いざ行かん、学園へ
……遂にだ。遂にこの時がやって来た! 地球を離れて早二日! 意外と時間が経っていないことに驚きだけど、それは置いといて……。やっと異世界学園ライフが送れるんだ!
「おーい、大護ー。準備できたかー?」
「おう! バッチリだ! なんなら昨日の夜から完了してたぜ!」
「あ、魔力の時以来だね、ハイテンション大護君。とりあえず下行って、ナックさんにお礼言ってから学園向かおうぜ」
そうだな。一晩の約束だったのに無理言って二日間も世話になっちゃったしな。
「先に降りて待ってるから、大護もすぐに降りてこいよ。あんまりのんびりしてると学園にも遅刻しちまうしさ」
「オーケィ。了解した」
そう言って冬馬は先に下に降りたのだけど、思えば特に荷物なんて持ってきてなかったし、学園で必要なものは向こうで用意してくれてるだろう。……うん、持ってく物ないや。
そんなわけで俺もすぐに下に降りる。階段を降りきってカウンター席の方を見ると、ナックさんが朝から一杯飲んでいた。まて。
「おっ! ダイゴも起きたか! おはよーさん」
「おはようございますナックさん。この二日間本当にありがとうございました。宿だけじゃなくご飯まで食べさせてもらってしまって……」
「あー、いいからいいから気にすんなって。そういう固い挨拶って俺苦手なんだよ、また遊びに来まーすってかるーく出てってくれよ」
ナックさんは、俺の挨拶を遮ってそう言ってくる。ナックがそう言うならそうしよう。……時間もなくなってきたし。
「ありがとうございました。また来ますね、今度はギルド登録の時にでも」
「おう。そん時ゃよろしくな」
そんな挨拶をして俺は出入り口で待っていた冬馬のもとに。
「よぅし! そんじゃあ出発だぁ! 行くぞーぅ大護ーぅ」
「今度はお前がハイテンション野郎かよ……」
目指すはメリト魔法学園。
メリト魔法学園。メリト王国にある魔法学校。地球の大学の三~五倍ほどの敷地面積がありそうなほどに大きく、その校舎の後ろにはこれまた大きな城が建っている。
とゆうか、城に入るための方法を考えるのすっかり忘れてた。まぁでも学園に行けば何かしらイベントが起こるだろうし、もしかすると姫様が通ってるかもしれないし、大丈夫だろう。
学園の近くまで来ると、同じ制服を身に纏った生徒と思われる人たちが増えてくる。時折こっちをチラチラ見てくる人もいるが、見慣れない顔が居るとでも思われているんだろう。
「なぁ大護、俺たちさっきからすげぇチラ見されてないか?」
「見たことない奴らがいるとか思われてんだろ。そんなことよりさっさと行くぞ」
「なんだよぉ、いきなりモテ期到来かと思ったじゃんかよぉ」
「えっと、まずは学園長室だったな……」
「あれ? 無視?」
うん。とまぁこんな会話を繰り返してるうちに学園長室に到着。
「失礼します」
「しまーす」
ノックをして中に入ると、見た目初老を迎えたところであろう男性が、書類に目を通しているところだった。
「おぉ、君たちがキリュウ君にアカホシ君か。調度こちらの準備も整ったところだったんだよ。早速担任となる者を呼ぶから、少しの間ソファーにでも腰かけてなさい」
そう言われてソファーで待機することに。にしても本棚とソファーと机があるだけで、ザ・仕事部屋って感じの部屋だな。
つーかソファーの座り心地いいわぁ、このソファー欲しいわぁ。
「失礼します。お待たせしてしまって申し訳ありません」
ソファーの感触を楽しんでいると、眼鏡を掛けた美人さんが学園長室に。この人が俺たちの担任になる人かな。
「おぉ、リル先生。この二人が転入生のキリュウ君にアカホシ君だ。じゃあ後は任せたぞ」
「畏まりました。じゃあ二人とも私に着いてこい」
軽く返事をしてリル先生の後に続くように学園長室を出て、先を行くリル先生に追い付こうとした時に、冬馬に呼び止めらる。
「なぁ……大護よ……」
「なんだよいきなり、早くしないとリル先生先に行っちまうぞ?」
俺がそう言うと、じゃあ歩きながら聞けとのことらしいから、そうすることに。
「んで、一体どうしたってんだよ?」
言って冬馬の顔を見てみると、何時に無く真剣な表情を作って、前を向いている。普段が普段なためにこっちも真剣な表情になる。なんだ? 本当に何があったんだ?
「落ち着いて聞いけよ大護。リル先生……Fカップはあるぞ」
俺の真剣さを返してくれ。
「驚いて声も出ないのか大護よ。心配すんな、俺の目に狂いはないさ」
呆れてんだよ、とは言い返さず、とりあえず変態スコープマンは放置。とゆうかなんだよその無意味な能力は。 俺にもくれいや待て違う。
スコープマンが自身のスコープを手に入れたときの話を意気揚々と語る中、俺たちが入ることになった2-Aに到着。
二年生ってことは年齢的には一個下になるのか? いやそれより、いきなり二年生の授業なんて着いていける気がしない。ホントに大丈夫なのか? これから。
「じゃあ、合図を出したら入ってこい」
リル先生はそう言ってから教室に入る。リル先生自身の声量のためか、何を言っているかハッキリとは聞こえてこない。……あ、ざわつき始めた。
「いよいよだな」
聞こえた方……って言っても冬馬しかいないか。そっちを見ると、さっきのスコープマン状態とはうって代わり、新しいオモチャを買って貰った子供のように、輝かしい目をした冬馬がいた。
まぁ、多分俺もコイツと同じような表情をしてるんだろうな。夢に見た異世界に呼び出されて、夢に見た魔法なんて代物が使えるようになって、そこにさらに学園生活まで加わるんだ。
ホントに……ワクワクしてばっかりだよ。こっちに来てからとゆうもの。
「じゃあ二人とも、入ってくれ」
ちょっと大きめの声でそう言われる。この扉を開ければ、いよいよ学園生活スタートになるんだな。
「いよっし! 一丁気合い入れてぇ!」
「行きますか!」
そんなヘンテコな掛け声を入れて、俺たちは教室へと入る。