いざ空上都市へ
冬馬の報告を聞いて声がした方へ向かう。そして三人の元に到着したのはいいんだけど、周りを見渡してもそれらしい物は見当たらない。
「あの、国王様。ホントにここにあるんですか?」
「間違いなくあるよ。今からみんなにも扉が見えるようにするから、少しだけ待ってなさい」
そう言った国王様は一歩前に出て地面に手を着く。着いた手から少量の魔力を放出すると、元の位置に戻る。……え? それだけ?
「何も――」
とか何とか言いかけた俺だったが、僅かに視界がぼやけ始めた事に気が付く。何かと思っていたが、次第に姿形がハッキリとしだし、最後には一枚の扉となって俺達の前に姿を表した。
「これが、"空上都市ナス"への入り口さ。それじゃあ行こうか」
出現した扉を開ける国王様。開けた扉の先には何の変化も見られず、ただただ向こう側の景色が見えていた。しかし国王様が扉に入った途端、姿が見えなくなった。わかった。これは二十二世紀の道具だな。風呂場にでも繋がってるんだろう。
「それならそれでラッキーっつー事で……お先に行くぜぃ!」
「……リンも」
ひょいっ、なんて効果音が付きそうな位軽く扉に入った冬馬とリンちゃん。勿論二人の姿も直ぐに見えなくなった。残ったのは俺とミーナ。
「それじゃあ、私達も行きましょうキリュウ君」
とか思ってた矢先、ミーナもスイスイと扉に入り、その姿が見えなくなる。ねえ何で? どうしてみんなそんなにすんなり行けちゃうの? 向こうがどうなってのかなとか心配じゃないの?
「その心配を払拭するために、お父様が最初に入って行ったのだから、今更そんな心配いらないわよ」
「その通りなんだろうけど、頭だけ出して説明するのは止めてもらえる? 心臓飛び出るかと思ったからホントに」
「……キリュウ君ってば、以外と怖がりな面もあったのね。ちょっと驚いちゃった」
「慎重派と言ってくれたまえミーナさんや。生きていくのに大事な能力なんじゃぞ」
「なにその口調。もういいから早くいらっしゃい。みんな待ってるわ」
俺の様子に呆れたミーナが腕を伸ばして俺の手をキャッチ。そのまま扉の方に引っ張り込むって待って待って待ってっ!
「こ、心の準備が――」
何て懇願は通るはずも無く強制的に扉を潜らされた俺だったが、入った途端に広がった、目の前の光景に言葉を失う。
砂で埋め尽くされていた俺の景色はガラリと変わり、一言で表すと中世ヨーロッパ……とでも言えばいいのかな。個人的にはアニメの世界で出てくる、中世ヨーロッパ風の町並み、とかの方がしっくりくるな。ミーナや国王様には伝わらないから言わないけど。
殆ど同じ高さの家が並び、その家より頭一つ飛び出た建物がちらほらと。そして家と家の間を繋ぐ様に伸ばされている、旗みたいな物を下げている紐。あれって何に使うの? 何かのアニメで洗濯物干してたりしてるシーンがあったけど、あの用途ってあってるのか?
人通りが少ないという事もないけど、ごった返してるような事もない。そんな道の奥には遠目でも分かる立派な噴水が置いてある。
「さて、やっと到着したところだが、私は待ち合わせ場所へと向かう事とするよ。また夜にでも」
そう言って国王様は町中に消えた。いや嘘、噴水の方に真っ直ぐ進んでるから、ばっちり背中が見えてる。
それより……俺たちも用事を済ませないといけないな。
指定された都市には無事に辿りつけたが、ここから先はどうするべきか。下手に動いて、理不尽に時間切れ宣告なんてされたら洒落にならないし慎重に動かないと――
「おっ! あれとかスゲェ美味そうだなぁ、ちょっくら買ってくるわ!」
「……リンも行く、リンも」
「俺のシリアス返してもらえます? ……マジで止まれお前ら……って割と強めの抵抗はやめてッ!? 勝てないからっ!!」
食べ物に釣られて何処かへ行こうとする冬馬とリンちゃんを引き留めようとするも、俺の静止を聞かずに前に進む二人。前に回って身体を使って止めようとするもズルズルと後ろへ押される。指輪つけたままじゃあ、この二人の身体能力には勝てないんだよっ!
俺の頑張りが功を奏したのか、ようやく止まった冬馬とリンちゃんの二人。まさか到着して早々にこんなに疲れるとは思ってなかったよ……。
「……だいご、よわっ」
「魔力型の俺と体力型のお前らを一緒にするんじゃあないよ!!」
乱れた息を整えてから、再度冬馬とリンちゃん、そしてミーナの顔を見る。
「改めて……ここから先は相手から何も言われていない。ここで待っていれば良いのか、ここから別の場所へ行くのかが分からない今、単独行動はなるべく避けて、相手から反応があるまでは一緒に動いた方がいいと思う」
「そんな固くならなくても大丈夫だよー」
――背後からその声が聞こえた瞬間、俺はミーナを自分の元へ引き寄せ、声との距離を取る。冬馬はリンちゃんの腕を引きながら距離を取っていた。
「なんだよーその反応はーっ。お兄さん傷付いちゃうゾっ? ……うえぇ、自分で言ってて気持ちワリィや」
パッと見、俺たちよりも二~三個上と見えるその男。赤っぽい髪の毛を首元まで伸ばし、それをヘアゴムで軽く留めている。その髪の下にあるのは整った顔つき。目元は閉じられているのではないかと思えるほどに細くなっている。身体つきは、太くもなく、細くもなくというような、正に標準体形に見えるけど――
「人の身体、そんなにジロジロ見まわすなんて失礼な子だなあ。そんな視線を送られちゃうと――殴っちゃうぞ?」




