本の真意
地球からすると絵本とか童謡とかと同じような扱いになるのか、内容は凄くシンプルなものだった。
お互いに感想も言わないまま俺達は部屋を出て、王様達の元へ戻る。
俺たちが出てきたことには直ぐに気付いた様子だったけど、ミーナとミーナママはそのままソファに座り、国王様だけこちらに近づく。
「読み終わったみたいだね。どうだった? 率直な感想を聞かせてくれないか?」
率直な感想……か。
「そう、ですね。正直……ちょっと拍子抜けしました。こんなものだったのかって感じ……ですかね」
「俺もだぁ。消された物語なんて言われてっからどんな内容かと思ってたけどよお」
俺と冬馬がそういう中、祖母から聞いていた話どおりの内容だったと話すリュウ。国王様は少し考えるような表情を見せた後、俺たちに話しかける。
「実は、二人が感じた拍子抜け感というのは、私も思っていたところなんだ。言い方は悪いかもしれぬが、何故この程度の物語がここまで衰退していったのかと考えていてね」
国王様の意見を聞いてリュウも何かに気付かされたように顔を上げる。
「んー、話自体が普通過ぎて、皆興味がなくなっちまっただけじゃねえか?」
「確かにそれも考えられますが、それでは他の物語も衰退しているものが多々ある筈です。この物語だけとは、とてもじゃないが考え難い」
となると、他の可能性が――っ!
「……国王様、一つ質問良いですか?」
「キリュウ君。何か考えが浮かんだのかい?」
「はい、推測も混じってますが……。物語が記載された本は、全てあの本のように魔力を持っていたんですか?」
少し考える仕草をした国王様。直後に首を横に振る。
「いや、この本以外でその様な話は聞いたことがないな」
やっぱりか。そうすると可能性としては考えられる。
「恐らくですが、この本以外の物語は、全て意図的に破棄されていったんじゃないかと思います」
「それは……可能性としては確かにありえますが、そもそも何の意味が?」
「それは、"あの本だけ"を確実に残す為じゃないかなと思っている。物語の詳細が知れるのがあの本だけだって事が分かれば、必ずここに辿り着くだろ?」
俺の推測に納得がいったようで、リュウが黙り込む。
「では、そこまでしてあの本に辿り着かせたかった理由とは一体……?」
「そこで思いついたのが"本の魔力"です。異常なまでに強い魔力が働いているせいで、現在のような保管方法を取らざるを得ない状態になっていると、ミーナから聞いていますが、そもそも何故、本からそこまでの魔力が出ているのか」
全員に本のある部屋へと行くように促しつつ、俺も部屋へ向かう。そして本を持ち上げて、全員に見えるように持ち上げる。やばい、何か楽しくなってきた。
「そして、何故でている魔力はいつまでも枯渇しないのか。……それは特別な魔力だから」
「特別な……魔力?」
不思議そうに返すミーナに頷いて答える。
「その魔力は、"当時の女神"の魔力」
「"当時の"って事は……物語は実際の記録を綴っているというのか!?」
「何度も申し上げている通り、あくまでも俺の推測ですよ国王様。……ただ、その考えが推測で終わるのか、事実へと変わるのかを確認する手段も、多分分かります」
辺りがざわつく。そして恐ろしいことに気が付いた。つい楽しくなってこんだけ引っ張ったけど、見当違いも甚だしい事になっちゃったらどうしようと。
色々思ったけど気にしない事に決めた。
「なあ冬馬、お前この本持ってみてくれるか?」
「んあ? あいよーっと。分厚いな……ん?」
やっぱり感じたか。
「次にミーナとリュウ。二人も本を持ってみてくれ」
二人にも本を持ってもらい反応を見る。冬馬の時のような何かに気がつく素振りはない。
「ありがとう。冬馬、この本を持った感想は?」
「何かよ、吸われる? 感じか?」
そう言った冬馬を不思議そうに見るミーナとリュウと国王様。これで俺の仮説は正しい事が判明できた。
「そう、この本は"魔力を吸い上げる"んだ。俺もさっき持ったとき同じ思いを感じた。でもミーナとリュウはそうじゃなかっただろ? それは魔力を吸う人間を区別しているから」
そこまで話して冬馬を呼ぶ。何をするのか分かった様子で近づく冬馬。
「その条件とは……まさかっ!?」
国王様も感づいたみたいだ。……そう、その条件てのは――
「――"異世界人"である事。この本は分かってたんだ。またいつの日か、異世界から人が来る事を! いっくぞ冬馬ッ!」
「おうよォ!!」
二人でバカみたいな魔力を本へ注ぎ込んだ。本が光を放つその時まで。
「何て光だ……しかし、とても優しい」
「どんな事になるかと思っていたが……とても美しい。ミーナちゃんとママには適わないが」
「お父様、もう少し公務用の態度を持たせてください。友人の前です」
「あらあら綺麗ね~」
魔力を注ぎ込んでどれくらい経ったのかは分からないが、俺の体内魔力が残り半分程度まで減った頃、ようやく光が収まり、それ以上注ぎ込むことが不可能になった。
本から手を離し、身体を支えきれずにそのまま尻餅をつく俺と、後方へ倒れる冬馬。魔力は俺の方が多いからな。まだダメージは少なかったんだろう。……にしても。
「はあ、はあ……どんだけの魔力を、持っていきやがったんだよ……この本……」
「あーもうダメだ動けん。魔力枯渇ってこんなにキッツいんだなぁ。初めての感覚だわぁ。ミーナちゃん膝枕して」
「アカホシ君、後で話があるから王室まで来てくれるかい?」
「話があるのは私からお父様へです」
冬馬の軽口から再度始まるミーナちゃんとパパのスキンシップ第二弾。一国の王様とは思えないくらい情けない声を出す国王様を楽しそうに見るミーナママとリュウ。
「良いお土産を貰いました」「いいのよ~。でもみんなだけの秘密にしてあげてね。あれでも国王だし」「はい、勿論です」そんな軽い感じで話している二人。……リュウ、俺は見逃してないぞ。あの光景を写真に収めてたところ。
……一先ず、俺と冬馬の体力が多少回復して、ミーナちゃんとパパの以下割愛が一段楽してから本の様子を見てみよう。




