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公爵令嬢誘拐事件


「つい先程、公爵家の護衛兵数名が城の正門に移動魔法で現れました。

全員ひどく傷つき疲労しておりましたが命に別状はありません、今は城付きの医師が診ております。

事情を比較的軽傷の者に聞きましたところ、どうやら城に来る途中襲撃に遭ったようです。」


姫君の表情が翳る。

しかし取り乱すことなく冷静に訊ねる。


「襲撃してきた者達の素性と目的、アンジェリカの安否は?」


「はい、襲撃者自体は流れ者の集まりで5人。大して統率もとれていなかったそうです。公爵家の馬車を襲って金目のものを奪うのが恐らく目的だったのでしょう。」


「奇妙しいわ、そんな連中に公爵家の護衛が倒されるはずないでしょう?」


「ええもちろんでございます。公爵家から城までの護衛だったので人数こそ少なかったとはいえ腕の立つものばかりでしたので襲撃者達もすぐに撤退をはじめたそうです。 けれど…」


姫君の私室には姿を隠している者を含め実に12人もの人間がいる。

広い部屋なので狭苦しさはまったくないのだが、その話されている内容から空気がとても重い。


「その…襲撃に遭っている最中、公爵家の馬車のすぐ後ろに新たな『裂け目』が出現したそうなのです。」


あの地震で地面に亀裂が入ったような裂け目。

ベチャベチャとした泥の塊が襲ってくる忌々しい裂け目。


「…その裂け目のレベルは?」


「『悪魔の猛獣アルケリス』だったそうです」


姫君の堅く握り締めた拳が震える。

裂け目のレベルとかアルケリスとか、何の事だか異世界の7人にはいまいち不明だが姫君のその反応でそれがよくない事態であることはわかった。


「襲撃者に加え後ろからアルケリスに襲われた護衛兵達はそれでもアンジェリカ様を必死でお守りしたそうです。けれど襲撃者はこれ幸いとばかりに金品の略奪から公爵令嬢の誘拐、身代金へと目的を変えました」


「…アンジェリカは誘拐されたのね?」


吐き捨てるように姫君が呟く。


「はい」


そんな姫君を気遣わしげにリリーが答える。


「でも…アンジェリカにはいつも魔術師のポリー・ポリーがついているはずよ?傷ついた護衛兵を移動魔法で城に送ったのはポリー・ポリーでしょ?」


彼がついていたのならみすみす誘拐されるなんて奇妙しいわ

姫君が眉を顰める。


「それが…。今回ポリー・ポリーは護衛に加わっておらず、仕事の都合で隣国に渡られる公爵様の護衛をしていたそうです。…最近は物騒ですから隣国まで行くのにも命がけです、アンジェリカ様は「自分は国内で安全だからより危険の多いお父様の護衛をしてあげてくれ」とポリー・ポリーにおっしゃったそうです」


「力のある魔術師は少ないから…それに交代で裂け目の見張りもあるしね…」


「それでポリー・ポリーは公爵様についていたそうなのですが、隣国へ向っている途中でアンジェリカ様の危機を察して一人戻ったそうです」


「それで…襲われた馬車を発見して傷ついた兵を城に送り、今アンジェリカを探している。」


「ええ、そのようでございます」


リリーが重々しく言葉を切る。

姫君が虚ろな瞳で窓の外に視線をなげる。

朝と昼の中間のような時刻である今は、空が少し薄い色をしている。

緩く流れる雲と時たま風に揺れる葉すれの音、まるで平和そのものといったいつもの景色。


「アンジェリカは…大丈夫よね?」


「もちろんでございます!城の兵も公爵家の者もすでに動き出しております。すぐ無事に戻っていらっしゃますよ!!」


姫君を安心させようと懸命に笑顔を作るリリー。

…とても怖い。


そんな不気味な、けれど優しさのこもった笑顔を姫君は嬉しく思う。


「そうよね、またすぐ会えるわよね。」


自身に言い聞かせるように微笑んだ時、風で机の上に置いてあった地図がカサリと音をたてる。

…風で動いた。

リリーにはそのように見えた。



実際には三つ子の一人が地図を手で示し、姫君に合図を送ったのだ。


姫君はリリーに気付かれぬよう視線だけでそれを受ける。



「そうだわリリー そのアンジェリカがさらわれた場所、新たに裂け目が現れたのはどのあたり?」


クウィンディアの事は少しでも知っておきたいの と地図を差し出す。


「ええと…、たしかこの辺りだと公爵家の兵が」


リリーが指を指す。

姫君はその場所に赤いインクで丸をつける。


「ありがとうリリー。そして申し訳ないのだけれど熱いお茶を持ってきてくれないかしら。なんだか…胸が苦しいの」


そう言って力なく微笑む。


「無理もございません…。かしこまりました、すぐにお持ちいたします」


頭を下げ部屋を出ようとする。

と、姫君が思い立ってリリーを呼び止める。


「あ、それと大工のティンゼンさんも連れてきてくれる?」


できれば次は鉄製の扉をつけて欲しいと伝えてちょうだい、と愛らしく微笑む。


なんとなく同じ日にもう一回投稿

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