二人きりの時間
その後、水辺を拠点にした俺たちは、ノルマ達成の為に魔物を探し行く事になった。時間が掛かるかもしれないと思っていたけど、意外とすんなり魔物と遭遇し、全員ノルマを達成する事ができた。
達成した後は倒した魔物で夕食を済ませて、早めの就寝だ。けど、野営するのに全員で一斉に寝るのは危険過ぎるとのリュウとレドから提案が有り、二人ずつ交代で見張りをする事になった。
つい先ほど、冬馬・ノエルペアと交代して、今は俺とアリアの二人で見張りをしている。女の子達は寝ててもいいと言ったのに「仲間外れにするつもりかー!」とか「私たちの力は必要ないのね……そうだったの」とか「わ、私たちだけ寝てるなんて出来ないよっ!」とか言われたもんだから、何も言い返せずに結局全員で見張りをする事に。どの世界でも女子は強いんだな。
「あっ、あのっ。ダイゴくん」
感傷に浸っていると、横からアリアに話し掛けられた。呼ばれた方へ顔を向けてアリアと目を合わせる。改めて見るとかなり可愛いよなアリアって。
小型犬みたいで、スゴく守りたくなる衝動に駆られてしまうというか……。そういえばこっちの世界の髪の色素ってどうなってんだろ。金髪とか藍色の髪の毛は地球にもいたけど、純粋な黒髪とかって見てないなー。ノエルは赤だし、アリアはピンクだし。遺伝なのかな。
「ああああわわわわっ! ダイゴくんってば!」
また慌ててる。初めて話し掛けられた時もかなり緊張して慌ててたなー。……って、会ってまだ一ヶ月くらいしか経ってないのに、何でこんな事考えてんだよ俺は。
ふと気が付いたらアリアの顔が目の前にあった。マンガみたいに目をグルグルとさせながら……っておい!
「あわ……わ……」
「――――っ! ごめん! 考え事しててボーっとしてた! アリア大丈夫か?」
急いで距離をとって数秒。アリアの意識も戻ってきたみたいで、目もいつも通りのぱっちり二重に戻ってきた。
「……はっ! う、ううううん! ダイジョーブ! ばっちりなんだからねっ!」
「ダメだ! 絶対に駄目な状態だ! こんな口調のアリアは……。いやまて。俺が知らないだけで、実はこっちがアリアの本来の状態なのか? だとしたら今までのアリアが遠慮してる状態って事になるのか? となると俺がアリアに遠慮させるような態度を取り続けてしまったいたって事にッ!?」
な、なんだか非常に申し訳ない思いで埋め尽くされてきた! でもいざ遠慮をしないでもいい関係を目指すって思っても何をどうすればいいのかなんて想像つかんし、あ、あれ、そもそも遠慮ってなんだっけ? 一先ず落ち着いて深呼吸を!
「――――ふふっ」
「ヒッヒッフー、ヒッヒ……へっ?」
深呼吸中に聞こえたのはアリアからの小さな笑い声だった。
「ご、ごめんなさい。こんなに慌ててるダイゴくんなんて初めて見るから、なんか……安心した」
安心ってなんだ安心って。
「だ、ダイゴくんって、何でも出来ちゃって、いつも冷静というか……。だから、違う一面が見れた事が、その――嬉しいなって思って」
「そんな風に見えてたのか。冬馬と行動してる時は自分では冷静を保ってるつもりだけど……。アイツ結構気ままに行動するし、俺ものると収拾がつかなくなるからな。でも結構簡単に崩されてたと思うぞ? 自分で言ってて悲しくなるけど」
「あ、あははは、確かにそうかもね。さっきのコカトリスの時も、ダイゴくんも私たちとおんなじ反応してたもんね。リュウくんはなんか普通な感じだったけど」
「あれはあの二人がおかしいんだ。大体あんなでかい奴が急に出て来て、全く動じないなんて無理だ」
「でも、ダイゴくんは……その、強いから、魔法で一撃なんじゃないかな」
「その魔法で一撃にする為の精神力が追いついてきてないから動じるんだなきっと」
逆に聞きたいけど、何で冬馬のやつはあんなに躊躇なく動けるんだ。自分よりデカイ動物なんて目にしたら、普通は怯むもんじゃないのか? あれか、地球にいた時の記憶が無くなっちゃったのかな?ホントにそうだとしても洒落にならないし、これ以上考えるのはやめておこう。
アリアと他愛の無い話をしていたら、火にくべる為の薪が少なくなってきた。交代の時間まであと少しだし、最後に薪でも集めておこう。
「そろそろ交代の時間だし、最後に薪を集めに行こうと思うけどアリアはどうする? 一緒に行くか?」
「うん。私も手伝うよ!」
「分かった、ありがとう。時間もあるしそんなに遠くには行けないから、一先ず近くに落ちてるやつを集めるか」
そう伝えて二人で薪を拾いに行く事に。星の明るさを頼りに足元に気を付けながら薪を回収する。
一通り集め終えたところで、拠点に戻ろうとしたけど……。何か不思議な感覚がする。来た時と同じ道を歩いている筈なのに、別の場所を歩いているような。
「なぁアリア。この道って薪を拾いに行くときも通っ―――」
後ろにいるアリアへと声を掛けながら振り向いたが、俺の意識は別の場所へと向かった。
アリアの更に後ろにいた、俺たちよりも何倍も大きさの影へと。




