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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
学園の日常
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顔に出ちゃう系男子

「あーあ。負けちゃったかー。結構頑張れたと思ったんだけどなぁ」



 さらに、寝転がりながら俺に視線を併せて言葉を続ける。



「しかも、こっちは全力で行ったのに、対戦相手はだいぶ余力を残して模擬戦終了。何と不甲斐ないことだろう」

「いや、俺だって結構危ないところとかあったよ。ナイフが飛んでくるとか普通に怖いし」

「その恐怖を微塵も感じさせずに前に出てきたくせに?」

「いやまあ、そう言われると……な?」



 的を射た事を言われて返答に困っていたが、俺の様子を見かねたレドは立ち上がり、手を伸ばしてくる。握手を求めてくるような状態だ。



「またやろうね、ダイゴ」

「あぁ、次も俺が勝つけどな」

「へへっ、そうかもしれないけど簡単には負けないからっ」



 皮肉を言った自分が恥ずかしくなるくらい真っ直ぐな目で答えられた。何これバカじゃん俺。穴があったら入りたい。



「大護ぉ、穴作ったぞぉ。入れ入れぇ」

「表現なんで実際に作るのはやめてもらえます?」



 冬馬の足元に広がる、深さ一メートル程度の穴。というかいつの間に作ったの? そしてどうやって作ったの?



「そりゃぁ、素手でざっくざくと掘ったさぁ。十秒くらいで」



 君はモグラなのかね? あと俺のポーカーフェイスは夢のまた夢になってきているな。何回か悟られなかった時もあったと思うんだけどな。



「多分それは、みんなが言わないであげてるだけかもしれないかな」

「あっ! 大護の奴が泣きながら寮に帰っていくぞ! レドぉ、そこまで言ったら流石に可哀そうだろぉ? あれでも努力してんだからよぉ」

「……意地が悪くなっちゃったけど、今日手加減されて負けた分の仕返しとしておいてよ」

「それなら仕方ねえ。手加減したダイゴが悪ぃ。オレとリンみたいにガチでやってこその模擬戦だしよ」

「……君、本気だったの? いろんな意味でリンびっくりしちゃった。てへ」

「よーしちびっ子戦争だ。泣いて謝るまで許さん」

「リンちゃんもノエルもやめとけって。とりあえず今日はここまでにしておくかぁ……俺とリンちゃんは大護のところに行くけど、お前らはどうする?」

「んーボクはもう少し残って行くよ。近いうちにまたダイゴと再戦したいし。あとトウマにもそろそろ攻撃を当てられるようにしないといけないからね」

「オレはレドの特訓に付き合っていくぜー。リンのおかげで棍捌きもまだまだだって事も実感できたしな! 次は負けねえからな?」

「……言うだけただ」

「口の減らねえちびっ子だなホントに!」

「はっはっ、そうカッカすんなやノエル。受け止めるのも男の子の強さってもんだぜ? ……と、大護がホントに行っちまうな。それじゃあな二人とも」

「うん、じゃあねー」

「またなー」

「……とうま、お腹減った」

「はいはい」






 うぅ、なんだいなんだいみんなして。ちょっと俺の表情が読みやすいからって、寄って集ってそんなことしなくてもいいじゃんか。俺だって好きで読まれやすい表情してるわけじゃないのにさ……というか読まれやすい表情って何なんだよ。それが分からないとどうにもできないじゃんかよ。



「なんつーか……顔に書いてあるってしか言えねえかなぁ」



 そんなのどうやって治せばいいんだってばよ。



「確かになぁ……もうそのままでいいんじゃねえか? 一つの個性としてよ」



 どんな個性!? 誰にでも表情で考えが読まれる個性とかいらねえよ!



「でも戦闘に没頭した時とかは読まれてねえんだしよぉ。そこまで深く考えなくてもいいだろ?」



 ……確かにそうだった。ゼルの時も、ちょっとした間の思考は完璧に読まれてたけど、戦っている最中は読まれてる様子はなかったし……さっきの模擬戦でも同じことが言えるな。



「な? だからもう一つの個性として考えりゃいいんだよ。何でも表情に出ちゃう系男子とか名乗ってみたらどうだ?」



 "系"って付けておけば何でも通じると思うな。



「さーせんさーせん」



 ……でもまぁ。話さなくても伝わるって事を考えれば、これも悪くないのかもなぁ。



「みんなそれが出来るといいかもしんねえけど、ここまで出来るのは俺くらいだと思うぞ?」



 は? 何でだ? 他の人にも結構表情読まれるぞ?



「あれはあくまでも断片的に読み取ってる感じだぁ。俺はその点、八割方読み取れてると思うぜ?」



 何で!? 寧ろ怖いんだけど!?



「俺とお前の……仲だろうよ」

「えー……普通過ぎてつまらん」

「わざわざ口に出して言ってくるところにリアリティを感じるなぁ」



 さらっとやってたけど……冷静に考えて、今の今迄口を開かずに会話?が成立してたのって凄すぎないか? 今度テレビに応募でもしてみるか。あ、こっちにテレビないや。



 テレビに少しばかりの恋しさを感じていたところで、冬馬に肩車をしてもらいながら、頭を枕にして寝ていたリンちゃんが目覚める。よくその体勢で寝れるな。



「……んむぅ、とうま、ごはぁん」

「お、起きたかぁリンちゃん。もう少しで飯食えるから待っとけぇ」



 冬馬からそれだけ聞き、「……んー」というよく分からない返事の後に、再び寝入るリンちゃん。そんなにそこが気に入ったのか。



「というか、よくリンちゃんの事を落とさずに動けるな」

「あぁ。自分の足で結構ガッチリ掴まってるんだよ。それにリンちゃん自体がスゲエ軽いから、乗ってても苦じゃねえしな」

「へえ。ちなみにどのぐらいガッチリ掴まってるんだ?」

「最初に寝始めたとき、首に決まって落とされるかと思ったくらい」

「危険極まりないな!」



 どんなリスクと一緒にこの子を背負ってんだよ。いやリンちゃん自体は背負うというよりは乗ってる感じだけど……ええい、この際どっちでもいいわ。



「取り合えず部屋に戻ろうぜ。俺も腹減ってきたしよぉ」

「だな。その後に食堂にでも行こうか」

「……食堂、ごはん」



 食堂という単語一つで目を覚ましたリンちゃん。周りを見渡した後、まだ外にいると気が付き、再度眠りに付いた。何だこのちっちゃな食い意地の張った生き物は。



「それだけ腹減ってるって事だと思うからよ、さっさと連れてってやろうぜ?」

「それもそうだな」



 リンちゃんの様子を見て、少しだけ急ぎ足で部屋を目指すことになった俺たちだった。


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