第一試合
『予定通りに進んでおります、メリト魔法学園学年混合対抗戦! 続いての試合は、メリト王国第十五代目皇女様こと、ミーナ=フィアンマ様率いる2-Aと、初出場一年生チーム1-Cの試合です!』
ステージに上がると凄まじい歓声が俺たちを包む。多分ミーナがいるってことに対しての歓声なんだろうけど。
「すげぇ歓声だなぁオイ。ミーナちゃん、手でも振ってやったらどうだ?」
「嫌よ。学園では一生徒でいたいの。だから今はただの2-A所属のミーナ=フィアンマ」
「ふぅん。そんなもんなんだねぇ」
そんな会話を聞きながらステージの真ん中に向かう。もちろん俺一人でだ。他のみんなは約束通りステージの隅の方にいてくれている。
俺たちの行動を見て会場がざわつき始めるが、そんなことは関係なしに、俺はポケットに手を入れながら悠然と立ち止まる。
『おっとぉ!? これは一体どういうことか2-A。噂の編入生一人だけ、ステージの真ん中に向かっているぞぉ!?』
実況の人もこんな調子だ。つーかなんだよ、噂の編入生って。知らんぞそんな噂。
『こんな状況で本当に大丈夫なのか2-A!? それでも容赦なく試合はスタートさせてもらうぞぉ!』
実況の人がそう言うと、ステージ上にいつぞやの筋肉達磨先生が上がってくる。相変わらずの筋肉だ。
「相手を気絶、降参させるか、魔力切れになったら試合終了だ! 他に質問はないかァ!?」
俺も一年生達も首を横に振って答える。
「それじゃあ行くぞ……試合開始だ!」
その合図と共に一年生達は武器を取り出す。剣やら弓矢やらトンファーやらと色々な武器を出すなかで、俺は静かにポケットから右手を出す。
そしてそのまま、親指で上に物を弾けるような形にして、腕を伸ばしてそのまま前に出す。
――その上に乗っているのは銀色のコイン。
『1-Cの選手が武器を構える中、噂の編入生が構えているのは……コイン、ですかな? 兎に角そこから一体何をしようと言うのでしょうか!』
俺の一連の行動に戸惑いを隠せないようで、隙だらけだってのに、誰一人として攻めてこない。まぁこちらにしては好都合なんだけどさ。
そのまま、構えていたコインを親指で上に弾く。そしてそのコインが目線と同じ高さまで落ちてきたときに、もう一度。今度は前に飛ぶようにコインを弾く。――もちろん"雷"属性を付けて。
コインはそのまま1-Cの生徒達の中心に着弾して、辺り一面を吹き飛ばす。あまりの爆風に俺まで飛ばされそうになるが、そこは意地で踏ん張る。
砂埃が晴れてから前方を見てみると、1-Cの代表生徒達が五人とも地面に倒れ、気絶していた。それを見た俺は微笑みを浮かべながら一言だけ添える。
「――退屈しないわね、この世界は」
その瞬間、目の前の光景に唖然としていた観客達が一斉に歓声を上げる。音量だけなら入場の時よりも遥かにデカイ。すごく耳が痛い。
『し、試合終了です! なんとキリュウ選手、たった一度の魔法で終わらせてしまいました! それに今の魔法は特殊属性の一種でしょうか!? 何はともあれ一回戦を突破したのは2-Aだぁ!』
その実況を背中に聞きながら、俺はみんなの方へ歩を進める。ものすごくクールぶっているように見えるが、内心ではテンション上がりっぱなし。ちょっと違うけど超電磁砲撃てたんだもの。本当なら跳び跳ねたいところだよ。
みんなとステージで合流してそのまま控え室に。長居は出来ないからそのまま観客席に向かったのだけど、観客席に着いた途端、俺たちの試合を観ていた人たちに捕まって、俺だけ揉みくちゃにされた。ちなみに他のみんなはそそくさとレイア達のもとに。いや、助けてくださいお願いします。
まぁそんなお願いが伝わるはずもなく、結局残りの試合はほとんど見れずに、対抗戦一日目が終了した。
◆ ◇ ◆
「生徒会チーム?」
「はい。3-Aって名目で出てはいるらしいんですけど、五人中三人が生徒会の人なので、そう呼ばれてるんです」
「へぇ。じゃあそのクラスが今回の優勝候補ってやつなのかぁ」
「そうね。去年は何故か二回戦で棄権してたけど、それがなかったら最低でも準優勝はしていただろうと言われてたわ」
「うひゃー。それはスゴいねぇ。二年の時にそこまで言われちゃうなんてさ」
「そ、それで……その優勝候補が僕たちの……」
「ええ。次の対戦相手ですね。これは思わぬ強敵ですね」
「リュウ、お前ホントに思ってるかそれ? オレはホントにヤバイと思うんだけど」
「俺だって同じだよノエル。……はぁ」
対抗戦一日目も終了して、今は明日の作戦を立てるために代表+レイア、アリア、ノエルとお決まりになりつつあるメンバーで、俺の部屋に集まっているところなんだけど……。
一発目の情報から重いのが来ちゃったよホントに。二回戦で優勝候補に当たるとか。まあ逆にチャンスと思う人もいるかもしれないけど、俺としてはこういうイベントは決勝で来てほしかったところだよ。
「流石に明日は相手が相手ですので、本格的に戦略を組んでいきたいと思っています」
リュウがそう切り出すと他のみんなも真剣な表情になる。あ、冬馬は除いてな。
「フフッ。皆さん良い表情ですね……。それでは説明していきたいと思います」
リュウが話した戦略というのが、まず対接近戦要因として冬馬を前衛に。その後ろで俺が冬馬のカバーに入りつつ、魔法で攻める。言わば、接近戦魔法型、みたいなものだ。
そして、その二人を後衛であるリュウとミーナが魔法でサポートしていく。その際、後ろに回り込まれたりして、接近戦を挑まれるようなことがあるかもしれないから、その時はレドがスピードを活かしてカバーに入る。と言う感じだ。
あとは基本的に後衛の二人が攻撃をすることはなく、あくまで前衛の二人のカバーですので、よろしくお願いします。とのこと。
途中で夢の世界に旅立っていた冬馬には俺があとから簡単に説明して、要するに前に出て暴れろと伝えた。
実際冬馬には作戦を伝えても、色々考えすぎて逆に動きを悪くするだけだろうし、それなら好きに動いてもらった方が俺としてもやりやすい。だてに小学校からの幼馴染みはやってないってことさ。
作戦会議が終わって部屋に戻った俺は適当に晩飯とシャワーを済ませる。……まだ時間は早いけど寝ようかな。明日は結構大変な試合になりそうだし。
そういや生徒会長ってどんな人なんだろう。そのくらい聞いておけばよかったな。恐らく全校生徒の中でもトップクラスの実力者なんだろうし。いくら女神様の力があるって言っても、俺たちが戦いに慣れていないのは明白なわけだし、その経験値不足を埋めるためにも、いい試合をできたらいいなあ。
とかなんとか考えているうちに、いつの間にか夢の中に旅に出ていた俺は、唐突に夢に登場した、全裸天使の冬馬にうなされながら、対抗戦二日目の朝を迎えた。




