誤解
「……」
「……」
「……」
「……あのー、リンちゃん? 話の整理のためにもう一回聞くけど、どうしてここにいるのかな?」
「……遊びに、来た」
「そうだったね。どうやって寮に入ったのかな?」
「……私の能力"透明化"があれば、よゆー」
「そうなんだね。それじゃあ、どうして俺の膝の上に座るのかな?」
「……座り心地、ばっちぐー」
「……さいですか。あぁ、クッキーのくずをポロポロしない」
訓練場に向かうための準備を整えた後、リンちゃんの話を聞こうとしたところ、この状態にしないと話さないと言われたもんだから、今はこんな感じになっている。
ちなみに、リンちゃんの能力"透明化"というのは、その名の通り、自分自身の姿と気配を消すものらしい。
初めて俺たちの前に出てきたときもこの能力を使ってたみたいなんだけど、冬馬には気配を悟られていた。リンちゃん曰く、ちょっと不服。確かにあの時もそんなこと言ってたな。
今では完全に気配を消す事も出来るようになったから、その確認も含めて遊びに来た……らしい。ごめんね、何となく気配感じちゃってたよ、とは言わないでおこう。
「あれ? 俺の部屋にはどうやって入ったの?」
「……管理人さんに言ったら、開けてくれた」
「この寮のセキュリティーが一気に不安になったよ」
ダメでしょ管理人さん! 学園の生徒ならまだしも外部の人の申告だけで人の部屋の鍵開けたらっ!
「……来ちゃダメ、だった?」
首をこちらへ捻り、不安そうな目で俺を見上げるリンちゃん。何でだか俺が悪い事をしている気分になってきた。
「いや、あのね? リンちゃんに怒ってるんじゃなくって、この寮を管理してる人に「大護ぉ来たぞぉ」
そうこうしている内に玄関の方から冬馬の声が聞こえてきた。
「やっと来たか……今開けるよー」
なんて言いながら玄関を開けに行ったんだが、この時俺は大失態を犯していた。
「待たせたなぁ大……」
途中でフリーズする冬馬。一緒にノエルとレドも来ていたみたいで、何事かと思った二人がこちらへ顔を覗かせたところで二人もフリーズ。
「……三人してどうした?」
返事がない、ただの屍の違う違う。
三人とも俺の腰辺りを見て固まっているようなので俺も自分を見る。何もない筈だけど――
「……だいご、お腹減った」
いつの間にやら腰元にしがみ付くリンちゃんがばっちりいた。
「ダイゴ……オレも中々変態である事は自覚しているが……それはちょっと……」
「あ、愛の形は人それぞれだからね! ぼぼボクは応援してるからっ!」
「うわぁ大護うわぁ、ミーナちゃんとアリアちゃんに報告しないといけないなぁ、大護が幼女連れ込んぶげばらぁぁぁあああっ!!」
色々好き勝手言ってくれる同級生たちの代表として、冬馬さんへグーパンチプレゼントフォーユー。つーかお前は会ってんだろうが、ちゃんと見ろリンちゃんだろうが、幼女じゃないだろうが。
「いてて……ん? なんだぁリンちゃんじゃねえか。ちょっと久しぶりだなぁ」
「やっと気が付いたか。そうだよリンちゃんだよ。いつの間にか俺の部屋に侵入してた」
「……だいごの言い方、とげがある」
「事実だからね」
「……むぅ」
ちょっと拗ねた様子のリンちゃんはとててっと冬馬へ駆け寄り、俺からのプレゼントの影響で倒れていた冬馬へ抱っこをせがむ。快諾した冬馬が、リンちゃんを抱っこしながら立ち上がる。
「冬馬、忘れてるかもしれないけど……リンちゃん同い年だからな?」
「分かってる分かってる。でもまあ、この位問題ねえだろ。この前のレイアをおぶった時と同じ感じだ」
「……リンの身体じゃ、こうふんしない?」
「女の子がそういう事言うもんじゃありません。太郎はどんな教育してるんだ全く……取りあえず全員来たし、訓練場に向かうか。俺も部屋から荷物とって来るから」
玄関先でドタバタしてたせいで忘れかけてたけど、今日は訓練に行くために集まってるんだった。
急いで荷物を取りに行こうとしたが、それを冬馬に止められる。なんだってばよ?
「いやぁ、荷物も確かに大事なんだけどよ。一旦ノエルとレドに状況を説明してからの方が良くないか? ……まだ混乱してるみたいだし」
言いながら俺の後ろへ指を向ける冬馬。従って後ろを見る。
「取りあえずそうだな……如何にしてダイゴを犯罪者にしない様に匿おうかを考えて――」
「でもその作戦だとここの道を抜ける時は大人の目をごまかせなくなってしまうから逆に――」
そんな様子の二人には俺のデコピンをプレゼントし、どうにか現実世界へ引き戻した後、リンちゃんと俺達との関係性を話して納得してもらえた。全員揃ってから訓練場に行くまで一時間近く掛かった。長かった……。




