ピンポンパン
少し性別やISに関する記述があります。苦手な方やそういった内容に敏感な方、少しでも記述が間違っていたら何か言いたくなる方は読み進めずにとばすかこれ以上は読まないでください。
全員その穴を通って部屋に入った。
フェオリア姫の私室だというその部屋は可愛らしさと豪華さが見事に調和し彼女の趣味のよさを表していた。
先程螺旋階段から穴を開けた場所には縦長の鏡が据えてある。
「この鏡の裏に魔方陣がかいてあるんだよ」
姫君の部屋にいた三つ子の1人、パリラが悪戯っぽく指差す。
「どうせなら机の引き出しにすりゃいいのに。タイムマシンみたいに」
「それはタヌキロボットの専売特許だから駄目でしょ」
七瀬が拓斗をたしなめる。
「でも年頃の娘の部屋に男が自由に出入りしてるとなったら親が泣くんじゃねえか?」
厳蔵が腕を組んで唸る。
「へ?厳蔵さん何おっしゃっるの?ジンギスカンちゃん達は女の子でしょ?」
「やす子さんやす子さん、かなり離れちゃいましたよ名前…」
「えー?オレはほらピストニカだけ女だと思ってたけど違うのか?」
「僕は3人とも女の子だと思ってたんですけど…ねえミシェル?」
「私もそれはちょっと疑問だったわ、そこんとこ」
でも、そういうのってプライバシー侵害だしあまり話題にすべきじゃないと思う。とアケミがそう言って三つ子を見遣る。
姫君も「まあ」とか言って口元に手をあてる。
三つ子はまったく同じ顔で驚いたように瞬きをする。
黒いローブは踝まであり身体の線などはわからない。
身長は姫君より頭1つ分は高く、七瀬と同じ位なのでおそらく160センチと少しだと思われるが14・15歳であるということを考慮するとこれから成長もするのかもしれない。
超美少女な姫君が常に隣にいたので目立たなかった三つ子も容姿は十分整っている。
綺麗な顔をした少年でもありうるが美人系の少女ともとれる。
「みなさんご存知なかったんですか?」
「僕達言わなかったっけ?」
「あ、姫様は女の子だってわかってるんだよね?」
「やっぱ異世界では色々違うんだねー」
姫君と三つ子は何やら感慨深げにうんうん頷いてる。
「だ、だってよ、お前ら「僕」って使うから俺はてっきり…嬢ちゃんだったのか?す すまねえな…」
厳蔵がオロオロと戸惑っている。
「最近は一人称なんて色々でしょ?キャラによっては「ボク様ちゃん」なんていう自称代名詞を使用している少女もいるし」
あれはなかなか衝撃的だったなと七瀬が呟く。
「うーん、僕達は女の子ではないよ」
「え?じゃあやっぱり男の子だったんですか?」
今の子はよくわからないです、もう私はオジサンだから…と田所が床にのの字を書きだす。
慌ててやす子が慰めに駆け寄ったかと思いきや「田所さん、「の」ってそうやって書いてるんですか?真ん中から書き始めるんですよ?右端からじゃ書き順違いますよ」とダメ出しをしている。
「いや、男でもないんだよ」
ポレントが微妙な表情で言葉を継ぐ。
「話を聞いた感じだと君達の世界には存在しないみたいだけど、僕達は無性体だよ」
「……え?」
「えーっとねー、僕等の世界で生まれる赤ん坊は「女の子」「男の子」「無性体」の大体3種類なんだよね。その中で無性体は10%くらい。まあそんなに珍しくもないんだよね。」
拓斗が10%ってどれくらい?とか安藤泉の抱えるミシェルを引っ張る。
安藤泉はひいっとミシェルを抱き寄せ
「つ つつまり…100人赤ちゃんが生まれて10人くらいが無性体ってことだと思うよっ」とスゴイ早口で説明した。
「魔法の才能がある子供が無性体である事が多いとされています。もちろん男の子として生まれても女の子として生まれても魔法の才能がある人はいますけどね」
アタシは生まれた時から女の子だったんですけどやっぱり魔法の才能は無いみたいと姫君が寂しそうに微笑む。
「ふうん…ん?「生まれた時から女の子?」とはどういう意味?」
アケミがまるで自分の部屋のようにソファーで寛ぎながら訊ねる。
「ああ、無性体として生まれた人間は大抵10歳になる前に男女どちらかの性別に変化するんだよ。」
と、どう見ても10歳前ではないパリラが自嘲気味に答える。
「そう…。まあ例外はあるようね」
どうでもよさそうにアケミが灰皿を探している。
「し…知らなかった。俺はてっきり男か女しかいねえのかと思ってたぜ。」
厳蔵がカルチャーショックをうけている。
「おっさんおっさん、地球は違うからな?」
拓斗が訂正する。
「うお?な なーんだ、そうだよな!!」
あーびっくりしたーとか言って笑う。
「いやいや地球だって別に男女きっぱり分かれているわけじゃないのよ?」
アケミがその辺から高そうな皿を引っ張りだしてきて灰皿代わりにする。
「オカマとかオナベとかニューハーフもいるって意味か?」
「ううん、そうじゃなくて。染色体ってわかる?…ああ わかんないわね。ええとつまり…すごく背が高い人間や凄く背が低い人間がいるでしょ?尾骶骨が発達して尻尾みたいなものが生えている人間もいる。そんな風に見た目が大多数の人間と異なる人間はけっこういるワケじゃない?それなのに性別だけ男女にきっかり分かれているわけないのよ。大多数が男か女ってだけであって中間位の人間がいるのはそんな不思議な事じゃないでしょ?」
煙草の灰を綺麗な皿にとんとんと落とす。
少し甘い香りのする紫煙がゆるく波を描く。
「IS、最近は結構認知されていますね。二千人に一人くらいの確立だったかな」
たしか保健体育かなんかで習ったかも と七瀬。
「そうね、でもこっちの世界の無性体とは異なるけどね」
「うん、僕達の世界でももちろん無性体とは別にそういった性別で生まれてくる人もいるよ。ただ人数はぐんと少なくなるけど」
「男でも女でもないと学校とか不便だろうな、ランドセルの色とか…」
拓斗が眉間に皺を寄せる。
「でも今は結構カラフルだよね。深夜アニメの「隣のお兄様~突然妹が47人~」で猫耳スクール水着のマリリンは水玉のランドセルだし…」
「黙れヲタク」
七瀬が凍りの視線を投げた。
安藤泉に100のダメージ。
七瀬は安藤泉を倒した!
七瀬はレベルが上がった!