控室にて
いよいよ始まった学年混合対抗戦。各選手がクラスの代表ともあって、流石にみんなレベルが高い。一年生でも数人は。……ってところだと思う。
時刻は十二時ジャスト。試合も三試合を終えたところで、俺たちの出番も近づいてきた。試合の開始予定は一時からだけど、三十分前には控え室にいないといけないらしく、今は昼飯を軽く食べて、一試合目の途中でどこかに行った冬馬を探しに来たんだけどーー。
「……ふくぅ」
「試合前だってのに爆睡って……ホントにコイツは……」
2-Aの教室に入り込んで、机を九個程並べて作った簡易ベッドの上で気持ち良さそうに寝てやがった冬馬には天誅だ。とゆうことで、天井付近まで跳んだ俺は、そのまま重力に逆らうことなく冬馬の腹に膝からズドン。
「くらえ必殺流れ星。えーい」
「ぐおぁああっ! は、腹がぁぁ……」
「やっと起きたか冬馬ー。何回も声掛けたのに起きなかったお前が悪いんだぞー」
「そ、そうなのか……でもよぉ、もう少し体のことを考慮した起こし方はできませんかねぇ?」
「えーやだ。つまんない」
「あっちゃ。そう来られたらもうなんも言えねぇや」
そう話をして、机を元の位置に戻し終えた冬馬を連れて闘技場に戻ることに。ーーそれにしても、我ながらいい技が出来たのではないかな。冬馬にしか使わないけど。
闘技場に戻り、客席のレイアたちの所に戻ったのだけど、ミーナたちは既に控え室に向かってしまったらしい。俺たちも急がないと。
ノエルに頑張れよ。と声援を貰い、レイアに気張っていくんだよ。と喝を入れてもらい、アリアに怪我しないでね。と優しさを貰って俺たちは控え室に。
控え室に入ると、すでにミーナ、レド、リュウの三人は準備が整っているのか談笑していた。
「やっと到着ね。随分遅かったみたいだけど?」
「悪いなみんな。コイツのことを探してたら遅くなっちまった」
「いやぁすまんなぁみんな。心配かけちゃって」
お前の心配とゆうよりも、代表が全員揃わないと棄権することになるしな。ーーほら、ミーナだってすごく難しい顔で、そうね……とか言ってるし。きっと俺と同じこと考えてるはずだ。
ふいに、コホンッ。と咳払いの音がしたから見てみると、リュウがこれから作戦会議を始めますよとでも言いそうな顔を向けていた。折角だし、俺の方から振ろうかな。
「そういえば、今回の作戦とかって考えてあったりするのか?」
「はい。もうアナタ達以外のお二人には伝えましたが、もう一度確認のために全員に言います。一回戦の作戦は――」
少しだけ間を開けてリュウは続ける。
「作戦名"オールフリー"。通称"A・F"。まぁぶっちゃけるなら、自由にやっちゃえよってやつです」
「まてコラ」
作戦でもなんでもねえじゃねえか! なんだか聞き損だよこちらは。つーかそんなものに名前付けなくていいだろうよ!
――とまぁ今のは冗談で。とリュウは続けて話しだした。
「基本的に自由に動くことには変わりはありませんが、各々が一番戦いやすいやり方で戦ってください。幸い、一回戦の相手は一年生ですし、作戦が苦手な方もいるみたいですし」
そう言い切って俺の後ろに視線を向けるリュウ。俺もつられて見てみると、冬馬さんが、作戦……だと? あ、なくなったなら安心したわー。みたいな顔芸をしていた。なんかごめん、みんな。
にしてもフリーか……。どんな感じに戦おうかな。どうせなら魔法主体で行きたいけど……。思いきって最上級魔法にチャレンジしてみるとか……! ――ダメだな。失敗したときのリスクが高すぎる。……んー。
唸りながら考えていると、時間なんてあっとゆうまに過ぎ去るもので、前の試合も終了して、俺たちの試合になっちまった。
……どうしよう。本気で悩みすぎてまだ纏まってないのに───!
「次は2-A対1-Cの試合です。代表選手はステージに上がって来てください」
控え室の方にまで場内アナウンスが響き渡り、俺たちはステージの方へ向かう。俺も椅子から立ち上がり、みんなの後ろを着いていく。
「――みんな、ちょっといいか」
扉一枚開ければ試合会場とゆうところで、俺はみんなを呼び止めた。ついに俺の今回の戦い方が決まったんでな。
「どうしたよ大護? 今更緊張でもしてきたのかぁ?」
「そんなわけねえだろ。……お前なら分かんだろ? 冬馬」
「――あぁ。そういうことね。まぁ何やるにしも、俺は賛成するわ」
そう言った冬馬は俺の後ろに下がる。流石に腐れ縁だけあるよホントに。あれだけで俺のお願いを理解してんだもの。
「それで? どうしたのです? ダイゴ君」
リュウが俺にそう訪ねてくる中で、俺は扉の前まで移動してから、みんなの方を向き直る。
「一回戦は、俺一人にやらせてくれ」
俺がそう言い放つと、冬馬はやっぱりかとでも言いたそうな顔をする。他のみんなは、意味が分からないとでも言いたそうだ。
「ち、ちょっと待ってよダイゴ君! 一人で戦うって一体……」
レドが慌てた様子で問いかけてくる。まぁ普通はそうだろうな。それでも今回はこの我儘を貫きたい。
「そのままの意味だよレド。みんなには戦いに加わらずに、ステージの隅で大人しくしててもらいたい。勝手な我儘だけど、なんとか頼む」
「いいわよ。アナタがそう言うってことは、何かやりたいことがあるんだろうし」
「私も賛成ですね。楽できるわけですし」
すごく軽く賛成してもらえました。
頭を下げる前に了承を得れたことに驚いていると、ミーナが、ふぅ。とため息をひとつこぼして俺を見る。
「ただし、絶対に負けないこと。負けたら……そうね、一週間クラス全員にお昼御飯を奢ること」
「おっ、それ俺もサンセー」
「ふふっ、いいですね。ではさらに一人も倒せずのボロ負けとかなら、女子用の制服で学園に来てもらいますか」
「み、みんなホントにいいの? こんな感じにしちゃってさ……」
……うーん。なんだか真剣にお願いした俺がバカみたいになってきちまった。
でもまぁ、そのくらいのペナルティは受けるさ、負けることになんてなっちまったら。
「ありがとうみんな。そして、そのくらいの罰なら上等だ。――じゃあ、行きますか」
さーて始めようか。俺の最高の戦いを!