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七瀬と田所とやす子とピンポン

「僕達って実は結構有名人なんだよ」



ピストニカとポレントが先刻からじゃんけんをしている。

三つ子だからなのか、ただたんに偶然なのかわからないがずっと「あいこ」が続いている。


「『お城の魔法使い』ってそう簡単なれるもんじゃないのに僕達ってばこんなに若くして、しかも三つ子でじゃん?巷じゃ騒がれてんだよねー」


あいこでしょっ

しょっ

っしょ


「あいこでしょっ!っと…肖像画とかは出回ってないはずだけど、王宮魔法使いの制服ローブ着てて同じ顔が二人いるからバレちゃったんだろうねー。三人いなくてもバレるもんだねぇ…あ、また一緒じゃん、しょっ」


ピストニカが掛声の合間に説明する。

お城に双子の魔法使いがいない限りそりゃあわかるだろう。


「僕達本当は5.6年前から姫様の護衛も兼ねてお城で働いていたんだけどいくらなんでも若すぎるからってことでおおやけにはしてなかったんだよね。だから正式に『王宮付き魔法使い』になったのは数ヶ月前。告知を見た城下の人達は新しい魔法使いがどんなのか気になるんだろうね。」


そうポレントが補足する。


「三つ子で若くて、しかもまだ未分化中性体とか陰口要素盛りだくさんだからね。騒がれてもしかたないんだよ」


少しだけ苦しそうに笑う。

あいこでしょっ


「あ、負けた」


ピストニカがむーと唸りながらしゃがみこむ。


「あー、つい静観してしまっていたけどさ、何だってじゃんけん?」


異世界人だいひょーとか言いながら七瀬が挙手。

ちなみに他の異世界人2人は…


「あら田所さん!この腰ミノちゃんと裏地が付いてるんですね!いい仕事してますねー」


「ひょわう!め めくらないで下さい~

 足がスースーするぅ~」


やす子が腰ミノを興味深そうに触るので田所が逃げ惑っている。


「うふふ よいではないかよいではないか」


「や や やす子さん!!いけませんそんな!私には妻子がぁっあーれー」




主婦とサラリーマンの寸劇(?)を七瀬と三つ子二人が冷ややかな視線で眺めている。

ツッコミ属性達は少々疲れているらしい。


「えー…、で?」


気を取り直して七瀬が促す。


「ほら、同じ格好でいると目立っちゃうじゃん?だから今ピンが変装してるの」


ほら とポレントが促すとたしかにピストニカは着ていたローブやらケープをばさばさ脱いでいる。

いくら人通りが無いとはいえこんな路地で!と 七瀬があわてて止めようとしたがよく見るとローブの下にちゃんと服を着ていた。


「七瀬―ヘアピンとか持ってない?」


真っ黒のローブをたたんでポレントに押し付けると、ピストニカが肩位までで無造作に切られた髪を押さえながら寄ってきた。

ローブの下には臙脂色で膝丈のノースリーブワンピを着ていて、すらりと伸びた手足がよく引き立っている。

素足にはいた皮のサンダルには小さなガラス玉がいくつも縫い付けてあってキラキラと光る。


「へー本当だずいぶん印象変わるね、黒よりも赤いワンピの方が似合うじゃん。可愛い可愛い。」


「えへへ そう?これバーゲンで安かったんだー」


ピストニカが嬉しそうにくるりと回る。

同じ顔の性別不明な三つ子が同じ黒いローブで並んでいると一瞬気負いするほど圧倒的な存在だが、こうして私服で騒いでいるとごくごく普通の少女のようだ。



「あらあら本当に!手足が長いからモデルさんみたいねぇ!」


やす子も腰ミノをむしる手を休めて褒める。

その傍らには足を揃えて横座りしている田所が「よよよ」とか言ってる。


「あーごめんヘアピン持ってない、髪ゴムでいい?」


「うん、ゴムでもいいや。貸してー」


七瀬が鞄から髪ゴムを見つけて渡すとピストニカは手櫛で器用に髪をハーフアップ(頭の上半分の髪を後ろで結び残りを下ろしている髪型)にまとめた。


そうしてからポレントと並ぶと流石に顔は一緒だがずいぶんと雰囲気が異なる。


「「ほら、これなら大丈夫」」



「すごいですねぇ、人間着ている物だけでもずいぶんカンジがかわりますね」


