男の子だもん
時間が過ぎて現在放課後。冬馬との約束通り、訓練場に向かった俺だったが、訓練場には何人か他の人がいたから、能力の訓練はお預けに。しょぼん。
冬馬はまだ来ていないようだから、少し個人訓練をすることに。何をしようかと考え、ちょっと試したい事が出たからそれをやることに。
まずは雷属性を身体に集中させて、そこからさらに右手に移す。そのまま一本の剣を具現化させる。
ここまでは俺が即席で作った"ライトニングセイバー"と変わらないが、そこからさらに工夫を加える。
全体的に大きく仕上がり、両手持ちにしていた剣のサイズを少しずつ小さくする。全体的に小さく纏めたら、幅の広い刀身をより細く、薄くする。最後に刀身を少しだけ伸ばして完成。
作り上げたのはサムライソード。そう、刀である。まぁ、マンガで呼んだ知識しかないし、それっぽい物でしかないと思うけど。初めて挑戦した割には上手く作れたんではなかろうか。
ただ、作成に時間が掛かりすぎて、実践ではまだ使えそうにないな。刀……使ってみたいのになー。
一先ず刀の具現化はこのくらいにして、魔法を試していくか。
訓練開始から三十分くらい。訓練場にいる他の人が休憩に入っている時に冬馬が到着した。後ろにミーナ、ノエル、レド、アリア、レイア、リュウの六人を連れて。最早いつものメンバーとなりそうな勢いである。
「大護ぉ、待たせたなぁ! 早速手合わせしようぜ!」
「その前に準備体操でもしてきたらどうだ? 俺は大分身体も温まってるし」
「おっ、それもそうだな! じゃあちょっくら行ってくる!」
そう言って走り出す冬馬。走りながら飛び跳ねて、空中で数回転した後再度走り出してと。ウォーミングアップってそこまでド派手にやるもんでしたっけ? 柔軟とかそういう感じじゃなかったっけ?
「うひゃ~、トーマの動きは相変わらずスッゴイね~! 準備運動であそこまで走る意味はわからないけど」
「レイアさんの気持ちはわかるけど、準備の仕方は人それぞれだしいいんじゃないかしら」
「も~ミーナったら、私の事は呼び捨てにしてって言ってるじゃん」
「ご、ごめんなさい。その、あんまり慣れなくって……」
「うー、もうかぁわいいんだからーっ!」
「ちょ、ちょっとレイアさん!? くっつくのは止めてほしいのだけれどっ」
「うひひ~。呼び捨てにするまでずぅっとこうしてようかな~」
「や、やめ……あっ。もうっ」
「れ、レイアちゃん、そろそろ止めておいた方がいいんじゃないかなぁって思うんだけど……」
「おっ? アリアも仲間に入りたい? よーっし、じゃあ三人で組んず解れつだーっ!」
「え、え、いや違っ……ふええぇぇぇっ!?」
女子同士の微笑ましいやり取りだと思ってスルーしてたのに、一気に違う方向に進み始めたもんだから、どうすればいいのか困惑してきた。
一旦落ち着く為に、耳だけ全力で傾けておこう。見るのはきっと駄目なパターンだ。見ちゃいけない見ちゃいけない。
「ね、ねぇみんな。止めなくていいの?」
「諦めろレド。あの領域には、俺たち男子が踏み入って良いものではない。おとなしく冬馬の準備運動を見ながら耳だけ傾けろ」
「皆さん仲良しで良い事じゃないですか。写真の準備でもしておくべきでしたね」
「この眼福を止められるものなら止めてみろレド。その瞬間オレはお前に牙を向ける事になる」
「止めないって意見だけは伝わったけど、みんな下心しかないじゃないか! あぁもうノエルに至っては仁王立ちで見守ってるし」
「「「男の子だから仕方がない」」」
「そんなところだけ息ぴったりにならないでよ! ……もうヤダ。ボク一人じゃ捌ききれないよ」
耳に幸せを感じながら待っていたら冬馬の準備運動も終わったみたいでこちらに戻ってきた。しっかしあれだけ動き回ったのに汗一つかいてないって。どうなってるんだコイツの体は。
「おっし! 準備運動も完了したし、早速――――」
そこまで言って、冬馬が膝から崩れ落ちたってえええええええええ!? 何でいきなり!?
「おい冬馬!? どうした!?」
「美少女三人が……。組んず解れつしてる……だと……っ!? なんでこんな場面を見逃していたんだ俺はぁっ!」
心底悔しそうに地面を叩く冬馬。余程悔やんでいるのか、叩くたびに地面が陥没していく。いや威力。そんな親友の肩に手を置いて、この一言を捧げようと思う。
「幸せだったよ。こっち側は」
「うわああああああああああああっ!!」
「いや、もう特訓に移ろうよ! トーマ君も戻ったんだからさぁ!!」
レドが心底大変そうだったから本題へ戻るとしよう。満腹満腹。そして合掌。




