原点?回帰
「それでは午後の授業は事前に連絡してあった通り、ギルド訪問の時間とする。個人で行くも良し、団体で行くのも良し、だ。ただし、迷惑になら無いようにしてくるように。私からは以上だ」
リル先生の話が終わると皆教室から出ていく。個人で行くも良し、と言われてはいるが、皆団体で行くようで、帝に会えるといいな的なことを話ながら進んでいる。
「さってと、俺達も出発するとしようか」
「う、うん……でも、あの二人は……」
レドがそう言いながら向いた方向を俺も見てみると、体から煙を出しながら倒れている冬馬とノエルの姿が。
「放っておいていいのよ。あんなの」
「まぁ今回ばかしはちょっと……ね。流石にウチも庇う気にはなれないよ」
「あ、あはは……」
ミーナはゴミでも見るような目で冬馬達に視線を送り、レイアはお手上げのようなポーズで首を横に降り、アリアは人差し指で頬を掻きながら目線を泳がせる。
「とまぁ、女性陣お三方はお怒りの様子だから、俺も触れずに行きたいところなんだけど、あとから合流ってのも面倒だし、一先ず一緒には移動させるよ」
レドにそう伝えて、皆を気絶組の方に集める。――さて、初めて使うからうまくいくか分からないけど……試してみようか。
教室の床に魔力を流し込み、魔方陣を作り出す。八人分だから結構大変だけど、そのまま全員の足元まで魔方陣を広げる。
「行くぞっ"転移"」
掛け声と共に手を叩いて転移を発動させた俺達は、そのまま白い景色に包まれた。
景色が変わり周りの様子を見てみる。先程の教室ではなく、人々が行き交う町の中に移動しており、すぐ後ろにはギルド"精霊の涙"がある。
どうやらうまくいったみたいだ。一般的に使われている転移魔法とは違って、魔方陣型の特殊な転移だったから、結構心配だったけど、無事に来れて何よりだ。
二つの転移の何が違うかと言うと、一般的な転移は自分のいきたい場所のイメージをハッキリ連想させないと使うことができず、魔方陣型の転移は魔力消費量が極端に多くなる変わりに、曖昧なイメージでも使うことができる。
そして今回魔方陣型を使った理由は、お察しの通り、俺が"精霊の涙"の場所をうろ覚えで覚えていたからだ。激しく反省しています。
ちなみにこの"魔方陣型"ってのは、転移魔法にしか無い。とゆうよりは、無くなった。
理由としては、魔方陣を作り出してから魔法を使うより、圧倒的に魔法の使用スピードが速いかららしい。――ま、何にせよホントにうまくいって良かった。
「よーし。ぶっつけ本番だったけどうまくいったのあぁっ!?」
言いながらみんなの方を振り向こうとしたら、すぐ近くにレイアとレドの顔があった。スゴく目を輝かせながら……ってあれ? 何このデジャブ。
「ダイゴッ! 今のって魔方陣型転移魔法だよね!?」
「だよねだよね! 何でそんなものが使えるのか――」
「「是非とも聞きたいんだけどっ!」」
……やだ……怖い。
「聞きたいって言われても、ただひたすらに練習したとしか言いようがないんだが……」
「えー! そんな簡単に終わらせないでよーっ! ――もっとこう……波瀾万丈な展開を言ってくれないと!」
なんすか、波瀾万丈な展開って。レドもレドで首を縦に振るんじゃない。
「ねえ、そんな話をしてないで早く中に入らない? ――それに、さっきから凄く目立ってるみたいだし」
ミーナに言われて回りを見てみると、道行く人たちにチラチラとこちらを見られている。なんなら少し笑い声も聞こえるほどだ。
「…………入るか」
視線に耐えきれなかった俺は逃げるようにギルドに足を進めた。いや、逃げた。
ギルドの中は前に来たときと変わりはなく、丸いテーブルの回りにいくつかの椅子が置いてあるセットがちらほらとあり、その奥にはカウンター席がある。
違う点と言えば、前のようにばか騒ぎしてるオッサンズが一人もおらず、変わりに、一人の男性が出迎えてくれた。
「ようこそ、ギルド"精霊の涙"へ。――って、堅苦しいのも無しにするか」
出迎えてくれたのは"精霊の涙"のギルドマスター、ナックさん本人だった。
「久しぶりッス、ナックさん! 約束通り遊びに来ましたよ!」
「いや、復活唐突すぎワロタ」
ついさっきまで焦げてたくせに、何もなかったかのように復活してきた冬馬。ちなみにノエルは未だに意識が戻っておらず、リュウにずっと引きずられている。
「久しぶりって程でもないけどな。ちったあ心配してたけど……この様子なら、心配する必要なんて無さそうだな」
そう言いながら頭を二、三回ほど掻く。心配して損したぜ。みたいな雰囲気にも見えてしまうけど、多分合ってると思う。
「そう言えばナックさん、他のギルド員の人たちはどうしたんですか? いつもならワイワイやってる筈ですけど……」
「ああ。今日はメリト魔法学園から生徒さんが来るからって言ったら、変にテンションを上げ始めやがったから、全員仕事に行かせた。だから当分は帰ってこないと思うぞ」
発情期ですかコノヤローっと。




