『異界の英雄』
「先の非礼、改めて詫びよう。本当に済まなかった」
ミーナママ(そう呼べと本人から言われた俺たち)曰く「ミーナちゃんとパパのスキンシップ」を終えた国王様とミーナ。一方は何事も無かったかのような表情で、一方は何事しかなかったような格好で俺たちの前に座る。
部屋に居るのは俺と冬馬とリュウ、そしてミーナと国王様とミーナママの六人だ。カゲツさんは別の用事があるとかで席を外した。
国王様の肘は無事だったのかなとか思っていたところで、国王様から話を切り出された状態だ。
「いいのです国王様。一人娘を想う父親の鑑ではありませんか」
「そうなんだ! 可愛い一人娘を想うとどうしても……あっごめんってミーナちゃん。ちゃんと話すから」
リュウの言葉に対する反応で、再度ピンチに陥る国王様。会ってから殆どこんな様子しか見てないから心配になってきた。大丈夫かこの人。つーかリュウのやつ絶対わざとやったな。ダークサイド過ぎる表情してやがる。
「さて、本題に入ろう」
そういった国王様の雰囲気が変わる。
「今回君たちは、我がフィアンマ家に保管されている"本"を求めて、わが王宮へ来たと聞いている。何故その"本"を求めるのかという理由も娘から聞いているが、一度君たちの口から直接聞かせてはくれぬか?」
王様のその一言から、俺たちがミリアルに召還された経緯を説明する。説明と言っても、みんなへ説明した時と同じ様な内容だから、時間は対して掛からなかった。
話を終えた後の王様は、何かを考えるような表情をしていた。そう言えばあの時リュウも同じ様な顔をしていたな。
「ふむ……。つかぬ事を聞くが、君たちをこちらへ送った人物は、自らの事を"女神"と呼んでいたりはしなかったかい?」
「えっ? そうですが……何故――」
「やはり……! すると"あの話"の通りに……」
あえて話さなかった部分が分かったのかという俺の疑問は外に出る事はなく、リュウによって遮られた。
「なる程。何故彼等二人以外の子まで来ているのかは疑問ではあったが……。君はあの"物語"を知っているのだね」
王様の問い掛けに対し、頷く事で肯定の意を見せるリュウ。
「幼い頃に祖母に聞かせて貰っていました。祖母も自分の祖母に聞いた話だと言っていたので、作り話だと思っていましたが……」
「おいおい、一体何の話だってんだよぉ。俺等にもわかるように話してくれよリュウ」
冬馬の投げ掛けに答えたのはリュウではなく国王様だった。
「君たちが求めている"本"……正式には"物語"は、昔はかなり知られた話だったのさ。それこそ絵本にもなっていたくらいにね。しかし時が流れるに従って、その物語を綴った本が徐々に無くなっていったらしい。そして今では物語の存在自体が殆ど忘れ去られ、物語が綴られた本も、フィアンマ家に伝わる一冊のみとなってしまったのさ。……まあ、何故その様な事になってしまったのかは、今となっては確認のしようがないんだけどね」
話し終えた国王様は立ち上がり、さらに奥の部屋へと俺たちを誘導する。ついて行くと、台座に置かれた一冊の本が目に入った。
「あの本が例の物語が記載されている本だよ。手に取る事は自由に出来るから、好きに読んでくれ」
本を手に取った俺は、冬馬とリュウも読めるように本を開く。
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『異界の英雄』
幾千年も古代、神族が天へと昇る前の話。神が住みしその地に一人の邪悪な心を持つモノが誕生した
そのモノは、神と幾度も対立したが決着はつかず。何時の日からかそのモノは邪神と呼ばれた
神に仕える者が言った。邪神を早急に始末するべきだと
神は答えた。私はこの世に生きる者全ての味方。それが神だと
神は邪神と分かり合おうとしていた。邪神は神を殺そうとしていた
神と邪神の対立は数百年に及んだ
神は死んだ。邪神の手によって
邪神が統べる事となった世に人々は絶望を感じていた
その時一人の女が立ち上がった
彼女は自分を女神だと言い、神の代わりに邪神と対立する事を決意した
とある男が言った。しかし女子がどうやって邪神と対立するか
女神は答えた。異界の者を呼び寄せると
女神は異界より一組の男女を呼び寄せた
男も女も童ではあったが、その世界の誰よりも強く、凄まじい力を持っていた
女神と男女は邪神に立ち向かい、邪神を封印することに成功する
しかし激しい戦いの影響か、女神の力は弱まり、男女を元の世界に戻す事が出来なくなってしまった
異界より呼び寄せられた男女は、その地で末永く暮らした
世界は男女への経緯を表し、男女の事を『異界の英雄』と呼び、その名を語り継いだ
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