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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
超強化月間
120/148

戦いの後

 俺の魔法が国王様に衝突する。――いや、ただ衝突してる訳じゃない……あの魔法を、物理的に破壊してる、のか?



「オォォオオオ――――ッ!!」



 やはりそうだ、あの魔法に対しても今までと同じ様に殴って消滅させてやがる。



「化け物、かよ……っ」



 正真正銘力を使い果たした俺は、その現場から目を離さないように地面に座り込む。そのまま寝そべりたい気持ちまで溢れているが、この決着を見届けずに寝てなんかいられない。

 足場が陥没しながらも俺の魔法を消滅させ続ける国王様。衝撃が強すぎて顔までは見えないが、流石に涼しい顔をしているとは思えない、思いたくない。



 衝撃が周りの空気すらも揺らし、耳を塞ぎたくなるような轟音が鳴り止まない。

 そもそも、国王様の鎧が解けるまで、あと何分……いや、何秒なんだ?



 ――構うものか、この魔法で、決めてしまえばいい。



 何よりも……冬馬が必死に作ってくれた時間で作り上げた魔法なんだ。無駄になんか……してたまるかよッ!!



「いっけえええええ――――ッ!!」 



 俺の咆哮が届いたと言えるようなタイミングで、五属性混合魔法カタストロフが国王様を呑み込む。



 そのまま光が収束し、空気の振動も止む。



 五属性混合魔法カタストロフの影響で訓練場には大きなクレーターが出来上がった。少しずつ、自動修復が働いているようには見えるが、大きく抉れた地面が完全修復するには大分時間がかかるだろう。

 あとは、国王様がそこのクレーター内でどうなっているのかを確認したいところだけど……もう身体が動かねえ。この位置から何とか確認したいけど――ッ!?



 ゆっくりと、地面を上がってくるその姿を見て、最早恐怖すら覚えそうだった。



 上半身の鎧はなくなっているが、下半身には未だに燃える鎧が存在している。

 肩で息をしながらも俺の目の前に姿を現したのは、紛れも無く、国王様だった。



 姿を見せた国王様だったが、全身が見え始めてすぐに下半身の鎧が消滅する。……たったそれだけの時間が……足りなかったってのかよ……っ。

 鎧がない状態になって尚、座り込む俺にゆっくりと近付いた国王様は、そのまま目線を合わせるように自らの体勢を低くする。



 鎧を破壊し、国王様が戦闘不能状態になるのが最高。鎧は壊せないが、国王様は戦闘不能が次点。そこまでなら良かったが、まさか鎧が半壊、しかし国王様は動ける状態と……つーかあの魔法でも全身壊せないのかよ。硬すぎるだろあの鎧。



 冬馬に申し訳ないな。あんなに時間を作ってくれたのに……ちょっと強すぎたわ、この人。



 国王様はそのまま俺の方へと手を伸ばし――



「おめでとう。特訓"完遂"だ」



 俺の肩に手を置いてそう言い放った。



「……えっ……?」



 言葉の意味がすぐには理解できずに聞き返そうとしたが、疲労からか、声もうまく出てくれない。



「完遂、だよ。私の立てた"無茶な目標"も合格と考えても良いだろう……っと、よく頑張ってくれたと賛辞を贈りたい気持ちはあるが、二人とも治療を優先せねばならんな……ルルフィル」

「ここに」



 どこからともなく姿を現すカゲツさん、あれ、他の皆の訓練に当たってるんじゃなかったっけ……?

 突然身体が持ち上げられる。ひんやりとして柔らかい何かに包まれながら上げられてるみたいで、疲れていた身体にスゴクいい。……マジ気持ちいい。



「私たちの特訓も丁度終わったから様子を見に来たの、そしたら……あんな魔法撃ってるんだもの、ビックリしちゃったわ」

「……みーな、か?」



 あ、マズイ。意識が、保てなくなってきた……。



「そうよ。最後しか見れなかったけど、キリュウ君たちも頑張ったんでしょ? 今だけは、ゆっくり休んで大丈夫だから」



 軽く頷く。もう話をするのも限界になってきたんだ。もう大人しく自分の本心に従って眠りにつこう。

 なんか俺、戦いの後って気絶してばっかりだなぁとか思ったのを最後に、俺の意識は闇に沈んでいった。






『本当に、行くんだな?』


『……えぇ』


『……そうか』


『――ごめん、なさい』


『謝らなくていい。君が悪い訳じゃないんだ。この子もわかってくれるさ』


『……ありがとう。必ず、戻ってきます……こんな私を、許してね……"――"』






  ◆  ◇  ◆






 夢を、見ていた気がする。

 赤ん坊を抱いた男性が、一人の女性を見送るようなシーン。その光景を何故か第三者視点で見ている俺。

 全員顔がはっきりとしていなかったのが少し怖いところだけど、なんだか心が温まる光景だった気がする。



「父さん……ん?」



 夢の効力もあり、家族のことに関して思っていたところで、右手が誰かに包まれている状態であると気が付く。

 身体を起こして確認しようとしたが、どうやら大分ダメージが酷いらしい、身体が全く動かせん。辛うじて動く首を頼りにしてみたが、生憎と、右手の先を見る事は叶わない。



 ……こりゃ無理だ。とりあえず状況整理でもしようか。見たところここは保健室っぽいな。よし、第一段階クリア。訓練の結果は、国王様の最後の言葉を借りるとするなら、完遂って言ってたな。

 目標の中に"ナックさんを超える"ってのがあった筈なんだけど、それはどうなってんだ? 負けたのに超えたってことはないと思うし――



 そう考えていたところ、廊下の方から声が聞こえ始め、徐々に保健室へと近づき、声の主はそのまま保健室の扉を開け放った。



「というわけで、パパさんの診断では異常は見られねえんだし、そろそろ起きてこねえとなると悪戯するしかねえと思うんだ」

「オレはトウマに賛成だな。楽しそうだし」

「問題ないって言われたとはいえ、怪我で寝てる人にそういう事するのはちょっと……」

「大丈夫ですよ、レド君。ちょっとしたお遊びですし、ダイゴ君もそこまで怒ったりしませんから」



 何だこの不穏の極みみたいな会話。

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