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3つ子の3分の2

「田所さん…断れなかったんですか?」


七瀬が気遣うような声をかける。

が、残念ながらその表情から笑いをかみ殺すに精一杯なのがモロバレ。


「あら、でも似合っていらっしゃいますよ?なんていうか…南国チック?」


ウフフ とやす子が田所の腰を見つめる。


「うん…えっと…良く言えばワイルド…?」


自分が連れて来た店なので責任を感じてかポレントが気を使っている。


「はぁ…、ええ…、その…ちょっとチクチクします…」


田所が力無く笑う。


4人が話しているのはファンキーなおっさんが経営する古着屋の隣にある喫茶店みたいな店。

そう広い店ではないがどうやらこの世界ではチェーン店らしくアルバイトらしい若い少女達が短いスカートで笑顔を振りまいている。

簡素な丸いテーブルにやはり簡素なイス。

コーヒーは底が見える程薄いが、魚のフライが挟んであるパンはなかなか美味い。




「この店の看板ってすごく見たことある…」


店に入る際七瀬がぼそりと呟いた、


「あら、そういえば私も…とても馴染み深い感じがするわぁ」


やす子も頬に手をあてて首を傾げる。


「だ 大丈夫なんでしょうか…訴えられたりはしないんでしょうか…」


オロオロきょどきょどする田所。


「えー?この店異世界にも進出してるの?確かにこのチェーン店あらゆる場所に店舗があることで有名なんだけど…」


流石に異世界にまではないはずだよーとポレント。

ちなみに店の名前は『イエローカモメ』。


…既にわかった方もいるかもしれないがシンボルマークは黄色いカモメの簡略絵。

地球のあらゆる場所に出店しまくっている赤い髪の道化師がマスコットキャラのあの店と非常によく似ている。





『イエローカモメ』でお茶している田所・七瀬・やす子グループは服を着替えた事によってかなり街にとけこんでいる。


七瀬はごくごくシンプルな生成りのワンピース。

裾と袖に鳥の羽を織り込んだ繊細な刺繍が施され美しい。

少しダブつくので腰辺りを飾り紐で結んで調整している。

靴も学校指定革ローファーでは合わないので踵の無いスリッポンを買った。



やす子はベージュのパフスリーブのブラウスに赤いスカーフ。

赤いロングスカートの上に腰から白いエプロンを巻いている。

ちょっと年のわりに若々しい衣装だが丸顔童顔なのでよく似合う。


そして田所は…

開襟の白いシャツの上に豹とゼブラの入り乱れたような柄のベスト、最近抜け毛が気になる頭にはなにやら文字が書かれているハチマキ。

で、下半身は腰ミノ。


…腰ミノは店主からのサービスらしい。

サービスっていうか強制。

スーツの下に穿いていたモモヒキはそのまま穿いているので腰ミノとモモヒキが絶妙なハーモニーを醸しだしている。

しかも靴は革靴。



「ちなみにそのハチマキには『精力絶倫』って書いてあるよ」


ポレントがにっこり微笑んだまま解説する。

(注※意味がわからなくても親御さんに尋ねたりしてはいけない)




「さあ、お洋服も買ったことだし喉も潤ったし、いよいよ『裂け目』に行ってアンジェリカちゃんをさらった悪い人を見つけてボコボコにするのね!」


救世主っぽいわあ とか言いながらやす子が指の関節を鳴らす。

バギョバギュ…

なんだか恐ろしいほどいい音が出ているが他のメンバーは気付かないフリをする。


「そ 装備は本当にこれでいいんですか?やくそう買いだめとかしなくていいんでしょうか?私はいつも武器防具はその町で一番高いものを揃えてからしかボスを倒しに行かなかったのですが…」


RPGゲーム好きらしい発言をする田所。

地道にレベルあげして金を貯める系のプレイヤーの様子。


「田所さん、一応補足しますが私達死んだら生き返りませんからね?リセットボタンとかありませんからね?…だから私や田所さんの場合は敵にあったらコマンドは『逃げる』しかないんですよ。『戦う』のコマンドはやす子さんと魔法使いにまかせるしかないんです」


そしてレベルも上がらないし魔法も特技も覚えませんよ。

と 七瀬が冷静に解説する。



「なんかよくわからないけど出発するよー。」


ポレントが3人を促して『イエローカモメ』を出る。

まだお昼ちょいすぎなので通りは先程同様とても賑わっている。

が、なにやら買い物をしている人や路上の売り子が妙に斜め上の方を見ている。

その事に気が付いた4人も人々が見つめている先に目をやると…




「ピンっ?!」


ポレントが驚いて叫ぶ。

地面から数メートルの空中をキョロキョロ焦った様子で飛んでいる

黒髪黒ローブ(ところどころに鳩の白い羽がついている)の魔法使い。

顔は七瀬達のすぐ横にいる今叫んだ人間とまったく同じ。


「あれ?ポンっ!うあーポレントおぉ―――――――っちょっと聞いてよおぉー!やばいよ――――――っ!僕、拓斗達を見失っちゃったんだよーっ!!」


地上の注目を集めていた魔法使いは一直線にこちらに降りてくる。

同じ姿形の人間が二人になったことで注目度アップ。

けれどパニくっているピストニカはそんな事お構いなしに事の次第を4人に訴える。


「えー?!拓斗も厳蔵のおっさんもヲタクの兄ちゃんもいっぺんに見失ったの?」


ポレントが騒ぐピストニカを落ち着かせながら眉を顰める。

どうやらポレントとピストニカではポレントの方がしっかり者らしい。


「あらあら…、拓斗くんまだ小学生なのに異世界で迷子だなんて困ったわねぇ…」


お城からスピーカーとかで迷子放送してもらえないかしら?

などとやす子が呟く。

はたしてこの世界にスピーカーがあるのかは謎だ。


「う…うう…、厳蔵さん拓斗くん安藤泉くん…君達の犠牲は決して無駄にはしません…」


田所が涙ぐむ。


「死んでない死んでない」


七瀬が小さくツッコム。



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