助言
「話を戻すぞ、桐生大護。さっきテメェが使った魔法――"混合魔法"に関してだが……扱いきれるようになるまでは使わねェ事を勧める」
「わかってるさ。発動まで時間が掛かり過ぎだし、実践だったらその隙に狙われ放題だしな」
その隙を冬馬に守ってもらって……なんて他力本願過ぎる事は言わない。一対一でも使える状態にならないといざと言う時には使えないだろうし。
と、的確な意見を言ったつもりだったが、俺の言葉を聞いたゼルは首を横に振って否定を表し、強調するように人差し指を立てる。
「それもあるかもしれねえェが、それ以上の問題が一つありやがる。使った本人であるテメェが気付かねェなら尚の事問題だ」
立てた指をそのまま俺に向けてくるゼル。人を指差しちゃいけませんなんて事は、この際置いておこう。それよりそれ以上の問題って一体……。
「確認だがァ、テメェ今魔力はどんだけ残ってやがる?」
「魔力か? さっき冬馬に回復魔法を使ったって事もあるけど、ざっと四割くらいってところか」
俺の答えに「やはりなァ」と思案顔を浮かべるゼル。質問の意図がわからんが、今の質問で予想が確信に変わったってところか?
「……俺様も"混合魔法"には手を出してたんだがァ、完成直前の試し撃ちの時思いもしねェ現象が起きやがった……何だと思うよ?」
"混合魔法"を使った身として考えてみるが、正直何も思い浮かぶことが無い。正直、雷属性以外の魔法を使うこと自体久々だったのもあり、そんな事を考えるような余裕もなかったってのが本音だけど。
考えても分からない俺は、ゼルの問いかけに対し首を横に振る。「そりゃそうだ」とでも言いたげな目を向けてきやがった太郎の態度はぐっと堪えろ。俺は大人だ、あんな態度には屈しないぞっ。
「答えは、魔力消費量が多い。って事だァ」
「……いや、そんなの――」
「二つの魔法を使ってるんだから当然だろ。テメェの言い分はこんなもんだろうが、そういう次元の話じゃねェんだわ」
ゼルに止められ紡がれた言葉は、まさに俺が話そうとしていた事だった。でも、そういう話じゃないってなると、一体どう解釈をすればいい……もしかして――
「必要以上に、魔力が使われていたのか……?」
「あァその通りだ。それも俺様やテメェがよくやるような、『一の魔力が必要な魔法に対し、わざと五の魔力を注いで強くする』なんて都合のいいもんじゃァねェ。威力自体は一の魔力を込めた時と変わらねェっつう、なんとも燃費の悪ィ状態が出来上がるって寸法だ」
「理屈は分かったが……なんでそんな事が起きるんだ?」
「"混合魔法"ってのは、言わば二つの魔法を無理やり併せる事で発動出来る魔法だァ。その魔法と魔法の繋ぎ目を担ってるのが魔力になると考えろ。その繋ぎ目をより正確に、確実に留める事が出来りゃァ、魔力消費量も減らせるだろうなァ」
「なるほどな……その繋ぎ目部分に使ってた無意識の魔力を意識的に操れれば、想定以上に魔力を消費する事はなくなるな。……なんか普通の魔法の方がいいんじゃないかって思ってきちまったな」
落胆する俺に対し「そうでもねェよ」と一声掛けたゼルは、更に言葉を続ける。
「"混合魔法"自体の威力は半端じゃねェんだ。テメェの最後の魔法……あー"メテオ・ストライク"っつったか? 普通の魔法じゃあんなの出来やしねェよ」
「いやでも……氷帝には結構簡単に破壊されてたぞ? 数で押し切れたから良かったものの、威力に関しては普通の魔法と大差ないんじゃ……」
顔面に手を当て天を見上げながら溜息を吐くゼル。オーケイクールに行こう。今は教わってる立場だ。
「どうやら先ずは、テメェ自身の無知をどうにかしねェとならねェらしいな」
無理。クールに行けそうになくなった。
「……なんだよその言い方。俺だって多少の知識は持ってたからこそ"混合魔法"も使え――」
「テメェの言う知識ってのは、"こっち"で得たモンじゃねェだろ? 地球のゲームやら漫画やらで得たモンをそのまま使ってる……言っちまえば上っ面しか捉えてねェんだよ」
「……っ」
言葉に詰まった。というより、返す言葉が見当たらなかった。
「……はっ。なァんか説教臭くなっちまったな」
張り詰めた空気を一蹴するような軽い言葉と、頭を掻き毟る仕草を見せたゼルは、羽織っている白衣のポケットから飴を二つ取り出し、一つを俺の方へ投げ、もう一つを自分の口元へと運ぶ。
俺も貰った飴の袋を空け、口へと放り込む。まさかのハッカだった。嫌いじゃないから別に良いけど。




