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覚悟


「鉄製に加えて二重扉にしてもらった方がいいと思うぞ。てか今の人…えっとリリーだっけ?あの人メイドよりも兵士の方がいいんじゃね?」


リリーが部屋を辞した後すぐに魔法を解き、一同はまたわらわらと部屋に散らばる。


拓斗が見事に穴が開いた扉をマジマジ見て、ぶるりと震る。

その横でやす子が「なかなかの手腕ね、一度手合わせ願いたいわァ」と静かな闘志を燃やしている。


「あ…あれがメイドだなんて…メイドの神様への冒涜だ…」


安藤泉がミシェルを抱しめたままガクリと膝を落としてぶつぶつ呟く。

メイドの神様って何者だよとか周りの人間は思ったがいちいちツッコム気力がない。


「メイドに冥土に送られそうだな」

「彼女でしたら容易いでしょうね…」


厳蔵の親父丸出しなギャグに田所が顔をひきつらせる。


「お姫様、大丈夫?」


顔色の悪い姫君を気遣い七瀬が声をかけると姫君はちょっと驚いたようにまばたき、そしてすぐ嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます、ええ大丈夫です。…勝手に巻き込んでしまったのに気を遣わせてしまってごめんなさい。この世界の事はこの世界の人間がどうにかしなくてはいけない事はわかっているのです。

けれども、解決の手段が見つけられないまま…このまま手遅れになってしまわないうちにやれる事しておかなくちゃって…

神様に毎日祈ってもそれだけでは何も変わらないから、自分達の世界の為に関係の無いあなた方を強制的に巻き込んで…

自分勝手で恥知らずだと謗られ罵倒されても構いません、助けて下さい、お願い…アタシはこの世界が愛しいの。この世界を 助けて下さいっ…」



微笑んだ表情のまま、しかし言葉が震える

真っ直ぐな瞳は今にも溢れそうに潤んでいるが 涙を零すことをしない。



「…私はただの女子高生でなんの力もない一般市民だけど、この世界で何か出来ることがあるのなら、助ける。」


覚悟を決めたように、決然と七瀬が応える。


「こんな年端もいかない嬢ちゃんが世界をどうにかしようって本気で動いてるんだ。力になってやりてえじゃねえか、それが人情ってもんだろ」


厳蔵が乙女のように口元に両の拳をあてて瞳を潤ませる。


「あらあらあら、なんてしっかりしたお嬢さんなんでしょう。うちの息子にも見習わせたいわ!大丈夫よ、おばさんが世界でも宇宙でもなんでも救ってあげるわ!」


やす子が最近少し肉が付いてきたのを気にしている腹を叩く。

…細く見えるように少しばかりひっこめながら。



「わ、私だってやる時はやります!その…今まではなかなかやる時がなかったからにすぎません!実のところサラリーマンが世界を動かしているんです!太陽が昇るのも海の満ち引きもすべてサラリーマンが密かにやっている事なのです!!」


田所、それは嘘だろう。


「オレだってオレだって!勇者として生まれてきたからには世界の一つや二つ救わなきゃな!大船に酔ったつもりでいてくれよ!」


拓斗が振り回す度にぴよよーん ぽよよーんと剣が間抜けな音を出す。

船酔いはとても気持ちが悪い。


「ぼぼ ぼ 僕はっ何にも出来ないかもしれない…んですけどっ!ミシェルは愛と正義と希望と練馬区と三鷹山の使者だから!助けを求めている人間を助けないなんて事は出来ません!!だ だからだからっそんなミシェルの下僕兼恋人の僕はやっぱりミシェルの意思を…その…えっと、ちょっと怖いけど…出来るだけ頑張ります…と 思います…」


人形は「ファイトっ!」みたいなポーズをしている。

ところでミシェルの設定がどんどんワケがわからなくなっているのだかそれはもう書いている人間にもどうにもできない。


「私、小学生の時『将来の夢・世界征服』って書いたのよ。自分で征服するのならいいけど他人が征服してるのを見てるのは気分悪いわよね。…だから協力するわ。別にこの世界の為ってわけじゃなく私がただムカつくから。」


アケミが煙草を燻らせながらまるで「オレが苛めるのはいいけどお前が苛めるのはムカつくんだよ」みたいな好きな子を苛めているガキ大将のようなセリフを吐く。

…この説明は説明のくせにわかりにくいとかそういう苦情は受け付けない。



「ありがとうっ」


姫君が嬉しそうに笑う。

人が、本当に心から喜んで微笑んだらこんな美しい表情になるのだなとその場に居た人間は知った。

そして世界中の人間がみんなこんな風に笑えたらいいのにな と思った。


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