腰ミノ
「あ、服変えたんだー!もしかしてあの古着屋?アハハハっ田所のオジサンいいねそれ!!なんか強そうだよ(笑)」
先刻までヤバイヤバイと騒いでいたのにもうピストニカが爆笑している。
拓斗・厳蔵・安藤泉がそろって居なくなった話を聞いたポレントが
「外堀を越えて森に迷い込まなければ『裂け目』もないしここは城下町だし治安も悪くないから大丈夫。裏通りに迷い込んでいるとやっかいだけど今日は幸か不幸か公爵令嬢の事があるからあちこちに城の兵士や公爵家の人達がいるし城の場所を聞く冷静ささえあれば城に戻ってくるよ。」
となだめ、「それでも一応」と城で待機しているパリラに連絡をとった。
その辺の店でもらった紙に事の次第を書き、口の中でなにやら呟いていたかと思うと手放した紙が風に乗るように城に向って飛んでいった。
「えへへ、そうだよね!城下町で迷子になったって死にゃしないよね!つい焦っちゃったよ~」
さっきまで泣きそうだったのが嘘のように笑って、田所のとんでもない服装をからかったりしていたが
「でもねピン、あの三人が一斉に別方向に走り出したならとりあえず拓斗を追うべきだったと僕は思う。」
ポレントにそう釘を刺されガクリと落ち込む。
確かに厳蔵や安藤泉は柄の悪さや得体の知れなさで良くも悪くも声をかける事すら躊躇われるが、拓斗は極々普通の(ちょっと生意気な)子供なのだから。
「だってだってー!あの三人をいっぺんに見ろって方が無理なんだよぉ僕だって七瀬達の事だったらちゃんと案内できたよー」
そう言ってふくれる。
そんなやりとりを見ていたやす子が
「ピンちゃんはもしかして末っ子?」
などと訊ねるのでピストニカはますますふくれる。
「ねぇ、なんでもいいけど服を着替えたのにさっきより注目されている気がするんだけど」
七瀬が田所を横目で見ながら呟く。
「わ 私のせいですか?!」
田所、腰ミノを揺らしてもだえる。
ソンナコトナインジャナイデスカァ?
とか物凄い棒読みでフォローするやす子。
確かに5人が歩いていると道行く人々のチラチラと窺うような視線を感じる。
しかもそれは先刻葬式用白ローブを着ていた時の『ああ なんかヤバそ~目合わないようにしよう~』みたいなカンジではなくあきらかに『ああ 気になる気になる、隙あらば話しかけたい』といった種類の注目のされかたなのだ。
「えー?でも田所のオジサンの服似合ってるよー?きっと芸人かなんかだと思われてるんじゃない?」
腰ミノから鳩とか出したら拍手してもらえるかもよーなどと投げやりな事を言うピストニカ。
すると少し前方を歩いていたポレントが振り向いて手振りだけで4人を横道に誘う。
一本路地に入ると賑わいを見せている大通りとはうってかわって裏口があったりゴミ捨て場があったりするだけで人通りも無きに等しい。
道幅も狭く、人間がギリギリ三人並べる程度だ。
「やっぱり目立つみたいだね」
ポレントが小さく溜息をつくように、眉を顰める。
「腰ミノだから?」
「でも素敵な腰ミノだわ」
「うん、似合ってるよ腰ミノ」
「やっぱり私の腰ミノがいけないんでしょうか…」
4人が腰ミノを評する。
が
「違うよ、腰ミノは関係ないって。目立っているのはピンがいるせいだよ」
「ええええええええっ?!なんで?僕?!僕腰ミノなんて着けてないよっ?!」
慌てて身体を点検するピストニカ。
七瀬達も首を傾げる。
どうみてもポレントとピストニカは瓜二つだし差異は見受けられない。
「ああ、正確には『僕とピストニカが一緒にいる』せいなんだよ」
「「「え?」」」
「――――――っあ」
いかにも面倒だといった様子のポレント。
意味がわからない七瀬・やす子・田所。
思い当たるフシがあるらしいピストニカ。




