
俺は部活動生でもなければ、教室に残ってウェーイするパリピでもないので、放課のチャイムが鳴り止まぬうちに教室をあとにする。
階段を下って下駄箱へ。廊下に満ちる青春の喧騒はイヤホンから垂れ流される流行りのロックに掻き消される。話し掛けられることなどないからなんの不都合もない。
流れるように校門へ。入学以来何度も通った道だ。右手に持ったスマホの液晶しか見ていなくとも問題ない。
校門の外は流石に。一瞬目線を上げて通るルートの安全を確認…右から赤いランドセルが駆けて来るのが見えた。通りすぎるまで止まる。うん間違いなく俺は止まったんだ。ぶつかってなどない。
何でこのランドセルは地面に転がって泣いている?
勝手に転んだからだ。誓う。俺は関係ない。
いつもの何倍も視野が広い。そこのセーラーども、うるさいロックに遮られても分かるぞ。俺が悪いって言ってんだろ。
ランドセルも泣き喚く。酷くなってないか。我慢しろよ。急いでたんだろ。早く行けよ。
ああもう。
左のイヤホンを外して屈み、左手を差し出した。
「ああっと………大丈夫?」
思っていることの一割も口から外に出ていかない。早く立ち上がって行ってくれよ。俺の前以外転んでくれよ。そんなに小さくないだろ泣くなよ。
女の子は手を取り、体を起こし、立ち上がる。
「ありがとう。お兄ちゃん優しいね! 」
今までのがまるで嘘だったかのように、大輪の笑顔を見せてランドセルは去っていった。
別に…俺は優しくなんかない。仕方がないから手を出しただけだ。優しくなんかない。
手のひらに残ったほんの数秒の繋がりが、いやに意識から消えなかった。
―――――――――――――――――
気を取り直して日常を。
校門を出て五分も歩かない大通りの交差点。
日差しが邪魔だ。スマホが見にくい。
できるだけ下がってビルの影に逃げ込む。
少し目線を上げて…しばらく変わりそうにないな。目線を戻してポチポチ。
…? なんかあった?
何となく気になって顔を上げると、灰色のバンが遠くから猛スピードで走ってきていた。
は?
赤のはずの交差点に突っ込んで左から来た車に側面を叩かれて進行方向が逸れてつまり俺がいる角へ横断歩道ギリギリに立っていたセーラー服を一つかっさらって俺の二メートル横の壁に
うるさいロックはそれ以上の轟音で掻き消された。
―――――――――――――――――
「ええ、もう知っている人もいると思いますが、昨日クラスの――さんが交通事故で………」
翌日。
朝のホームルーム。
教室にはいくつかの空席。死んだやつの数より多い。
今日古典の小テストあったな。俺も休めば良かった。…なんて。
…ダメだ。動揺してる。帰ろ。
「なあ昨日見てたんやろ。どんなんやった…ちょシカトかよ!」
早退の希望を伝えに職員室へ。却下された。何故? 保健室で休めと。カウンセラーがいるからと。
保健室で一日潰した。カウンセラーとは世間話だけ。
放課のチャイムと同時に保健室を出る。
一階なので直ぐに校門へ。
イヤホンとスマホは昨日と同じ。
校門を出て、目線を上げて、右から赤いランドセルがまたかよ! 俺の前でやっぱり転んで泣き出した。
もう今日は良いんじゃないかな。無視して行こう。歩き始めると
足を。
掴まれた。
落ち着け心臓相手はJSだ命の危険はないいやワンチャンメンヘラストーカーだったらどうだ大丈夫俺の顔と性格じゃあり得ない落ち着いていこうはい吸ってー吐いてー。
目線は遠く向けたまま両耳ともイヤホンを外してスマホもポケットにしまう。怖い下見れない。
「…ごめん。やり直します」つい敬語が出た。
「うん。お願い」まさかのお返事頂きました!
宣言通り立ち位置を戻し、屈んで、左手を差し出す。
「…だだだだいじょうぶ?」思い切り声が震えた。笑え! 笑えよ畜生!
女の子は手を取り、体を起こし、立ち上がる。コピペか。
「ありがとう。お兄ちゃん優しいね!」
これが優しさだってんなら、俺は二度とバ○ァリンを買わない。
―――――――――――――――――
気を取り直して日常を。………あれ?
校門を出て五分も歩かない交差点。
さっきのが衝撃過ぎて、イヤホンもスマホも装備せず、半ば放心状態でやって来た。
できるだけ下がってビルの影に。日差しあるからね。手元にスマホはないけど。
少し目線を上げて…しばらく変わりそうにないな。目線は戻さずキョロキョロ。
流石に気付くぞ。デジャヴだこれ。
あれもこれも既視感がある。
何よりもだ。すぐ目の前の横断歩道ギリギリの、セーラー服三つの並んだ左の!
お前昨日死んだだろ!
灰色のバンがやって来て。
左のセーラー服が潰れた。