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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
いざ行かん対抗戦へ
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生徒会長の本性と思惑


 その日の放課後。ミーナに案内してもらって、生徒会室に着いた俺たち三人。地球にいた頃は、俺がよく使っていた部屋になる。



 引き戸タイプの木造の扉をノックして、部屋に入る。部屋の作りは以前一度だけ入った学園長室に似ているが、キレイに整理されていた。



「来たね。そこのソファーに座っていてくれ。今飲み物を持ってくるから」



 そう言って横の部屋に入っていくカゲツさん。生徒会長ともあろう人に飲み物を用意してもらうのは気が引けるが、ここは甘えておく。



 にしてもやっぱりソファーがフカフカだぁ。



 フカフカし始めてすぐにカゲツさんが戻ってきて、紅茶を頂く。ほっこりしてると、カゲツさんから話始めてくれた。



「それじゃあ色々と説明しようか。何か聞きたいことがあるなら先に答えるよ?」

「何であんな中途半端な形で試合を終わらせちまったんですか?」



 質問形式となった瞬間に冬馬が切り込む。それは俺も気になっていたし、聞かせてもらいたいな。



「あの時も言った通り、僕は君たちの力が知れれば良かったんだよ。まあ、そのあと普通に戦っても問題はなかったんだけどね。君たちがその"指輪"を外してくれれば」



 やっぱり指輪で力を抑制していたのはバレてたか。



「多分、外して戦えと言っても君たちは外さなかっただろ? 全力でやりたかった僕からしたら、それなら戦う必要がない。だから降参したって訳さ」




 言って紅茶を一口。その何気ない動作一つで、気品の良さがよくわかる。



 ティーカップを戻したカゲツさんは、右足を上にして足を組む。よく似合うことこの上ない。



「じゃあ次は、何故僕が君たちの実力を知れれば良かったのかを話そう」



 そう切り出したと思ったら、いきなり右手を上にあげる。そして人差し指だけピンッと立てて続ける。



「理由は単純なことが一つだけ。ある人に頼まれていたのさ、"護衛"として有能かどうかをね」

「……へっ?」

「ご、護衛……?」

「そう。そこに居られる、ミーナ=メリト=フィアンマ様の護衛だよ」



 カゲツさんがそう言いきると、ミーナは深くため息を溢す。この様子だと、ミーナがお願いしたって訳じゃないよな。――ってことはもしかして……。



「お父様ったら、また余計なことをルルフィルにお願いして……」



 やっぱり王様からの依頼だったわけですね。



 色々と解決はしてきたけど、一つだけ謎なことが残っている。と言っても、もう可能性としては"あれ"しかないだろうけど。



「ミーナちゃんのお父さんーー王様からの依頼って……カゲツさん一体何者ッスか?」



 その謎だ。さっきも言った通り、もう答えが出ているようなものだけどな。



「そうだね。そろそろ自己紹介といこうかな。僕の名前はカゲツ=ルルフィル。メリト学園生徒会長であり、そして――」

「王国専属騎士団の隊長、って感じですか? カゲツさん」



 カゲツさが言い切る前に、俺が間に入って続きと思われる言葉を繋ぐ。するとどうだろう。カゲツさんが驚きの表情を浮かべながらこう言った。



「えっと……。違うよ? 僕はメリト王国国王専属の用心棒。騎士団とは何も関係ないよ」



 十秒前の俺よ、頼むからここに来て俺に殴られてくれ。



 なんだよ用心棒って! 普通そこは騎士団の団長とか、最強の0番隊隊長とか色々あるじゃん! なんでここに来て用心棒なんて登場するのさ!?



 恥ずかしさのあまり床を転がりまくっている俺を、誰も止めなかったのは、優しさからだと思う。そう信じたい。そう信じさせてください。






「じ、じゃあ続きを話していこうかな。ダイゴ君、もう大丈夫かな?」

「問題ないですカゲツさん。早く進めちゃってください」

「大護まだ顔赤いじゃんよぉ! さぞ恥ずかしかったんだろうなぁ。いやぁ爆笑させて頂いた私がバカでした。どうかその雷の剣を消してください」

「――それ以上言ったら……削ぎ落とす」

「ナニを!?」

「落ち着いてダイゴ君。早く話の続きをしないと、時間も遅くなっちゃうしさ」



 ん。カゲツさんが言うなら仕方ない。今回のことは俺の早とちりも原因だったし、勘弁してやる。



  ◆  ◇  ◆



 そのあとも色々と脱線しながらも話を聞かせてもらった。



 まず、俺たち二人はミーナの護衛を、あくまで友達という立場を変えないことを条件に引き受けることになった。この条件はミーナからの提案ーーとゆうかほぼ命令であり、カゲツさんも頷くことしかできなかったらしい。



 あと護衛のことは他の人に隠す必要はないらしい。話す必要も特にないからどちらでもいいけども。



 それよりも驚いた。とゆうか、まあ当然なのか、王様も俺たち二人がミリアルの人間じゃないことは気付いていたらしい。



 ミーナのお父さんだから当然、あの特殊な力――魔力が見えるって言ってたっけ。それが備わっているようだ。



 ただ、城から学校までの距離だと、流石に性能が下がるらしく、愛しの娘の近くに不思議な魔力の持ち主が二人現れた。と思うくらいだったそうだ。



 そこで、用心棒兼メリト学園生徒会長のカゲツさんに、様子を見てほしいとのこと。腕が確かなら護衛にでもしちゃって我が娘を護ってもらう。ってな感じだったらしい。親バカか。



「本当にごめんなさい。二人を試すようなことになってしまっていて……。知っていたら止めていたのだけど」

「いいっていいって! ミーナちゃんの護衛、しかもお義父さん公認なら嬉しい限りよぉ!」

「お義父さんはどう考えてもアウトだろバカ」



 いや、"お父さん"でも冬馬が言ったらアウトだったわ。



 カゲツさんとの話を終えた俺たちは、そのまま寮への帰路についていた。対抗戦も終わったし、明日からまた普通の授業が始まる。



「でも……」

「ホントに大丈夫だよミーナ。それに護衛って言っても、ミーナは十分戦えるし、俺たちは加勢するようなもんだろ?」



 笑いながらそう問い掛けて、ミーナの顔を見る。するとさっきまでの申し訳なさそうな表情ではなく、不満がありそうなお顔に。なんでや。



「お、おい。ミーナ? どうしたんだよそんな顔して……」

「何でもないわ。じゃあ先に戻ってるから、また明日」



 そう言ってそそくさと帰っていってしまったミーナ。……えー。



「頭脳って面では優秀かもしれねえけど……こういう時、大護ってバカだよな」

「こういう時ってなんだよ一体……」

「自分の胸に聞いてみろよ」



 とゆうことだから教えてくれ、俺の大胸筋……。



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