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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
戻ってきた学園生活
135/148

小さな争い

 人が賑わうメリト王国商店街。前来た時も同じ感想を持った気がしなくもないけど、まあそれはいいとして。



「次はどこに行こっかー。"ミーちゃん"は他に何か見たい物とかないのー?」

「そうね……なら新しい武器とかでも――」

「あーダメダメミーちゃん! 今日はそういうのはなしにして、普通の女の子として買い物を楽しむって決めたでしょー?」

「そ、そうだったわね。……それなら、あそこにある小物店はどうかしら?」

「いいね、行こ行こー!」

「ちょっ、レイア! そんなに引っ張らなくても大丈夫よ!」



 街へ繰り出してから早三時間弱。以前と同じように鍔の広い帽子と伊達メガネを付け、本日は空色のワンピースを着た"ミーちゃん"ことミーナの腕を引っ張るのは、ショートパンツに白シャツというラフな素晴らしい服装に身を包んだレイア。



「正に眼福……かな」

「何が眼福か。冬馬も俺と同じで、前すら見えてないだろうよ」

「心の目で……見るのじゃよ」

「俺はそこまでの領域に達せる自信がないや」



 はしゃぐ美少女二人の声ははっきり聞こえるが、如何せん物が多すぎて前が見えないから、目の前の光景が見れないのだ。冬馬には見えてるらしいけど。……悔しくない。悔しくなんかないぞ。



 ちなみにミーちゃんと呼んでいるのは身バレ防止の為だとか。その前にもう少しどうにかできるポイントがある気がしちゃうのは気のせいだろうか。

 というより……たった二人の荷物だってのに買い過ぎではないですかね? と声を掛けたくなる。そっと胸の内にしまうけどな。凄く楽しんでるし、水を差したら嫌だから。



「にしても……なあんで女の子の買い物ってのは、こんなに長いものかねぇ。基本的に制服なんだし、私服なんて三~四着あれば十分だろーよぉ」

「誰かと一緒に見て回る事が楽しいんじゃないのか? 買い物が目的ってよりも、友達と一緒にいる事が目的……みたいな。それよりもお前の私服は三~四着でいい発言の方が圧倒的に謎だ」

「何でだよお。トレーニングウェア二着、外出用二着。これで十分だろうよお」

「寝る時は?」

「パンイチ。もしくはフル」



 おーけい分かったそれ以上は言わなくていいという言葉よりも先に、冬馬目掛けて指先から雷を走らせる。勿論荷物に傷を付けるような事はしないよう気を付けて。冬馬が持ってるのはレイアの、俺が持ってるのはミーナの荷物だからな。どちらも大切に扱うのが紳士の務めだ。

 「あぢぃぃぃん!」とか言いながら少し飛び跳ねた冬馬だが、そこは流石と言うべきか、持っている荷物は全くバランスを崩さない。



「今のは理不尽を感じるぜえ大護……そっちから聞いておいて答えたらこんな仕打ちがまってるたあ……」

「仕方がなかったんだ。あんな単語を、言わせる訳にはいかなかったから……仕方なかったんだ!」

「シリアスぶってももう遅いぜ。……お返しだっ」



 冬馬の掛け声と共に俺の太腿に痛みが走る。



「い"――――っだっ!?」



 急な衝撃に膝から崩れ落ちそうになるが、ここで落ちては紳士の名折れと言わんばかりに持ちこたえる。

 少し下からの衝撃だったから冬馬の足元を確認。いつの間にか裸足になって、足の指を弾いて魔力の弾を撃ち出してやがった。



「おまっ、んな事出来るなんて聞いてねえぞ!」

「そらそうだろうよお。言ってねえし今急に出来ちゃったんだからよお」

「俺への仕返しの為だけに新技を編み出したってのか!? その技絶対これから使う機会ないだろ!」

「名付けて"指砲しほう"」

「その名前も絶対要らないだろ――って痛えええ!?」



 会話の途中でまさかの二発目と三発目の同時攻撃。にやけ面を見せつけながら両足で撃ってきた。

 始まりは俺だったかもしれないし、お互いに一発ずつでお相子と思っていたが……こうなったら仕方がない。戦争だ。



 冬馬からの攻撃は、魔力を弾かないといけないだろうから、放たれる場所は限られてくるだろう。しかし、俺の方はその必要が無い。

 更にだ。単発型の冬馬と違って、俺は魔力を流し続ければ永続的に雷を走らせることが可能……となるとやはり。



「あづあ――――ッちいいいいい!!」



 フハハハッ! どうにか首元目掛けて雷を当て続けてやれば必然的に俺の勝ちだ!



「こンの……野郎め!」

「あいだッ!? やりやがったなこのヤロウ!」

「そらこっちのセリフだっつの!」



 俺と冬馬の間で魔力の塊と電気が行き交う。お互いの体に着弾するたび「痛ッ」だの「あづッ」だの突発的な声が響く。

 しかしそれも時間の問題。お互いに環境に慣れ始めて、荷物に負担を掛ける事無く、徐々に回避する事も覚え始め、クリーンヒットする事は少なくなってきた。

 しかししかし! それもまた時間の問題と、自らの体が訴えかけている。恐らく俺の太腿には青痣が広がり、冬馬の首裏には火傷の跡が広がっているだろう。



 次の一撃で――決まる。



「「喰ら――」」



 最後の一撃へ踏み切ろうとした瞬間、俺の頭に衝撃が走る。



「「いってぇぇぇええええ――――ッ!?」」



 余りの痛みに思わず地面に蹲りそうになる……ってあ、あれ? 冬馬も同じように苦しんでる? ちなみに荷物は勿論シッカリ持ったままだ。



「なーに二人でバカやってんのさー」

「全く……こっちが恥ずかしいじゃない」



 どうやら俺の頭にはミーナの杖が、冬馬の頭にはレイアの細剣の柄がぶつけられた様だ。まーじで痛い。さっきまで冬馬とやってたのが可愛く感じるくらい痛い。



「ほらー二人とも立った立った! 人も集まってきてるからさっさと行くよー!」

「「へっ? 人?」」



 辺りを見渡す。通行人が何人も足を止めて俺たちの様子をガン見してますね、本当にありがとうございます。

 熱中しすぎて気が付かなかったが……大分目立ってたみたいだな。



「ほらー! 早くする!」



 レイアに急かされ、逃げるようにしてその場を後にした俺たちだった。

 ちなみにミーナには、どうして生身であんなアホな事してたのか的な事を聞かれたから「男の意地」とだけ答えておいた。教室の時よりも大きなため息が聞こえた。今度は凌げなかった。

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