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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
学園イベント 2
39/148

二人の企てと、

「なぁ冬馬。逃げる側のルールってなんて言ってたか覚えてるか?」

「んぁ? そうだなぁ……。確か『攻撃魔法と武器は禁止で、使っていい魔法は詮索系と身体強化のみ』だったか?」

「そうだよな。……一個思いついた事があるんだけど、達磨さんに確認してみないと微妙だなぁ。あの人今どこに「呼んだかァ!?」



 ……あれぇ? なんだか遠くの方から達磨さんの声が聞こえてきた気がするよ?



「えーっと……。聞こえてるんですか? つーか何処から話してるんですか? スゴく遠くからのような気がするんですけど……」

「聞こえているゥ! 俺はスタート位置にいるぞぉ! それより何か問題でもあったのかァ!?」

「そんな所からこの声が聞き取れてる事に問題ありだよ!」

「筋肉があるからなァ! 造作もないィ!」



 何でもありなのかこの世界はッ!?



「大護。今はんなこと気にしてないでよ、さっさと聞いちまおうぜ?」

「……それもそうだな。考えても仕方ないし。あのー先生、質問なんですけど――」






 ◆  ◇  ◆






 リュウの指示の元、大護と冬馬の二人がいる場所を探し当てているノエル、レイア、アリアの三人。レイアが指示を受け取り、ノエルとアリアが実行する事で連携を取っている。

 大護たちの動きがばれているのは、リュウの詮索魔法"プライ"によるものである。"プライ"の一般的な効果範囲としては五百メートル~一キロ弱とされているが、リュウの効果範囲は最大で五キロにもおよぶ。

 "プライ"の効果として、使用者が直接身体に触れた事のある相手が詮索範囲にいる場合、その相手を特定する事が可能である。

 "プライ"で場所を確認したリュウが他のメンバーへ"念話"で伝達する。その動きが有ったからこそ、大護と冬馬のいる場所はリュウたちに筒抜けになっていた。



(さてと、お二人の次の場所を探さなくてはいけませんね。……しかし、あの二人は何故あそこまで逃げ続けられるのでしょうか)



 リュウの魔法により、オニ側が有利な状況は変わらないが、それでも一向につかまる事のない大護と冬馬の二人を前にして、リュウは焦っていた。



("プライ"の持続時間もあと僅かですね……。ふふっ。まさかこの魔法を三十分も使用して尚、逃げ続けているとは驚きです。少し自信も無くなってしまいます)



 言葉とは裏腹に楽しげな笑みを浮かべるリュウ。しかし直ぐに笑みが消え、真剣な表情へと変わる。



(――捉えた!)



 リュウの詮索範囲ギリギリの場所。付近には遊撃要因として動いていたレドがいるその近くに、逃げ側の二人の気配を捉える。



「レド君! そこから東へ三百メートル。木にもたれる様な形で休憩中のようです。ばれぬように慎重に近付いて確保してください」

 

 

<わ、分かった!>



 レドとの念話をすぐに終わらせ、再度詮索へ戻るリュウ。指示した後に大護たちが動きを見せないかを確認する為だ。



(大きな動きは有りませんが……。お二人ならばすでにレド君の接近に気が付いていてもおかしくない筈です。それなのに何故動かないのか)



 普段の戦闘であれば、それなりの力を持つ者が、待ち伏せして迎え撃つ戦法を使う事は少ない。しかし、今回の"オニごっこ"は逃げる側には反撃が出来ない状態である。

 故にオニの接近を許さず、徹底的に逃げに徹するべきであるのに、何故あの二人は動かないのか。今までの動きから手を抜いている訳では無い事も把握しているリュウの頭には、その疑問ばかり飛び交っていた。



(……ふぅ。考えていても埒が明かないですね。どう動くのか見せていただこうと思います)






 リュウから指示を受けたレドは、可能な限り気配を消しながら一直線に大護たちの元へ向かっていた。



(リュウの指示通りのままなら……。あの木の後ろだ!)



