五属性混合魔法
どうにか三つ完成させて、四つ目の半ばってところまで出来たけど……魔力消費量が半端じゃないなこの方法は。転移の時とはエライ違いだ。気を抜くと意識まで持ってかれそうになる。
「うだうだ思ってても仕方ねえな――ぐ……っ!」
冬馬もそろそろ限界が近い筈だ、どうにか早くこれを完成させたいところだけど――
「がはぁ――ッ!」
「冬馬ぁ!!」
国王様の攻撃をまともに受けて俺の近くにまで飛ばされてきた冬馬。くそッ! まだ完成まで行ってないけど、これで勝負に出た方が――
「大護ぉ……心配すんな。……まぁだ、動けっからよぉ。黙って完成させろや」
目だけ俺に向けてそう言う姿は、とてもじゃないがまともに動ける人間の様子じゃない。
「でも……」
「いいからァ! ……俺を信じてくれや」
――ッ! ……クソッ!!
「任せた!!」
「合点……承知ッ!!」
今の冬馬の状態は見てられない。でもこの魔法しか国王様に勝つ方法がない。俺にできるのは、一刻も早くこれを完成させること……。
自分に情けなさを感じながらも、魔法を完成させることに意識を集中させる。
「負けんなよ、冬馬……」
親友の無事を祈りながら。
◆ ◇ ◆
跳ね上げられた顔面から血飛沫が飛ぶ。そのまま膝から崩れ落ちそうになるが、どうにか踏ん張り、地に伏せないように堪える。堪えた勢いで、そのままパパさんを殴りつける。随分と乱雑な攻撃になっちまったがぁ、大分予想外の攻撃だったんだろうな。見事にクリーンヒットだ。
俺からの反撃を受けて、大護の元へ向かおうとしていたパパさんの足が止まる。俺が倒れない限り、大護の元へは行かないみてえだし、ここで倒れるわけにゃいかねえよな。
「本当に、君の執念には恐ろしさすら感じてしまう。 何が君をそこまでさせるんだ? 特訓のためだけに戦っているようには、到底思えない」
「……自分自身と、親友のため」
「そうか……しかし、いくらなんでも頑張りすぎだ。どう考えてもあと一撃も堪え――」
パパさんの言葉がそこで詰まる。何が起きたかと一瞬思ったが、空を見上げて目を見開く姿と、降り注ぐ光で理解できた。
「待ちくたびれたぜぇ、大護」
言いながら地面に大の字で倒れる。もう、意識を保つのも無理だぁ……あとは、任せたぜぇ。
俺は眠るように意識を手放した。
◆ ◇ ◆
どうにか、完成させる事が出来た四つの魔方陣。あとはコイツに、起爆剤となる魔法を撃ち込むだけなんだが……。
「思ってた以上に、魔力……使っちまったなぁ」
予定ではここに最上級魔法を使う筈だったんだが、生憎とそんな魔力も残ってない。
――だけど、失敗は絶対に許されない。
「自慢じゃないが、私はこの世に生まれてから、誰よりも魔法に精通してきたと自負している」
空を見上げたまま、国王様が静かに語り始めた。
「勿論、属性の相性等で、知識だけで知っている魔法も数多くあるが……こんな魔法は"知らない"。こんな魔方陣、見たことも聞いた事も無い……一体これは」
「……二日前に、ふと思いついた事があったんです。混合魔法を二属性ではなく、三属性以上合わせて使えないのかと」
魔力がギリギリのせいか、意識がはっきりとしない。この声も国王様に届いてるのかが分からないが、何もしてこないって事は、聞いてくれているのだと信じよう。
「結果は全然ダメでした。中級魔法程度までなら、難なくいけたんですけど、上級以上になると、合わさった瞬間暴発してしまうんです。そこで考えたのが、魔方陣の活用」
空を指差しながら話しを続ける。あわよくば少しでも魔力を回復する為に。
「魔方陣……俺の中では、構築した魔法を一時的に保存してるようなイメージでした。保存してる状態なら、一箇所に集める事は可能なんじゃないかとも。その結果は、空の通りです」
「考えどおりで概ね合っていると付け加えておこう。ただ、それだとしてもまだ説明が足りない。魔方陣は、魔法の強さでその大きさが変化する。空に浮かぶ魔方陣は、明らかに最上級魔法のそれよりも大きい……どれ程の魔力を込めた?」
右手を前に突き出し、手を開く。
「五倍ですよ」
国王様の顔が驚愕に染まる。それもそうだろう、空に浮かぶ魔方陣だけで、最上級魔法二十発分の魔力が込められてる。その威力は計り知れないだろうからな。
残念なのは、起爆させるのが最上級魔法じゃなくて、上級魔法になる事だけだが……やってやるよ。
右手に雷属性を付与させる。危険を感じた国王様が俺を止めるに急いで距離を詰めてくるが――俺の方が早い。
「"サンダー・ボルト"ッ!」
雷属性上級魔法を上空の魔方陣の中心から発動させた事により、魔方陣が誘発するように展開される。
発動された最上級魔法たちは雷属性上級魔法ごと呑みこみ、五属性分の混合魔法となって、そのまま螺旋を描くようにして交じり、国王様へと迫る。
「五属性混合魔法――"カタストロフ"ッ!!」