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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
面会の時
55/148

どきどきな午後と、


「はぁ……。いだっ」



 どうしてこうなったと思って小さく溜息をつくと、不服な顔をしたミーナから小突かれる。



「女の子と二人で出かけて早々、溜息をつくなんて何事かしら?」

「あーいや、外出が嫌とかそんな事じゃないけど……ごめん」



 分かれば宜しいと再び大通りに出るミーナ。その後ろに続こうとすると、ミーナが急に振り返り、悪戯っ子の様な笑顔を向けて、こちらへ手を差し伸べる。



「エスコートしてくださる? はぐれたら元も子ないでしょ?」



 見慣れない私服姿と、太陽の光の加減のせいなのか、ミーナが輝いて見えた。一瞬見とれて固まっていたが、ここは紳士っぽく返した方が良さそうだと判断し、微笑みながらその手を優しく握り返す。



「喜んでお引き受け致しましゅ」



 ……盛大に噛んだ。



 ――流れる沈黙。



「ふっ……ふふっ……」

「せめてもの救いだ。笑うなら思い切り笑ってくれないか?」



 俺の願いは叶わなかった。






 ◆  ◇  ◆






 やあやあ諸君。俺だよ、冬馬だよ。ミーナちゃんの形相を見てあの場では即効逃げたけど、なんだかすごぉーくいいお話をミーナママに聞いたから、ストーキングを兼ねて魔力操作の練習に来たのだよ。



 ……逆だな。魔力操作の練習を兼ねて、ストーキングに来たのだよ。本命は魔力操作だからな。そこは間違えちゃぁいけねえ。



 因みに魔力操作ってのは、名前の通り自分の魔力を操作する事なんだけどな、魔力を極限まで小さくする事によって、気配を消す事ができる……らしいんだわ。



 魔力をゼロにする事は出来ないから、完全に気配を消すって事はできねえらしいんだけど、限りなくゼロに近い状態にする事は出来るみてえだから、それの練習ってことよ。



「って事で良いんだよな? パパさん」

「ああバッチリだ。それに教えたばかりでここまで使いこなすとは……やはり異世界人は末恐ろしいな」



 そんなに褒めたら照れるぜパパさん。とか考えてたら、小道に入った二人が出てきた。……ん? あれは……ほほぉーう。



「パパさん、褒めてくれるのはありがたいけど、あれを見てくれ」

「なんだねトウマく……。み、ミーナちゃんが……男と……てててて手をっ!?」



 パパさん、その場で倒れる。あちゃー、刺激が強かったかぁ。仕方ない。



「兵士さん、パパさんよろしく!」



 パパさん、安心しな。意思は俺が継ぐぜ!






 ◆  ◇  ◆






 ミーナと街を回り始めてから大よそ二時間程。一先ずミーナが興味を持った店は全部回った。女の子の買い物は荷物が大変なことになるとばかり思ってたけど、そんな事もなく、片手が塞がるくらいで収まった。……勿論塞がったのは俺の右手だけどな。



 ミーナの表情はあまり変わらないように見えるけど、いつもより若干気分が良さそうに見えなくもない。あ、やっぱりいつもより機嫌良いわ。普段鼻歌なんて絶対歌わないし。というか歌うまいなミーナ。



「そうかしら? 何か照れるけどありがとう」

「ああ、間違いなく上手だよ。でも俺の表情も見てないのに、心を読めるのは何でだ?」

「キリュウ君の事をおもってるからじゃないかしら」



 急な発言に荷物を落とし掛ける。慌てて左手でカバーを入れて何とか落さずにすんだ。あっぶなかった。それよりも……ミーナさん? え? 今の発言は、その……。



 俺が聞くに聞けずにいると、急に振り返るミーナ。ちょっと微笑んでる辺りがポイント高め。



「荷物、持ってくれてありがとうって、思ってるからじゃないかしらね」

「そろそろ男の子の純情な感情で遊ぶのは、お兄さん感心しないぞ」



 ごめんなさい。でも楽しくって。そんな一ミリの感情も篭ってない謝罪を投げてくるミーナ。学園じゃこんな姿絶対に見せない……いや、見せられないのかな。



 王族がどんな生活してるのかとか、公務の時のミーナの様子とかは全く分からないけど、今俺の前にいるのは、間違いなくただの一人の女の子。ミーナ=フィアンマなんだななんて、そんな風に感傷に浸ってみる。



 白いワンピースを着て、同級生に荷物を持たせて鼻歌を歌いながら街を練り歩く女……あれ、おかしいな。綺麗な表現にしようとしたのに全然違う感じになってる気がする。白いワンピースを着て、微笑を浮かべながら、同級生を引き連れて街を……違うな。これだと裏番長みたいになる。となると――



「……さっきから何を考えているのかしら。まあ、顔でわかるけどね。──今日は本当にありがとう、キリュウ君。家族との時間以外でこんなに楽しかったのは初めてよ。……聞こえてないと思うけど」

「……んーっと、あれ? 今何か言ったか?」

「何でもないわ。ちょっとそこで待ってて、お手洗いに行って来るから」



 そう言って離れていくミーナ。俺も適当に壁に寄りかかって、ミーナの帰りを待つ事にした。



 それにしても……ホントにお祭りみたいな騒ぎ方してるよなー。二時間以上は街にいたけど人が減ってる気がしない。つーか寧ろ増えてるんじゃないか? あれか、ここからが本番ってヤツか。夕方から夜に掛けてで、一番の盛り上がりを見せるのがこの街の祭りなんだなきっと。……違う違う、そもそも祭りじゃないから。



 ……くっそ、ダメだな。正直、ミーナがいつもよりも断然可愛く見える。それなのにあんな仕草とか笑顔とか見せられるし、いつもと違う表情もスゲー見れるし……その、なんだろう……一緒にいると、照れる。



 一旦ミーナと離れられて、ちょっとホッとした。この時間を利用して今の内にクールダウンじゃ。オッケー俺、いつも通りクールに行くぜフゥゥゥ!! 全然ダメだな。



 その後もあーでもないこーでもないと考えていたが、ふとミーナの戻りが遅い事に気が付く。考えるのもアレかもしれないけど……男より時間が掛かるのは分かるけど、こんなに掛かるものか? でもトイレが遠い場所にあったりとかもあるだろうし、もしかして……これ以上はやめとけ俺。ミーナが帰って来た時にまた般若をみる事に――



「大護っ!」

「――だっしゃ!?」



 考えてる最中に話しかけるのは本当に止めてほしい。思わず変な声が……って今の声。



「……冬馬、何でお前がこんなところにいるんだ?」

「んな話は後だ! 緊急事態発生!」



 緊急事態って……お前がここにいる事が俺の第一の緊急事態なんだけどという言葉は、次の冬馬の台詞に掻き消された。



「ミーナちゃんが、攫われた」


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