田所がよろよろと立ち上がりながら感心して呟く。

確かに、まがりなりにもスーツでネクタイ着ていた人間が白シャツの上に豹とゼブラの入り乱れたような柄のベストを着て腰ミノを着けていたらずいぶんカンジが変わるが。



「ポンちゃんも下にワンピース着てるの?」


腰ミノでめくり癖をつけたのかやす子が興味深そうに手をわきわき動かす。

ポレントは引きつった笑い顔のまま二・三歩後退し自分で少しだけローブの裾をまくり首を横に振る。

下にはシンプル木綿のシャツとデニムのような生地でできたパンツ、それにスニーカーという少年のような格好らしい。


ピストニカは女の子っぽくてポレントは男の子っぽいカンジなのかなあ とか七瀬は思った。


「さて、じゃあこれで心置きなく目的地に向えるね。つうかさ、公爵令嬢さん大丈夫なわけ?こんな寄り道しちゃってて」



「そうよね!大変だわぁ!!のんびりお茶したりお洋服選んだりしちゃったけど大丈夫かしら」


「へ?誰か大変なんですか?」


腰ミノはすでに目的すら忘れている様子。



するとピンとポンは顔を見合わせ少し神妙な表情で頷きあう。


「実はさ、僕達もちょっとおかしいなって思いはじめてるんだよね」


「そうそう。いくらなんでも遅い」


そう言って二人で空を見上げる。

「…え?なに??どういう事?その仕草は私達の歩みが遅いから空を仰ぎたくなるとかそういう風にとらえればいいわけ?」


「ええ?!やっぱり大丈夫じゃなかったのかしら!」


「わ 私はおかしいんですか?」


口々に疑問を投げかける三人。

そして最後の質問にはイエスと答えたい。


「ああ、いやそうじゃなくてね。最初城で『公爵令嬢がさらわれた』って聞いた時、お姫様はそうとう動揺してたけど僕達はそう事態を重く見ていなかったんだ」


ポレントが言いづらそうに口をひらく。


「なぜかっていうと『すぐに護衛のポリー・ポリーが現場に向った』って聞いたからね。他国の土地にいたにもかかわらず主人の危機を察したってことは公爵令嬢の動きがわかるなんらかの守りの魔法をかけてあるってことだし。」


「それにポリー・ポリーは公爵令嬢のアンジェリカ様を溺愛してるからそりゃもう死に物狂いで探しているはずなんだ。だから僕達がこうやっている間に『見つかったよ』っていう連絡がパリラを通してあるんじゃないかなって期待してたんだよね」


だから連絡文書がこないかなと思って空を見た。



「ふうん、つまり私達が探すまでもなく見つかると思ってたんだ。だから結構余裕かましてたってわけか」


七瀬がそうならそうと先に言ってくれとふくれる。


「でも確かにお城の兵士さんとかも探してらっしゃるわけですから『もう見つかった』という事だって考えられますよね。ケータイで連絡しあえるといいんですが…」


ここ圏外ですしね、とかいいながら田所が携帯を振る。

そういえば昔PHSとか電波状況が悪いと振ったり髪を梳かしたりしたなぁ。



「それじゃあ早く『裂け目』行ってみましょう!犯人さんが現場に戻っているかもしれないわ!

 事件は現場でおこってるのよ!!ソウサクレイジョウのシャンデリアちゃんもきっと無事よ!!」


やす子が数日前の金曜ロードショーで見たらしい映画の影響を受けまくっている発言。


「あのぉ やす子さん…、公爵令嬢のアンジェリカさんですよ」


彼女の名前間違いにはもう誰もつっこまないので田所が恐る恐る訂正する。


「あら!あらあらあらぁ~」


間違っちゃったわ~とかいながら照れ隠しなのかやす子は田所の腰ミノをむしりだす。


「ああああああああぁぁ――――――――」


田所の悲痛な叫びが路地にこだましているが、七瀬とピン・ポンは聞こえないふりをして大通りに出て『裂け目』へと向った。


そういえばまだコッチが終わっていないのに新しいのを投稿しはじめました。

https://ncode.syosetu.com/n3544hs/

『電話相手の声がとんでもないイケボだったが実際会ったらやばかった(ハミングバードは歌えない)』長いタイトルにしよう!と思ってつけた。


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