かんがえるひとたち
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「じゃあ話し合いは今後どうするかって事でいいわね?」
アケミが栄養ドリンク(3千円位するスッポンの生血とか入ってるやつ)にストローをさしながら全員に問いかける。
「異議なーし」
拓斗がバランスボールに乗ってグラグラ揺れながら答える。
ちなみに何故バランスボールに乗っているのかというと、やす子の家は3人家族なのでリビングに椅子が7つも無かったからだ。
しかしどういうわけか、紫色のバカでかいバランスボールが3つもあったので拓斗と厳蔵と安藤泉はそれに座っている。
ちなみに間取りはキッチン付きリビング(8畳)・風呂・トイレの他に部屋が2つ(6畳と4畳半)。
このマンションの中では比較的大きな方だ。
リビングは綺麗に片付いているが、パッチワークキルトが飾られた壁の下に鉄アレイがあったりやす子の履いているピンクのチェック柄スリッパが妙に重そうな音をたてるのが気になる。
「やっぱり行かなきゃ駄目なんでしょうね、また3日後に」
七瀬が憂鬱そうに頭をかかえてテーブルにつっぷす。
テーブルの上にはインテリアなのか高さ30cm程のかんがえる人が置かれている。
「みなさんは明後日ご予定などは…?」
田所が出されたドクダミ茶にミルクと砂糖を入れてかき混ぜながら発言。
湯呑みが足りなかったのかティーカップに入っているのでコーヒーと間違えているらしい。
「俺はとくに何もねーけどな」
厳蔵がかんがえる人の置物に興味を持ったのか、いじくりながら呟く。
「あ…えっと明後日は土曜日なので…その…僕は9時から『浣腸タン』を観なくてはいけないので…」
安藤泉がオロオロしながら言うが黙殺された。
部屋から持ってきたのか、20cm程の人形を抱いている。
「私は部活の朝練に行く息子に朝ごはんを食べさせちゃえば大丈夫ですよ。あら、田所さん大丈夫ですか?」
やす子がそう言いながら田所にティッシュを渡す。
ミルクと砂糖はやはりどくだみ茶にはあまり合わなかったらしくゲフゲフと田所がむせている。
「まぁ予定があったところで行かないってわけにもいかないんでしょうけどね。」
面倒くさそうにアケミが溜息をつく。
「あの、しかしですね、ちょっと気になることに気付いたんですが…」
ティッシュで口元を拭いながら田所が挙手する。
アケミが視線だけで「言ってみろ」と促すと田所はおどおどしながら携帯をテーブルに出す。
「その…私はあちらに飛ばされる前と飛ばされた後すぐに携帯を見ていたのですが…その、時間がたっていなんです、あちらに少なくとも30分はいたはずなのに」
「え」
「それって」
「うおっ!すげぇファンタジー!!」
「どーゆうことだ?」
「まあまあ」
「それは確か?」
アケミが低い声で念を押すと田所はビクリと硬直したがそれでもこくこくと頷く。
「それって…いいかも…」
七瀬が口元をほころばす。
「つまりあっちに行っている間はこっちの時間が止まっている、と考えていいってことでしょ?だったらあっちで宿題とかすればみんなに差をつけられるかも…」
「それじゃあっちで救世主活動した後すぐにこっちに帰ってこねえでもいいってわけか。」
厳蔵が考える人を裏返しにしたり軽く振ってみたりしながら呟く。
「あらあら、それならショッカーと戦って疲れたとしてもあっちでゆっくり休めるのなら安心ね。疲れたまま急いで帰ってきて学校や会社に行くなんて大変ですものね」
やす子がそう言いながら厳蔵の弄くっている考える人を指差して「台座を右に回してみて下さい」と微笑む。
言われたとおり厳蔵が台座を右に回すと台座だけするりとはずれた。
はずれた台座の下には洋式便座が現れた。
「こりゃそうとう苦しんでるな…」
厳蔵が不憫そうに考える人(便座バージョン)をテーブルに戻した。