先生たちの疑問と訓練と
遠足という名のサバイバル生活を終えた俺は、現在職員室に向かっている。なんでも、遠足の時に入手した魔物の一部に関して、少し話があるらしい。
ホームルームでリル先生に直接呼ばれた時は一瞬ヒヤッとしたが、内容を聞いて安心した。"次元玉"を使って出来たクレーターに関しての問い詰めだったら弁明の余地がなかったし。
ちなみに、あの後助けに来てくれた皆には、雷属性の上級魔法を試して、ちょっと威力の調節に失敗したと伝えた。
かなり怪しまれてたけど、どうにか納得して貰えたようでそれ以上詰め寄られる事はなかった。
ただ、ミーナと冬馬には別に真相を伝えた。そして二人に言われたのが「そんな事だろうと思ったぜ(わ)」。何さ二人してっ。
「着いた着いた。失礼しまーす」
リル先生の席を探そうと辺りを見渡したけど、見当たらない。見当たらないと思ったら、奥の個室から顔だけ出してこちらを見ていた。
「来たかキリュウ。そのままこちらまで来てくれ」
そう言ってまた個室に戻るリル先生。個室まで移動し中に入ると、リル先生以外に一人の男性がいた。って学園長だった。
そして二人で、俺が取ってきたオーガ(仮)の角を見ながら頭を悩ませているようだ。
「学園長まで居るなんて。俺の討伐した魔物に何かありましたか?」
俺がそう聞くと、二人は一度顔を併せてアイコンタクトを取る。えっ? マジで何? 怖いんですけど……。
「キリュウ。単刀直入に聞くが……。この魔物はどこで討伐した?」
オーガ(仮)の討伐場所……?
「えっと、俺たちが拠点にしてた水辺付近ですね。木ばかりだったので細かい場所までは流石にわからないですけど」
思い出しながら答えると、二人とも考えるように黙り込む。そろそろ呼ばれた理由を詳しく聞きたいところなのに。
「ん? あぁ実はこの魔物……オーガという魔物である事は間違いないと思われるんだが、どうにもおかしなところがあってな」
「おかしなところ? というよりも何で俺今ナチュラルに心読まれたんですかね?」
「そんなの顔に出ていたからに決まっているだろう」
「知らない、そんな決まり知らないよ先生」
俺の嘆きは無視され、再び自分の世界に入るリル先生。また放置プレイかとか考えていたら、見かねた学園長が続きを話してくれた。
どうやら、俺が倒したオーガ(仮)の角は、普通のオーガの角と比べると硬度が段違いらしい。
通常のオーガの角は、中級魔法で破壊できるくらいの硬度しかないらしいが、俺が倒したオーガ(仮)の角は、上級魔法を当てても亀裂が一筋入った程度だったとの事。
そうなると俺が倒したのはオーガの上位種にあたるらしいが、オーガの上位種はAランクに指定されていて、あの島には生息していないという事らしい。
「そして、さらに奇妙な事がある」
「奇妙な事?」
学園長の話に付け加えるように、リル先生が続ける。オーガ(仮)の角から、明らかに人間が手を加えたような痕跡が見つかったらしいのだ。何でも魔力を流した形跡が見つかったとか。
「じゃあ俺が倒したオーガ(仮)は、人間によって強化された可能性があるって事ですか?」
「かっこかり……とやらは不明だが、その可能性が高いと見てる。今後も調べはしてみるが、恐らく決定的な事は判らず仕舞いになるだろうな。ともあれ、証言が聞けて助かった。ありがとうなキリュウ。もう戻って良いぞ」
俺自身の中ではまだ不完全燃焼になってるけど、これ以上考えても無駄だろう。リル先生と学園長に挨拶をして、そのまま教室へ戻る。
教室へ戻り席に着くや否や、冬馬が俺の元へ現れる。
「無事に終わったのか? リル先生からの呼び出し」
「まあな。元々オーガ(仮)に関しての事だったし、そんなに心配はしてなかったけどな」
「呼び出し内容を聞く前はあんなにビビッてたくせに」
「うるへっ」
「そんなコトは置いといて、だ。今日の放課後空いてっか? 暇だったら訓練でもしに行こうぜぇ」
訓練か。次元の能力のコントロール問題もあるし、良いかもな。
「よし、わかった。場所とかはどうすればいいんだ?」
「訓練場を確保してあるからそこでやろうぜ。んで最後は勿論サシでの勝負な! 初めて大護と戦えると思うとテンション上がるぜ!」
「ぶっ殺してやる」
「その言い方だと複雑な気持ちになるよっ!?」
「冗談だよ。戦うのは別に良いけど、次元属性の訓練もしたいからその後な」
「りょーかいだ。ただ、他の人がいる事もあるから気ぃ付けろよぅ」
「忠告ありがとな」
とりあえず"次元玉"の範囲を絞る練習ができるといいんだけどなぁ。