 指定の木の近くまで近づいたレド。一度付近の木に身をを潜めて様子を伺う。



(よし。あの木で間違いない)



 確認してから身体強化を施し、自らの腕に風を纏わせる。一瞬で間合いを詰めて一撃を入れ、大護たちを気絶させる為である。



(ただ問題としては、ボクの攻撃があの二人に通じるのかどうか……。うぅ~、急に自信がなくなってきたな~。でもやるしかないんだ!)



 覚悟を決めたところでレドが二人がいるであろう地点へ飛び出す。



(――いたっ!)



 レドの動きに驚いたような表情で大護と冬馬の二人がレドを見る。肉弾戦では冬馬に適わないと踏んだレドは、狙いを大護に絞り、風属性を付与した右腕で殴りつける――



「――わッ!!!」

「――っ!?」



 筈だった。大護へと伸ばした腕はどこにも当ることなく、レドは地面に方膝を着く。



「な、何……?」



 何が起こったのか判らない様子のレドが顔を上げた時には、二人の姿は既に無かった。



「く、っそ」



 何をされたのかを悟り、自分が動けるには、後数十秒は必要だと判断したレドは、その場に座り込む。

 二人にしてやられたという後悔の念に駆られるレドだったが、どこか安堵しているような表情もしていた。




(流石にこれぐらいじゃだめだったか~。あの二人だし仕方ないか。……でも、次は絶対――)






 ◆  ◇  ◆






「いやー上手くいって良かった! レドの本気ってあんなに速かったんだなぁ」

「んお? 対抗戦の予選でもレイア相手にマックス出してたの見てただろうよぉ?」

「外で見るのと自分が立ち会うのは結構変わるだろ? 新幹線の外と中の景色が違うみたいなもんだよ。それに、でてくる寸前まで足音も何も聞こえなかったし」

「あぁ、そういう事か。確かにアイツの隠密行動での動きはスゲェわな。にしても先生に許可がもらえてよかったなぁ、さっきの作戦」

「そうだな」






「"音"での反撃もダメですかね?」

「"音"での反撃だとォ!? ……なるほど、三半規管へのダメージか」



 そう。相手の耳元で大声を出して、一時的に三半規管へ負荷を与える。元の世界でやったら結構問題になるかもしれないけど、魔法の世界ならすぐに治せる……よね? 大丈夫だよね?



「……面白いィ! 許可しようゥ! 但し、その技を利用した生徒には、授業終了後保健室に行くように伝える事ォ! 伝言はオニごっこ終了後で良いぞォ!」

「判りました。許可頂きありがとうございます!」

「気にするなァ! 今年のオニごっこはここから面白くなりそうだァ! ハッハッハァー!」






 って感じに案外すんなりと許可をもらえたんだよな。そしてレド相手に使うことによって、オニ側の一番の機動力を削れるって事だ。



「これでレドは暫く動けない筈だ。あの速度でいつまでも追いかけられたら、危うく指輪を外さないといけなくなるところだったよ」

「へへっ! 俺ぁまだ余裕だったけどなぁ!」

「……今だけはお前の肉体補正が羨ましいわ。今だけは」

「おいおい、もっと正直になれよぉ?」

「うるせぇやい」



 残り時間は約十分。レド相手にはさっきのはもう使えないと思うけど、他のオニたちには有効だろう。冬馬に話した時なんて「ノエルの鼓膜はぶち破ってやる!」なんて豪語してたくらいだし。

 ……ちゃんと止めたしそこまでしないって言わせたからね? 安心してね?



 あと問題としては、何故俺たちの場所がバレてるのか、だな。これは間違いなくリュウが何かしている筈だ。冷静に考えれば、アイツだけずっと移動してないし、そう考えるのが当然だよな。



 さて、ここからどう動くか。






「アイツ等が"同郷の奴ら"だ。メリトを探ってた甲斐があったぜ」

「……わかる、の?」

「あぁ。大きな力は使っちゃいねェが……。あの指輪で力を抑えてるってところだろうよ」

「……そう、なんだ。……普通の、綺麗な指輪にしか、見えない」

「女でも綺麗と思える指輪を着けてる時点で、力を抑える代物だって事は、異世界召喚物では当たり前の事だ」

「……た……ゼル言ってる事、たまによく、判らない」

「俺様が判ってりゃ良いんだよ。――そんじゃァ、始めるとするか」

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