帰還
「違うよ!魔法使いだよ★『クウィンディア王宮就き魔法使い・ピンポンパン』っていったらこっちの世界では結構名の知れた存在なんだからね!」
ピストニカが手を腰にあてて威張る。
ピストニカ・ポレント・パリラを縮めてピンポンパンらしいがいかんせん、チャイムっぽい。
「…心臓ってレバーだっけ?」
拓斗が消え入るような声で尋ねる。
「いや…心臓はミノ…じゃなかったですかね?」
田所が「最近焼肉屋なんてご無沙汰だからなぁ」とか愚痴る。
「私はあれが好きだわー、えっと…ポルノン?」
やす子が不思議な言葉を口走る。
「レバーは肝臓、ミノは胃。やす子さんの言いたいのは恐らくホルモンですね、ポルノンじゃなんかいかがわしいですし。ちなみに心臓はハツ」
七瀬がまた現実逃避をおこしかけている。
「ミシェルーっ!!どうしよう!僕の心臓は君のものなのに呪いがかかってしまったよおおお!愛の力で浄化してくれええええっ!!あっ!たしかミシェルは巫女ヴァージョンに進化が…」
「…いいわ、とにかくいったん帰らせてくれるんでしょう?私達が何も出来ないってわかった時点でその呪いは解いてくれるんでしょうね?」
安藤泉の叫びを一睨みで黙らせた後、髪をかきあげながら溜息とともにアケミが言葉をはく。
「本当に申し訳ありません。でも私達の死活問題ですし、お許しください」
フェオリア姫がその可愛らしい顔にめいっぱい笑顔をつくる。
「あ、アタシのことはリアって呼んでくださいね。異世界の友人を持てる事光栄に思います。」
言葉は丁寧だがどこまでも自分勝手だ。
「じゃあとりあえず君達世界の時間軸で三日後にまた来てよ!あの箱に魔法かけとくから。」
「いい?元の世界に戻った時間からきっちり三日後の同じ時間に7人であの箱に入ってね?一人でも欠けたらみんな道連れだよ?」
「あんまりこんなこと言いたくないんだけどー…」
「「「命が惜しかったら言うことを聞いてね★」」」
7人が半分死んだようになってエレベーターに乗り込む。
三つ子はエレベーターの回りを取り囲むように立ってブツブツ呪文を呟いている。
エレベーターの扉を田所と厳蔵が手動で閉めるとき、フェオリア姫が笑顔で手を振って言った。
「またお会いしましょうね!」
愛らしい姫君が異世界の住人に再会を約束して手を振る。
まるでファンタジーの最後、感動的な一場面。
ただし
送られる側の異世界の住人、7人はとてつもなく嫌な顔をしたままだった。
来た時と同様、ピンク色の怪しげな光がエレベーターを包み込む。
上下運動ではない衝撃が7人を襲うが誰も悲鳴なんてあげない。
疲れて声なんて出したくないらしい。
どれぐらいそうしていただろう。
チン
聞きなれた軽い音がしてエレベーターの扉が開いた。
「お?これからみなさんお出掛けかい。」
1階のエレベーターホールで管理人の長谷川(五十一)が掃き掃除をしながら声をかけてくる。
「いや、今やっと帰ってきたトコよ」
7人を代表してアケミがボソリと答えた。