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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
戻ってきた学園生活
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夏風邪はなんとやら

「まさか風邪引くとは思わなかった」



 突然の海への小旅行から二日後の現在。なーんか体の調子がよろしくないなーとか思えてきたのが昨日。今朝目覚めて、なんか寒いなー、頭もボーっとするなーとか思ってたら、ばっちり熱が出てました。熱出したのなんて小学生以来だと思う。……確か。



 あ、違うわ。中学卒業の時、卒業祝いとして冬馬と一緒に川にダイブしてばっちり風邪引いてたわ。三年くらいしか経ってないけど懐かしい。

 同じことした筈の冬馬は何でか風邪引かないんだよなー、なんでだろうなーと、嫉みをふんだんに詰め込んで本人に言ってたら、まさかの「バカだからな!」ってサムズアップされてぐうの音も出なかったなあ。



「ヘックショイ! ……んぬー、久々に風邪引くと中々しんどいな」



 咳が出ないのが幸いと考えておきましょう。咳も出ちゃうと、根こそぎ体力持っていかれちゃうからね。寝てる筈なのに体力減っていくとか何その悪魔的所業。ポケットなモンスターたちの毒状態だって、歩かないとダメージ蓄積にはならないのにさ。

 回らない頭でくだらない事ばかり考えていると、くぅ。と情けない音が腹から聞こえる。そこで一つ大きな問題に気が付く。今この部屋には、食べる物が何もないのである。



 少し前までは多少なりともストックしておいたんだけど、長期休暇に入ってから今の今まで中々補充する時間が取れず、あれよあれよと食料が消えて行ってしまった。今日ほど、後回しにし続けてしまった自分の行動を恨むことはないだろう。

 一旦腹が減ると、どうしても何かしら腹に入れたくなるのが男子高校生というもの。しかし部屋には何もない。水しかねえ。腹は膨れても悲しくなる。

 かと言ってこんな状態で食堂になんて行ったら、誰かに移すことになってしまう可能性もある。それが一番アカンです。



 ……仕方ない。取り合えず寝ることに専念して空腹を忘れるとしよう。起きた時には多少マシになってるだろうし、授業とかも終わってれば、冬馬に来てもらって食べ物を買ってきてもらったりも出来るしな。

 そう思いながら、寝汗で重くなったシャツを着替えて再びベッドに潜り込む。正直、この状態で寝られるかなーとか思ってた俺だったけど、思いの外すぐに眠気に襲われて、そのまま意識を手放した。






 コンコンコン。小気味良い音とリズムが部屋に響いてきた事で俺の意識は覚醒した。おはよう世界。

 時刻は四時半過ぎ。昼過ぎくらいに眠りについたから、約四時間程度寝ていた事になるんだけど、相変わらず頭はクラクラする。結構引き摺るかもしれないな、これは。



 汗も結構掻いてるけど、朝ほどではないから一先ずこのまま……いや、やっぱり着替えるか。

 そう思って水分補給をはさみながらシャツを脱ぎ捨てる。汗を拭くためにタオルを用意したところで、再び聞こえてきた、コンコンコンという扉をノックする音。この音で起きたのをすっかり忘れていた。……ってそれより、人を待たせてる事になっている。それはいけない。



 時間的には、授業が終わって寮にもちらほらと学生たちが帰って来る時間。という事は、もしかすると冬馬辺りが俺の様子を見に来てくれたのかもしれない。



「はーい、今開けまーす」



 そんな思いを胸に秘めながら扉を開ける。



「あ、ダイゴく――」

「あれ、アリアだったのか。どうした? こんな病人の部屋になんか来て」



 そう尋ねるがアリアからの返事はない。ただのしかば違う違う。

 アリアの手元を見てみると、水分や食べ物が入った袋を持参してきてくれている。もしかしてお見舞いに来てくれたのか? どうしたとか聞いちゃって悪いことしたな。なんて事を考えながらもう一度アリアの顔を見てみると、顔を真っ赤に染め上げながら口をパクパクさせている。金魚を想像してしまった。



「アリアー、大丈夫か?」



 病人が何を言っとるか。そんな冬馬の声が聞こえてきた気がしなくもないけど、たぶん幻聴だろうと気にしない事にした。やばい、自分でも何言ってるのか分からなくなってきた。風邪のせいだ、きっとそうだ。



「だだだだダイゴくん!」

「は、はい!?」

「ふ、服はちゃんと着てください!」

「……あ」



 そう言えば着替えと汗を拭くためにシャツを脱ぎ捨てて、そのままになってたわ。

 と言っても下はしっかりズボンも履いてるし、露出してるのは上だけ。つまり上裸だ。先日の海でも同じような格好をしていた訳だから、そんなに紅くならなくてもいいんじゃないかなあと思う。



「あの時は心の準備が出来ていたので大丈夫だったの! まさかお見舞いに来たら、は、裸なんて……」



 言われて考えるとなんだか納得した。確かに俺も逆の立場だったらびっくりするし、ありがとうございますってなるな、うん。



「って! いつまでもそんな恰好してないで! ほら、早く中に入ってお着替えしないと!」

「えっ? ちょちょっ、そんなに押さなくても入るって!」



 アリアに押し込まれるように室内へと戻り、そのまま扉はパタリと閉じ切った。

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