対抗戦開始といきたいところ
代表になって対抗戦までの約二週間は、クラス全員が俺たち代表の特訓に付き合ってくれたりして、十分に特訓できた。
おかげで魔力のコントロールもかなりスムーズかつ正確にできるようになったから、今は無駄にサイズがデカくなったりなどはない。
他の代表のみんなもいい感じに仕上がったらしい。冬馬も、これで優勝は取ったも同然だぜー。それで女子からのアプローチとかも来ちゃったりして……グフフ、みたいなことを言っていたし、俺があくまで間違えて魔法をぶつけない限りは大丈夫だろう。
「っと、そろそろ時間だし……行くとしますか!」
今日は教室に行く必要はなく、選手は闘技場に、応援は客席に直接向かうことになっている。
開会式が十時からで、第一試合がその三十分後。そこから三十分ずつの試合時間となっている。そして、今日はトーナメントの一回戦だけをすべて行って、それ以降の試合は明日行われるらしい。
二日間に分けてのイベントなんて……燃えるぜ!
そんなテンションで部屋を出ること二十分、闘技場に到着だ。一クラス五人と少数なだけに、闘技場ステージにいる人はあまり多くない。全クラスで十八組だから……ざっと九十人ってとこか。
「おっ! いたいたぁ。おぅーい、大護やーぃ」
呼ばれた方を見ると、冬馬が手を振りながらこちらに歩いてきている。後ろには他の代表の三人も着いてきていた。俺だけ別行動になっていたのか。
話を聞くと冬馬たちもついさっき合流したらしく、そのついでに俺のことを探していたとゆう……。ははっ、ついでって……。
ついでに拾われたことに隠しきれないショック感を味わっているうちに、開会式も無事終了。その後すぐに、トーナメント表が空中に表示された。あれも魔法なのか。やってみたいな。
見たところ俺たち2-Aの第一試合は五試合目。時間で言うなら午後一時になっている。
「うへぇ、今から三時間後かよぉ。待ってらんねぇし大護、ちょっと特訓しようか」
「アホか」
でも確かにちょっと時間が空きすぎてるよな。……参考に他の試合でも見てるか。
「俺は一先ず客席のノエルたちの所に行くけど、お前も来るか?」
「大護と一緒なら俺ぁどこにでも行くぜ!」
「そうか、じゃあいつか行くと思うから、先に地獄に行っててくれ」
「うわ、きっつ」
そんなわけで客席の方に来んだが、こっちは人が多い。どうやら、このメリト学園学年混合対抗戦は、一般の人も入れるようになっているらしく、この時間から酒を片手に見に来るおっちゃんもいる。
そんなおっちゃんを観察してないでノエルたちを――ってどうやって探しましょう……。
「っと、すみません」
出入り口付近で突っ立っていたせいで他の人の邪魔になっていた、イカンイカン。早くみんなを見つけないと。
「あ! トーマにダイゴじゃん! 今日は頑張ってね!」
不意に後ろから声をかけられたので振り返ると、両手に売店で買ってきたであろう飲み物を持ったレイアがいた。よかった、探す手間が省けた。
「まぁ見てろってレイアさんよぉ。俺の戦いっぷりを! 惚れちゃっても知らないぜ?」
「うん。それはないから安心して見てられるよ」
その一言で膝から崩れ落ちる冬馬はさておき、レイアに着いていってノエルとアリアにも合流した俺たちは、そのまま一試合目の見学を開始した。
◆ ◇ ◆
「───はい、先程"その二人"と遭遇しました……。ご安心を。怪しんだ素振り等は全く見受けられなかったので、問題ないはずです。あとは彼らの力を見極めれば宜しいのですね? ……承知しました。必ずや成功させてみせますよ」
誰もいない教室に男が一人。知的なイメージを持たれるような眼鏡に白銀の髪の毛。スラリと伸びる身長は、決して華奢な訳ではなく、無駄な筋肉がないとゆうこと。身に纏っているのはメリト学園の制服。
「全く、いつも人使いが荒いんだよね、"あの人"は。学園にいるときは学生でいたいってのにさ」
先程とは打って変わっての口調の変貌である。足を組んで椅子に座っていた男は立ち上がり、そのまま闘技場の方へと向かう。その歩き方はどこか気品を感じさせるようなとても美しいものだ。
「さて……しっかり勝ち上がってきてくれよ。"編入生君たち"」