新たな力
――ミーナに当ててた俺の両手が、突如大きく光りだす。
なんだ、この光……? 凄く温かい光だ。……魔力自体が光っているみたいだけど。
魔力が光出してから少しだけ鮮明になった目でミーナの身体を見てみると、顔出来ていた傷が塞がっているのが分かった。
――この魔力なら……いける!
光る魔力を、ミーナの身体全身に行き渡らせるようにゆっくりと流し込む。魔力が触れた部分からミーナの身体が回復しているのが目に見えて分かる。
光る魔力でミーナの全身を覆いきってから少し時間が経過すると、魔力が弾けるようにミーナの身体から離れた。
魔力が離れた後のミーナの傷を確認する。顔の腫れ、腕の打撲、足の骨折。見える範囲の傷は一通り塞がってるみたいだ。服の中の傷まで確認するわけにはいかないからな。
「ミーナ……気分は、どうだ?」
俺の質問にミーナは答えない。……まさか、外傷が治ったように見えただけで、まだ痛みがあるのか!? くそっ、それならもう一度さっきの魔力を――
「――バカッ!!」
――耳がキーンとした。一瞬疑ったけど、ここには俺とミーナしかいないし……あ、ゴミ男がいたな。いないようなもんだけど。となるとやっぱり今の声は……ミーナ?
「どれだけの無茶してるのよ! 魔力が枯渇した人間は死ぬかもしれないのよ!? わかってるの!?」
「お、落ち着けよミーナ。そんな事よりも、身体の具合はど――」
「そんな事って……っ! 自分自身の身体だってのに、もっと大切にしなさいよバカッ!」
「おまっ、ミーナの身体が心配だったんだから仕方な――」
ミーナの頭が、俺の胸に埋まる。……えっ、ぃや、ぁの、ミーナさん!? 情緒不安定なのかしら!? 一先ず一回離れて……。
「それでっ! アナタ自身がっ、キリュウ君が倒れたりしたら……。私にはどうしようも、できないじゃない……」
そう言って涙を流し始めたミーナだったが、言われた事に対して俺は何も返せなかった。そうだ。今回は俺の魔力が異常に高かったから何とかなったところがあるけど、これが他の人だったらどうなっていたかわからない。下手するとお互いに……なんて最悪の展開も有りえる。……いや、今回も十分にありえる事だったんだ。
「ミーナ」
涙を流す顔は見られたくないだろうから、顔は見ず、頭の上に手を乗せて話を続ける。
「俺は絶対、お前を残して死んだりしないし、お前一人を死なせることはしない」
ミーナの肩が若干動く。
「俺は、ミーナの――」
「ま、待って!!」
ミーナが急に動き出し、俺と少し距離を取る。な、なんだ急に。
「そ、その……まだ、心の準備が……」
心の準備? ……そうか、怪我が治ったばかりだもんな。しっかり休んでまた後日でもだ「準備できたわ」早いな!
