皇女様はお見通し
ところで――とナックさんは続けて言ったあとに、俺と冬馬の後ろに目を向ける。
俺たちもつられて後ろを見てみると、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしながら、固まっている四人。あとの二人のうち一人は、ほぅ……。みたいな顔を。もう一人はソイツに片足を持ち上げられながら絶賛気絶中。
なんで固まってるのかは知らないけど、覚醒させないと話が進まないから、みんなを起こすことに。
「おーい。なーにみんなして固まってんだー? ……起きろぉおお!」
ちょっと声を張り上げると、みんな我に戻ったようで……あ、気絶してるのがまだいたか。
「"アクアボール"っと」
「ブボハァッ!」
よし。これで全員起きたな。
「あ、あの、キリュウ君。ここがキリュウ君が来たかったギルド……なんですよね?」
「え? ああそうだけど……」
「ウチの聞き間違いじゃなければ、ギルド"精霊の涙"って言ってたよね?」
「ああ、言ってたよ?」
「それでもしかしてだけど、そこの人って……ギルドマスター?」
そうでしたよねと、確認の意味を込めながらナックさんの方に顔を向ける。力強く頷くナックさん。うん、間違いないな。
「そうだよ。この人がギルドマスターのナック=リジャーナさんだよ」
俺のこの一言でまた停止を開始する三名。その流れはもういいッス。だから戻ってきて。
「"ナック=リジャーナ"。その二つ名は【闇夜の閃光】」
俺が一人で涙目になってると、突然ミーナがそう話し出した。……ってナックさんも二つ名持ちだったのか。
ミーナの言葉のあとに続くように、今度はリュウが話し出す。
「トップギルド"精霊の涙"のギルドマスター。普段ギルド員以外に顔を見せることはしないと聞きましたが……」
ちょっと待ってくれ。今リュウのやつ"トップギルド"って言ったよな? それってつまり……スゴいところにお世話になってたんだなあ。
……運がいい……のかな?
リュウの言葉を聞いたあと、ナックさんは頭を二度三度程掻いて答える。
「まあギルドにいるときは、仕事上部屋に籠ることが多いからな。外に出るときは殆どの場合、現地に転移とかしてるし。好きで顔を見せない訳じゃないのさ」
苦笑いしながらそう話す。まあトップの人間って言ったらそんな感じだよな。会社の社長とかも、部屋で書類とにらめっこしてるイメージだし。あ、俺の中ではね。
「しつもーん。いいッスかー?」
とっても元気な声でそう言ったのは、隣の冬馬君。はいどーぞ、冬馬君。
「ナックさん俺たちがここに来たときは、案外すぐに出てきてたような気がするんスけど」
「あんだけ下から物ブッ壊れる音とか聞いて、出てこない奴がいると思うか?」
「「すみませんでしたあああ!」」
速攻で頭を下げる俺と冬馬。そりゃそうだよ、俺だって逆の立場だったら降りてくるよ。
「まあ顔をあげてくれ。あれはあの時に全部終わったんだし、気にすることじゃねえよ」
そういってくれるナックさんが俺には神様に見える。
「あなたが神か……」
冬馬も同じ考えだったらしい。今回は仕方がない。
「あのー。そろそろ話を進めてもらってもいいかなーって」
今回は自ら復帰してくれたレイアのその一言で、本来の目的を思い出した俺たちは、ナックさんにお世話になっていたことの説明も含めて話し始めた。
まず始めに、なぜナックさんと知り合いなのか。とゆうことから始まった。たまたま入ったギルドがここだっただけだと伝えると、どうしてギルド内に入ることになったのかとアリアから聞かれた。
そのままの流れで、自分達が異世界から、地球という別の世界から来たことを伝えるべきなのかと思ったけど、俺はそこで押し黙ってしまい、アリアは編入した初日のことを思い出したのか、小さな声で、ごめんなさい……。と謝ってしまった。
多分俺が言いたくない何かがあると察してくれたのだろうけれど、その優しさが申し訳なくて、言えない自分に腹が立った。
ただ単に怯えてるだけなのに。
一瞬、変な空気になってしまったが、すぐにノエルが今日の訪問の目的についての質問を投げ掛けてくれたから、それ以上は何もなかった。
訪問の目的は、ナックさんに個人的にお礼が言いたかったからと、みんなに伝えた。それを聞いたナックさんは、そのまま帰るのも訪問の意味がないだろうから、ギルドについての話でもするかと、言ってくれて、みんなでギルドマスターの部屋にお邪魔することになった。
各々二階に上がっていくなかで、みんなの後ろをついていく形で行こうとしてた俺だったが、階段に差し掛かる前に、ミーナに呼び止められた。
何かあったか? と返事をするが、何も言わない。不思議な感じで目を合わせること五秒。
スッと俺の横に来たミーナは、軽く微笑みながら言った。
──焦らないで、言うべき時に言えばいいじゃない。って。
そう言い残してから俺の横を通りすぎて、みんなのあとを追うように二階に上がっていった。
見透かされてることに対しての恥ずかしさが出てきて、頬が赤くなっていることが鏡を見なくてもわかったけど、それ以上に安心している自分がいて、自然と顔が綻んでいた。




