『裂け目』の種類
「さて、それじゃ まずどう動く?」
三つ子の一人が地図を広げる。
だだっぴろい部屋だが流石に椅子が十一脚もあるわけがないので一同は床に車座になり座り込んでいる。
日本人である7人は体育座りとか胡坐とか正座とか地べたに座る事に慣れているが、三つ子と姫君はなんだかそれが新鮮らしくて微妙に中腰だ。
「とりあえず最初にすべき事はこの世界の把握だと思うわ」
アケミが地図の東西南北を三つ子に尋ねながら提案する。
「お姫様やあんた達に色々説明してもらうよりも先入観がないまま町や例の裂け目を見に行った方がいい気がする」
「そうね、知らない町の商店街で安い店を見つけると嬉しいのよね」
あらこのお城って海がそう遠くない場所にあるのね、とかやす子が地図を覗き込む。
「あの…町を探索する前にこちらのお金の単位とか…価値とか…教えていただいた方がいいのでは?」
田所がおずおず挙手。
「ああ、そうだね。とりあえず困らない程度の資金は渡しておくよちなみに金銭単位はディア。価値は…、100ディアはコーヒー一杯位。」
あとで用意して渡すね、とパリラ。
すると拓斗が身を乗り出して地図の赤丸をバンっと示す。
「てっかさ!さっきの怖いメイドの話聞いたじゃん?だったらまずそのさらわれた人助けに行こうぜ?
オレ達救世主じゃん?調査とかそういうんじゃなくてもっとカッコイイ事やりたい!!」
「ああ、そういや誰かさらわれたとか言ってたな。やっぱ正義の味方は捕らわれのお姫様を助けに行かなきゃ始まらねえよな!」
厳蔵と拓斗が「ねー」とか女学生のような結託をする。
「でもその件はお城の兵とかがもう調べてるんでしょ?それに誘拐されたのは公爵令嬢。お姫さまじゃないし。…この世界に詳しくない私達が手伝ったところで大して役にたたないんじゃない?」
本物の女学生なのにキャピキャピ感が皆無の七瀬は鞄から携スマホを取り出し、カメラで地図を写す。
するとピストニカが「なにそれなにそれー」とか言って目を輝かせる。
「そ それに先刻の話からすると今回の裂け目はショッカーが出てくるわけではないんですよね?僕はてっきり裂け目からはいつもショッカーが出てくると思っていたので『ショッカーの弱点』とかでググッたりミシェルが潜入捜査出来るように準備したりしたのに…」
安藤泉があわあわ忙しなく手を動かしている。
いつ着替えさせたのか不明だがミシェルはピンク色の全身タイツを着ている。
「愚かな事を」
そんな安藤泉を見下し、くくっ と悪代官のように蔑み笑う七瀬。
それを見て隣にいたピストニカがびびっている。
「ああ、そういえばそんな事言ってたわね。『裂け目のレベル』とは何?」
「それとさー、なんだっけあのなんか変な名前の、そいつも魔法使いなのか?練習するとオレも魔法使える?」
空飛びてーっ!!とか拓斗が腕をばたばた羽ばたかせる。
「拓斗のはどうでもいいのでアケミさんの質問の答えをヨロシク」
七瀬が先程の冷徹な表情をはりつかせたまま、ばたばたアヒルみたい動いている拓斗の頭にチョップして黙らせる。
そんな拓斗と七瀬を微笑みながら観賞しつつ姫君が口をひらく。
「そうでした、まだみなさんには『裂け目』についてほとんど何も話していないのでしたね。ではあまり先入観を与えないように現時点でわかっている事だけお教えします。」
姫君がそう言うと、まるで打ち合わせでもしたかのように自然なタイミングでパリラが後を引継ぐ。
「まず「裂け目」は突然地面が裂けて出現する、前触れとか出現場所の共通点などは不明。大きさは様々で今まで出現した中で最小は全長20m位、横幅は5m位、深さは3m位。最大はほら、最初に君達を連れて行った所で全長1キロちょい。」
「まあまあ、あの場所が最大の『裂け目』なのね。ずいぶん広かったものね」
やす子がおっとりと頷く。
「つっておいいいィっ!お前ら一番初めに一番ヤバゲなトコにオレ達連れてったのか?そんなのレベル1で最終ボスと戦うようなもんじゃねえかよ!」
「そそ そうだそうだ!まだ冒険を始めたばっかりで村人に話しも聞かずやくそうも買わずセーブもせずでボスと戦って死んだら冒険の書が消えてしまうじゃないかっ!!」
拓斗と安藤泉がぎゃあぎゃあ騒ぐ。
「私の時代は復活の呪文とかパスワードを紙に書いてましたよ。あれ一字間違えてもダメなんですよね。
母親にメモした紙を間違えて捨てられてしまった時は押入れに三日ほど閉じこもってました」
あの時私は若かった…と田所が懐かしそうに呟く。
「三日も押入れに…田所さん以外と根性ありますね」
七瀬が妙なトコロで感心している。
どうでもいいがゲームが一般家庭に普及したのはだいたい20年位前なので現在40代の田所がゲームをしていたのは彼が20代の時である。
…母親にパスワードの紙を捨てられ押入れに閉じこもっている20代の男はカナリ異様だ。
すると次はポレントが話し出す。
「救世主が戦う舞台はやっぱり一番デカイあの『裂け目』かなって思ったんだよ。で、『裂け目のレベル』というのは『裂け目』から湧いてくる敵の種類を強さごとに分けた名前。」
「一番弱いのは君達の言うところのショッカーこと『悪魔の下僕』。
こいつらは力もさほど無いし知能も高くない、大きさも人間位。次は『悪魔の蟲』。
カマキリやムカデ、クモなどその『裂け目』によって沸いてくる形は違うんだけどとりあえず虫っぽい種類。でも実際の虫よりメチャクチャ大きい。
で、次に強いのが『悪魔の猛獣』。虎とか牛とか熊とかそんなカンジの種類。
攻撃力が高いから凄く危険、この種類の『裂け目』が現れたらすぐに魔法使いが派遣され二十四時間体勢で見張らないと大変なことになる。
最後に今のところ一番恐ろしいとされている『悪魔の怪鳥』。幸いこの種類の『裂け目』は現在2箇所しか報告されていないんだけど猛禽類の姿をしていて空も飛ぶし『裂け目』から出て頭上から人間を襲う。これももちろん二十四時間体勢で見張りつき。それも高位の魔法使いが数人掛かりで。」
だから国中の魔法使いがヘロヘロなんだよーとピストニカが溜息をつく。