改めてミーナの顔を見る。傷も腫れも元々無かったかのように綺麗に治ってる。上手くいってホント良かった。
「改めて言うぞ。俺は、ミーナの――」
◆ ◇ ◆
「ミーナちゃんが無事で良かったぜ、流石大護だな。んでも何で顔に紅葉咲いてたんだ? さっきはミーナちゃんの雰囲気が怖すぎて聞けなかったけどよ」
「夕日に合わせて急に見たくなったから栽培したんだよ。気にするな」
「気になりますねぇ。大方予想は付きますが」
「だなぁ。大護だし」
ミーナを助け出してから二時間程。太陽も沈み始めて、夕方に差しかかってきたような時間帯だ。あの後冬馬とリュウと合流して、ミーナを攫った男は衛兵さんに引き渡すことになった。怒りで塞いだ口は無理やりこじ開けて、再度話せるようにしてはやった。勿論回復まではしてやらん。
でも、ミーナの話しによると、もう一人男がいたらしい。その男は一度外に出たまま結局戻ってくる事は無く、結局何処の誰だったのかは分からず。
ミーナを攫った理由についても小太り男から話しを聞いているようだけど、王国に喧嘩を売るとしか聞かされていない、末弟のような立場だったらしく、有力な情報は得られず。
"ミーナが怪我無く"戻ってきた事から、その末弟に処分は与えず、釈放としたらしい。しかし、娘を攫われた国王様とミーナママによる秘密の制裁とやらを受けたようで、王宮を出て行くときには最初に見た時よりも痩せてた。……怖すぎて内容を聞けないし、本当はミーナが死にかけるくらい暴行を加えていたなんていったらどうなる事か……。考えないようにしよう。
そういや俺の新しい魔法だが、やはり"回復魔法"といったところだろう。ミリアルに来たばかりの時に学んだ"固有魔法"に属するのかな。一度使えるようになれば、今後も普通の魔法として使える事も確認できた。最悪の結果も防げて、新しい力も得れてホントに良かった。
そう言えば、出ていった男の行方も謎だけど……俺としてはミーナにビンタを受けた方が謎だ。何で「俺はミーナの護衛だから、必ず守る」って言ったら、あんなに勢いよく殴られにゃならんのだ。
そんな感じに栽培された紅葉。まだちょっと頬がひりひりする。
頬を擦りながら国王様とミーナママとミーナが戻ってくるのを待っている男三人。そして舞台は冒頭へ戻る――と。
なんて浸ってるうちに、部屋の扉が開いて国王様とミーナママが戻ってきた。……あれ? ミーナは?
「遅くなってすまなかったみんな」
「ごめんね~ミーナちゃんが中々お洋服を決められなくて~。ほら、早くおいでっ」
「お、お母様っ!? そんなに引っ張っては……きゃっ!」
ミーナママに引っ張られて部屋に入ってきたミーナの格好を見て、固まる野郎三兄弟。
昼間のラフな感じとは違い、まさに公共の場に赴くための衣装と言えようか。足元まで隠れるふわりとしたロングスカートタイプのパーティドレスって言うのかな? そんな衣装を来て、多少派手目な装飾品。……だめだ、俺の語彙力の限界に差しかかった。
「おおー! ミーナちゃん、すっげぇかわいいじゃん! ばっちりだぜ!」
「これはこれは、写真に収めることが出来ないのが至極残念です」
「ふっふっふ~、フリューゲル君。これ、何だと思う?」
「おっと、何とも準備の宜しいお方です。……お幾らですか?」
「待てママ! ミーナちゃんの写真ならパパが買うぞ! 国家予算からでも出しちゃうぞ!!」
「パパさん、それはやりすぎじゃねえかな?」
「もうっ、みんな静かにしなさい!」
写真を巡って始まるわいわいぎゃーぎゃーの騒ぎ。平和だなー良かったなー。そう言えば、ミーナを治療した魔力の事、ちゃんと調べておかないとなーとか思って眺めてたら、ミーナがスッとこちらにやって来る。……改めて対面すると照れるな。つーか今日の俺、ミーナに照れてばっかりじゃないか。
「改めて助けてくれてありがとうキリュウ君。今の私があるのは、アナタのお陰よ」
「いいさ改まってなんて照れくさい。あー、その。スゲー似合ってて可愛いよ」
「あ、ありがとう……」
不思議に流れるこの間。後ろの皆さん? 騒ぎながらも全員でこっちの様子伺ってるのバレバレだからな? あと国王様はハンカチを歯で引っ張るな。
「とっ、ところで! 何でそんなしっかりした服装に着替えてきたんだ?」
ミーナとの間に耐え切れず話題を逸らす。いや、これは最初から聞きたかった事だよ? ホントだから。
「あれ? お父様から聞いてないかしら?」
国王様から? ……特に何も聞いてないけど。




