表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/46

御落胤


「まてまてまて何者だお前達!名をなろれっぷほぉっ」


門に近付くと兵士の服を着た男が槍を横に突き出し行く手を阻む。

短い赤茶の髪に灰色の瞳。

二十代前半のようだがまだ少年のような雰囲気の男だ。

そして最後の方のセリフと同時に口から飴玉が飛び出してしまい凄くあわあわしている。


「たしかにアホっぽいな」


「こんな門番じゃね…。とりあえずセキュリティ面を強化するべきだと思う。」


拓斗と七瀬がぼそぼそ呟く。


「レイルご苦労様―。この7人は悪者じゃないよ。」


ポレントが微笑みながら地面に落ちた飴玉を拾い門番の口にねじりこむ。


「そうそう、えっとねーんーっと…あ そうだ、城の近くで産気づいた妊婦さん達なんだよ!だから急いで休ませてあげたいから身体検査ナシで通らしてね。大丈夫僕達が保証するから☆」


ピストニカがとてつもなく無理な設定をひねりだす。


「う…産まれるううっ」


「もう駄目だぁータマゴが半分でてきたぁー」


厳蔵と拓斗が下手な芝居をしながら急いで門をくぐる。

こっちこっちとかいいながらピストニカが先導する。


「そ、それは大変ですね!わかりましたお通りください!う…口の中ジャリジャリ…」


門兵はオロオロと道をあける。

やす子は「ご苦労様です」とにこにこ愛想を振りまく。

アケミ・七瀬はローブで顔を隠しながらさっさと通る。


「この門番とりあえずクビにすべきね」


「私もそう思います」


「ミシェルー!頑張れー元気な子を産むんだよおぉ!!」


安藤泉が叫びながら足早に続く。


「あなたは旦那さんですか?奥さんを励ましてさしあげるんですよ。ああ…奥さんずいぶん小柄な方だ…」


「そうなんです!僕は出産なんて危険だって何度も言ったのにミシェルは危険をかえりみず…っ」


「うっ、なんて気丈な奥さんだ!」


門番は安藤泉の肩をバシバシ叩きながら涙をうかべる。

本格的にアホだ。


その横をローブを深く被り鞄を胸に抱いた田所が足早に通ろうとした、が。


「ううっ…。ん?おい待てお前!お前は男だな?!奥方の付き添いでもなさそうじゃないか!」


気付かれて呼び止められる。

田所はあわあわして「そんな!厳蔵さんや拓斗くんにはそんなことおっしゃらなかったのに!」とか悲壮な叫びをあげる。

ちなみに厳蔵も拓斗もさっさと城に入っていってしまった。


「オジサン、自信なさげだからバレるんだよー」


一番後ろに居たポレントが溜息をつく。


「おい三つ子魔法使い!こいつはなんだ!!」


「えーっと…」


面倒だなーちょっと気絶させちゃおっかなーとかポレントが考えてると突然田所が叫ぶ。


「わわ、わ 私はっ!かの有名なエチゴのチリメン問屋の隠居なんです!!世の顔を見忘れたかっ!」


「え…田所のオジサン狂った?」


「ひっ、え、え、あの…貴方様はご高名な方なんですか?」


田所のなんか色々混ざっちゃってるセリフに何故か門番はあわてる。

新米兵なのでもし自分の知らない高貴な人間だったらどーしよーとか思ったらしい。


「わ 我輩は桃次郎侍!しょぼくれたサラリーマンというのは仮の姿、その実態は将軍の娯楽印?!」


「ひえええっ!よくわからないけどエライっぽい!!」


田所が腰に手をあてて踏ん反り返る。

よく見ると膝がガクガクしているが地面に平伏している門兵は気付かない。


「娯楽印じゃなくて御落胤ね」


ポレントがボソリとつっこみながら田所を引きずるように城へ入っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