表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛ばされまして……  作者: コケセセセ
語られる過去と今
126/148

隠された道

 大護たちが特訓に勤しむ中、ナックと三人の帝たちはダゴル平原へと到着し、ゼルが見つけ出した剣を探していた。

 ゼルが特定できたのは、平原に入ってから南西に凡そ五キロといった、正確とはとても言えない情報だけだったが、情報が全くと言っていい程なかった時に比べると、探しやすくなっている事は間違いないだろう。



 しかし勿論、それでも容易く行かないのがこの世の常。



「もぉぜーんぜん見つかんないじゃぁ~ん! ナっつん疲れたーおんぶしてえぇぇ」



 そしてそれに耐えられなくなる者がいる事も世の常。



「うるせーぞチンチクリン。あと、常に気を張れとは言わんが、流石に気を抜き過ぎだ。いつ敵と遭遇してもおかしくない状況だって事、忘れてんじゃねえだろうな?」

「そうは言ってもさぁ、ここに来てからもう二週間以上経過してるんだよ? その間に会ったって言ったら、D級程度の魔物と旅の商人くらいじゃんかぁ。そりゃあ気も抜けちゃうってのよさぁ」



 四人で来ていたナックと帝たちは、基本的に二手に分かれて探索をしていた。四人が別々に探すことも提案に挙がっていたが、敵対した時、確実に仕留められるようにと、二人ずつのペアとなった。

 しかし現在、目的の剣は疎か敵にすら出くわさない状況。元々子供染みた【氷帝】――ローナには、さぞ辛い作業であろう。



「マスタ~、氷帝さ~ん。調子はどうッスか~?」



 そんな二人に声を掛けながら、風に乗って近付くのは【嵐帝】ことウィードと、何故かどデカい岩を二つ肩に担いだ【地帝】ことシュートの二人だった。



「嵐帝か。そっちは……ダメだったみたいだな」



 二人に気が付いたナックが声を掛けた瞬間に首を横に振るウィード。彼らの方にも目ぼしい物が見当たらなかったのだろう。



「もーう見つからなさすぎて筋トレ始めちゃうくらいだったわあん。あ、あと四百二回残ってるから待っててねん」

「誰が待つんスか、この筋肉バカ」

「んもうっ嵐帝ちゃんったらっ、そんな事言っちゃうと――」



 ガシリ、とウィードの頭が捕まれる。そうしてそのまま、



「投げちゃうわよん」

「投げてから言うなあああああああぁぁぁぁぁ――――」



 ウィードの叫びに対し小さな声で「あらー」とだけ呟くローナ。二言目には「自分で風に乗るより速いじゃん」である。哀れなり。



「何やってんだ全く……」

「心配しないでマスター。ちゃあんと怪我はしないよう、向こうの湖に向けて投げたからん」



 そう言って後方に指を示すシュート。その方向を見ると確かに湖はあった。ぱっと見でもかなりの大きさがある事が分かる。現在地からかなり距離が離れているのが唯一の問題だった。



「あー、確かにあるけどあんまり意味がねえかもしれねえなぁ。まぁでも、アイツなら大丈夫だ――」



 遠くの方から着水音が聞こえた。



「……あらん?」

「ナっつん、大丈夫じゃなかったね」

「俺のせいじゃねえだろ。……地帝、取り合えず様子を見に行ってこい」

「アチシが投げちゃったわけだし当然ね、リョーカイよん。……それにしても、なんであの子飛ばなかったのかしら?」



 担いでいた岩を地面に置き、湖に向けて走り出す。その姿はあっという間に小さくなり、その場にはナックとローナ、そして二つの岩だけが残された。

 置かれた岩の近くへ移動したナックは、軽く地面を蹴り、そのまま岩の上へと座り込む。ローナも同様にもう一つの岩へと座る。



 弱めの風が吹き、二人が羽織るローブをはためかせる。今の状況だけを見ると、恋人たちの休日といったような絵にでもなろうか。それほどに平和な空気が流れていた。

 心地よい風を堪能していた二人だったが、そんな時間も束の間。戻ってきた地帝からの報告により、平和な空気が一変する。






  ◆  ◇  ◆






「嵐帝」

「二人も来たッスね。あそこを見てほしいッス」



 風を操って濡れたローブを乾かすウィードが示すのは、目の前に広がる湖。湖中が満遍なく見える程淀みなく透き通った水の先には、おそらく彼が衝突したのであろう、少し陥没したような箇所が見える。

 一見するとただの土の壁でしかない場所ではあるが……



「――成程な。嵐帝、頼む」

「流石ッスよマスター。――"ウィンドランス"」



 突如湖中に向けて魔法を放つウィード。放たれた魔法は、何の弊害も受けずに、湖中の土壁へと衝突するが、壊れる事は愚か、周りの土にも影響が出ていなかった。



「あらやだっ、これってつまり……」

「あぁ、この中に"剣"がある可能性が高い。ただ、魔法での攻撃は無効化されるみたいだな……地帝」

「はぁ~い」



 徐にローブを脱ぎ、下着姿となったシュートは、そのまま湖へと飛び込む。何故彼が女性用下着を付けているのかは、誰も触れてはいけない。



「それにしてもスゴイッスね~昔の人ってのは。こんなに手の込んだ事をやるなんて」



 男三人で話を進めているが、その後ろでローナの目は点になっている。心情を表すのなら「なんのこっちゃ」というところだろう。

 そんなローナの様子を察したナックが、彼女に状況を説明する。



「原理は不明だが、この湖の土壁の中には魔力障壁……いや、どっちかっつうと、空上都市ナスの隠蔽魔法に似たモンが埋まってんだ。性能で言えば、あれよりも強力だけどな」

「……つまり?」

「なんでそんなモンを、こんな湖の中に使ってんのかって考えろ」

「……その中に、なんか大事な物があるから?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