影の存在と、
「アリアッ!」
「ぇ――――っ」
アリアの手を引いて自分の元へ引き寄せたその直後。アリアのいた場所が爆音と共に大きく陥没する。
俺はアリアを抱えた状態で拠点に向けて全力で走る。暗くて全貌は見えなかったけど、恐らく巨大な人型の魔物だ。だけど今は先ず、アリアを安全な場所へ連れて行かないと!
「だっダイゴくん!? さっきの音って一体……。ってそれよりも! も、もう降ろしてくれて大丈夫だよ!? 」
腕の中に居るアリアが少し動き出す。確かにこのままみんなのいる拠点に連れて行くのはアリアも恥ずかしいだろう。
拠点から離れすぎないように移動していたおかげで、大分近くに戻れたし、アリアだけでも先に戻ってもらった方がいいな。
「分かったアリア。それじゃあ、ここから先へは一人で戻ってくれ。俺はさっきの魔物を片付けてくるから」
「だ、大丈夫……なの?」
「まっかせとけよ!」
アリアを降ろしながら、明るくウィンクとグッドサイン付きで言葉を返す。アリアを不安にさせないために明るく返したけど、我ながらウィンクはやりすぎたと後悔。
「が、頑張ってね! すぐにみんなを起こして戻ってくるからっ!」
そう言ったアリアはそのまま拠点に向けて走り出す。
そんなアリアを見送った直後、俺の目の前にさっきの魔物が姿を表した。俺の二倍くらいのサイズがある、人型の魔物。知識の無い俺が魔物と断定した理由は頭に付いている二本の角が見えたからだ。
「あれかな。所謂"オーガ"ってやつかな」
頭の角もまさに"鬼"って感じで生えてるし、多分そんな感じの魔物だろう。そろそろアリアも拠点に到着するだろうし、このまま待っていれば応援が来るはずだけど……。
折角エンカウント出来たわけだし、色々試しながら倒しちゃうか。
そう思い、覚悟を決めた矢先、オーガ(仮)が右腕を振り上げて、俺に向けて勢いよく振り下ろす。ハンマー的な感じだな。
問題なく避けれそうだけど、手始めに防御のテストでも。
「えーっと。こんな感じだった……かなっ!」
自分の回りに薄い魔力障壁を作る。オーガ(仮)の右腕は魔力障壁に弾かれる。魔力障壁には傷一つなし! よし!
「大丈夫っぽいな。じゃあ次は―――"インパクト・ボルト"……を縮小!」
訓練場でも練習していた攻撃魔法。それのミニマムサイズ。普通に使った時はサッカーボールくらいのサイズだったけど、今回はそれをより圧縮して、サイズ的にはビー玉くらい。
それを指先に留まらせた状態で、手で銃の形を作り、オーガ(仮)に向ける。気持ち的には某大泥棒の相棒。
「内部からの破壊はしないように……。雷の力をスピードと貫通力に活かせるように……。"ライ・ガン"!」
そのまま撃ち放つ。放った"ライ・ガン"はオーガ(仮)の眉間を容易く貫通して、そのまま後方の空へと向かい、すぐに見えなくなった。
初めて使ったけど上手くできたな。あ、語弊があるといけないから説明すると、霊の丸では断じて無い。雷の丸、つまり"ライ・ガン"なのだ。
眉間を撃ち抜かれたオーガ(仮)はそのまま前方へと倒れこむ。どうやら倒しきれたようだ。
一応討伐の証としてオーガ(仮)の角を手刀で切り落としてから、最後の確認に進む。最後に試すのは俺の能力である"次元"。
物体に向けて使ったことがなかったから、どんな感じになるのかを試したかったんだ。
大きさ的にはビー玉くらいに調節。作った……。そうだな、"次元玉"とでも言っておくか。"次元玉"をオーガ(仮)の亡骸へと飛ばす。
"次元玉"が亡骸に触れたその瞬間。オーガ(仮)の姿どころか、周りの草木や土も一瞬で消滅した。
――――およそ十メートルほど。
俺も範囲内にいたが、発動者本人には影響が無いのか、特に何も感じなかった。後ろを振り返ったら、木とか土とかごっそり無くなってて、冷や汗だらっだらだったけど。
「次元属性は、魔法より危険性が高すぎて笑えない……と。――マジでコントロールの特訓しよう。ホンットにマジで」
戦慄を覚えていたところ、アリアが他のメンバーを引き連れて戻ってきてくれた。全員無事だったことも確認出来て安心したけど、この状況をどう説明したものかと考えると……。
頭を悩ませてもいい案が出ない。諦めよう。諦める前から試合は終了してたし、なんなら完勝できたし大丈夫だろう。――――レイアとレド以外は。
◆ ◇ ◆
メリト学園から遠くはなれたとある場所。目を瞑っていた男が、顔を顰めた後にそっと目を開く。 疲れた様子で長く息を吐きながら、座っていた椅子に背を預ける。
その様子を見ていた少女が静かに近付き、男の様子を見るように顔を上げる。
「……実験、失敗したの?」
「おいおい。どうなってやがる。"オレ様が作った"プロトタイプオーガの反応がカンッゼンに消失しやがったぞ? 通常のオーガに比べて10倍以上の力を持ってたってのによ。そこらの雑魚共じゃあ手も足もでねぇ筈なんだがな」
少女の問い掛けに答えるよりも先に、男の文句が漏れる。日常茶飯事なのか、その様子に少女が不快感を出す事はなく、少し考えた後に一つ意見を出す。
「……タイミング、悪かったかも。……今あの島では、メリト学園が、遠足してるって」
「メリトぉ? んなガキ共に、オレ様の作品が潰せるたぁ思えねえが――まさか」
男が一つの結論を出しつつ少女と目を合わせる。小さく頷いた少女は、男と同様であろう答えを頭に浮かべつつ答える。
「……可能性は、あると思う。でも、決めつけはできない。教師達が動いた、とかもある」
「わぁってるよ。けど、可能性が出ただけでも儲けもんじゃねぇか」
「……ん」
何か収穫を得た様子で、男は口角を吊り上げる。そして今後の動きを自分の中で整理し、椅子から立ち上がる。
「今後暫くはメリトの様子でも探ってみるとすっか。――ってもう時間か、仕方無ぇ。オイ行くぞ、リン」
「……待って、ゼル」
リンと呼ばれた少女はそそくさと歩き出した男、ゼルの後ろを追うように歩き出す。部屋の鍵を開けたゼルは、再度口角を吊り上げながら、部屋の扉をあけ外へと出向く。
「会えるとイイねぇ。"同郷の奴等"に」




