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ポ七や田 服屋


「うーん、でもそう簡単なものでもないんだよ。異世界移動なんていう高等魔術は結構制約が厳しくて…。僕らも結構ダメ元でやってみた感じでさ。

ほら、自慢だけど使えるだけの魔力はあったから。

なんて説明しよう…専門的なことは分かり難いだろうから例えで話すね。

まず世界と世界の間に細いパイプみたいなのをねじ込むじゃん?で、その先端が到達した場所が君達の乗っていたあの箱だったんだ。

いったんパイプが貫通してしまえばあとは魔力がそんなに強くなくてもパイプを通して世界を渡らせる事が可能。

ただし世界を渡れるのはパイプを繋げた時に居合わせた人間のみ。

…なんか意味不明って顔してるね。」


田所はえーとかあーとかいってごちゃごちゃになった頭を左右に揺らしている。

やす子はパチパチパチパチ瞬きの回数が異様に多い。

七瀬は腕組みをしたまま目を瞑ってしまう。


「え ええと…そのパイプは私達7人以外は通れないんですか?道が出来たと考えるのならこっちに来れそうですし反対にこっちからあっち、つまり地球にも行けそうな気が…」


田所がゆらゆら揺れながら疑問を口にする。


「いや そう上手く出来ている訳じゃないんだよねー。あのパイプは君達専用。君達だけが通る事のできる道なんだよ。」


なんでって聞かれても説明するには魔法理論とか空間移動術とかワリュエルア聖典の基本的概念とかを交えて話さないといけないから恐らく意味不明だよーと ポレントが眉をさげる。


「とにかくつまりオーダーメイドの一点ものなのね?あらあらなんだかセレブな感じね!」


何故かやす子が嬉しそうだがマンションのエレベーターから異世界に通じる穴をオーダーメイドしてもらうようなセレブはまずいない。



「やす子さん、ポジティブですよね…」


こんな強制的に救世主になんかにされてあんなドロドロと戦う事になって、しかも今なんて死人用のローブとか羽織って異世界の町をうろついている状況下で…。

痙攣したみたいな微笑を浮かべた七瀬が抑揚をつけずに一人ごちる。



「本当に羨ましいです…私のネガティブさをお裾分けしてさし上げたいです」


田所が両の手を前にだしてふにゃふにゃ振っている。

恐らくそこからはネガティブビームが出ている感じ。




「田所のオジサン…影薄いようでキャラは結構濃いよね。」


魔法使いでしかも三つ子なんていう濃い設定のポレントに引き気味に評される田所。




そんな風に4人でだらだら喋りながら歩いていたら古着屋に着いた。


屋台よりもちゃんとした店構えだが商品はごちゃごちゃ置いてあるカンジ。

ローブのようなものやワンピースみたいなのは壁や棒にひかっけてあるが

店の前や店内に置かれた大きめの籠にもバサバサ服が入れられている。

独特な少し甘めの香が焚かれていてエスニックな雰囲気。


4人がぞろぞろ入っていくと「らっしゃーい♪」と野太いオヤジの声がした。

そう広くない店内の奥まった場所にカウンターがありそこに五十代くらいの店員と思しきおっさんが座っていた。


「籠に入ってる服は全て1,000ディアでぇっす!。壁とかにかかっているのはモノによって値段が違うから値札を見てくださぁ~い☆」


野太い声のおっさんは微妙なオネエ言葉で愛想よく説明してくれる。



「まあ!それはお安い…のよね?」


奥にいる店員のおっさんを見つめたままディアって何だったかしら?一ドル百十円?とかやす子が首を傾げる。


「安いと思いますよ。確か100ディアはコーヒー一杯位って言ってたから1ディア=1円だと考えればいいんじゃないでしょうか」


奥にいる店員のおっさんを見つめたまま城で田所とパリラがしていた会話を思い出し七瀬が答える。


「城を出るとき一人5万ディア渡していただいたのでつまり5万円位持っているという事ですね」


奥にいる店員のおっさんを見つめたまま5万もいただいちゃっていいんでしょうか 申し訳なさそうしている田所。



「お金は城の経費でおとすから大丈夫だよ。…てかさ、気になるのはわかるけどそんなあからさまに凝視するのはどうかと」


奥にいる店員のおっさんからあえて目を背けつつポレントが3人をいさめる。


「きゃ!お客さまどうかなさいましたかぁ?そんなに見つめちゃ恥ずかしいですう~★」


野太い声のおっさんは握りしめた両手を口元で合わせ頬を染める。

おっさんはネコ耳カチューシャを付けている。

おっさんは乳首に星(☆)のシールを貼っている。

おっさんは腰ミノを巻いている。


「ポレント、まさかあの服装がこの世界では一般的な商人の格好とかではないわよね?」


おっさんを凝視したまま七瀬が無表情で訊ねる。


「違うよ」


やっぱこの店に連れて来たのは失敗だったかなぁ、でもここ安いし服の種類も豊富なんだよねー

とか微妙な表情でポレントが一人ごちる。


3人は今だ店員のおっさんから目を逸らせぬままでいる。

ネコ耳を付けて乳首に星のシールを貼って腰ミノを巻いた野太い声の五十代くらいの店員のおっさんは3人の視線を好意的に解釈したらしくご機嫌だ。


「ウフフ 沢山買っていってね!オマケしちゃうわよぉん♪」



少し甘いエスニックな雰囲気の香が漂う店内ではもう少しこのなんともいえない見つめあいが続きそうである。


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