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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
超強化月間
114/148

大護対女子チーム

「そんじゃあ行くぞー……始め!」



 開始の合図を聞いて直ぐ、ミーナが後方へ下がり、レイアとアリアが俺に向かって走り込んでくる。みんな特訓に励んでたんだろう、授業の模擬戦で戦った時よりもずっと速い。



 それに、俺が冬馬に比べて接近戦が苦手である事を踏まえて、二人で接近戦を仕掛けて来ているのだろう。確り考えられた作戦だと思う。



 とかどこぞの評論家擬きのような事を考えてしまう自分に対して「何様だよ」と思いながら、女子たちの思惑通りにはさせないようにする。



「"ライ・ガン"!」



 手始めに多少威力を下げた"ライ・ガン"を連続で放つ。しかしこのぐらいの攻撃では誰も怯まず、避けながらも全身を続けてくる。予想通りだ。



 ならばと思い、少しずつ威力・速度ともに上げていく。魔力操作の賜物か、以前よりも更に連続で撃てるようになった"ライ・ガン"を避け続けるのは中々難しいのだろう、レイアもアリアも武器を使って弾きながら前進してくる。



「ぐっ!」

「レイアちゃん!」



 やがて弾ききれなかった分がレイアへと被弾。アリアは双剣で手数が多い分、未だに被弾せずに進んでくる。



 このまま続けていても特訓にならない事に気が付き撃つ手を止める。急に止まった事で多少困惑した様子を見せた二人だったが、再び俺へと迫る。



「さて次はあっぷ!?」



 二人の足を止めるため、あわよくばそのまま倒れてもらうために、別の魔法を放とうとしたところ、急に上から水の塊が降ってきて、全身を飲み込まれた。

 何が起きたかと思ったが、こんな魔法を使うのは一人しかいない。



「"クリスタロス"――『マーザ』」



 俺に落とした水の塊を操る様に、杖の頭をこちらに向けているミーナ。その表情はまるで「油断なんてしてる暇あるの?」とでも言いたげな顔つきだった。あ、鼻で笑いやがった。



 残りの二人もすぐそこまで迫っている。水に入っている以上、魔法名は唱えられない……となれば――



 手元へ"雷刀"を具現化し、抜刀。水の塊ごと空間をぶった切る。



 破裂する様に割れた水は辺りに降り注ぎ、俺は勿論、迫っていたアリアとレイアの姿も濡らす。



「ねぇアリア……今の、見えた?」

「……全然、見えなかった」



 今の一振りで、俺が近接戦闘を苦手としてるイメージは崩れたみたいだな。実際はまだまだ苦手だから、そのまま勘違いしてくれてると助かる。



 水の抵抗を受けながらだったけど、問題なく行けて良かったぜ。



「今度こそさてと……」



 二、三度屈伸を入れて、軽く呼吸を整える。次の瞬間に雷属性を付与し、今の俺の全速力で二人に近づく。最近負けてばかりだし、俺だってカッコつけたいお年頃だコノヤロウ。



「張り切っていこーぜ!」

「――っ!?」

「アリアッ!!」



 力加減が分からなくなるから居合は使用せず、そのまま二人を巻き込むように刀を横なぎに振るう。



 俺の接近に逸早く気が付いたレイアがアリアの前に立ち、自身の剣を盾にして俺の刀を止める。かなり力を抑えて振ったとはいえ、まさか止められるとは思わなかった。



「せやぁッ!!」

「っと、"サンダーボール"」



 刀が止められた事で必然的に足が止まり、その隙を狙ったアリアからの反撃に合ったが、最小限の動きで躱し、アリアに向けて雷属性初級魔法サンダーボールを放つ。かなり威力は抑えたから、これで倒れるような事はな――



「せやっ! たあっ!」



 ――俺の魔法を切り捨てて、そのまま反撃してきた。



「うおっマジか!?」



 アリアの双剣を雷刀で受け止める。その結果身体に自由が戻ったレイアは、剣を構え直してそのまま俺に向けて振り降ろ待て待て待て!?



「らっ"ライ・ガン"ッ!!」



 咄嗟にレイアの足元に魔法を撃ち、バランスを崩させる。そのままアリアの双剣を弾き上げて、二人から距離を取る。



 カッコつけたいお年頃とか言ってたのが恥ずかしい。油断しまくりで、危うく負けるところだったじゃねえか……うわー変な汗掻いてる。



 気持ちを一旦リセットしよう。授業で模擬戦をやってた時のみんなとはレベルが違う。俺も相当腕を上げたし、皆の特訓みたいな感じで思ってたけど、だからと言って油断していい訳なんてないんだから。気を引き締めろ。



 ……よし、切り替えた。レイアとアリアはそれぞれの得物を構えたまま俺との距離を保つ。ミーナは、一見すると何もしていないように見えるが……すでにあの魔法は使ってたから、言葉を唱えるだけの状態と見た方が良いだろう。



「"アクア・ランス"!」

「"ウィンド・ランス"!」



 速度のある中級魔法が俺に迫る。身体強化のみ纏った状態で二つの魔法を避けつつ、再度アリアとレイアに近づく。

 俺の接近に対し、二人が武器を構えようとした瞬間、雷属性を付与。



「"バリスタ"」



 二人の間を通すように雷の矢を放つ。外した事に少し驚きを現す二人だったが、今の俺の魔法はレイアやアリアを狙ったわけじゃない。



「きゃあっ!?」



 そう、狙いはミーナだ。遠距離で邪魔される可能性があるミーナを先に静かにさせるために、雷矢バリスタを放った。勿論直撃は避けて、ミーナの足元に強い衝撃を与えた。



 ミーナの悲鳴に驚いた二人が、俺から一瞬だけ視線を外す。視線を外した事に危機感を感じたレイアとアリアが、すぐに俺へと視線を戻すが、すでにその場にはいない。



「ぐっ!?」

「レイアちゃん!?」



 俺の最速の動きで二人の背後へ回り込み、先ずはレイアの意識を刈り取る。アリアがレイアに声をかけた瞬間、今度はそのアリアの背後へ回り込む。



「こっちだよ」

「っ!? えいッ!!」



 背後からの声にすぐさま反応したアリアが無作為に双剣を振り回すが、流石にそんな攻撃は、俺には当たらない。

 敢えて二振りの剣をどちらとも雷刀で受け止め、上空へと弾き飛ばす。そして、両手が開いたアリアの首元に手刀を入れて気絶させる。



 倒れこむアリアを抱えて、ゆっくりと地面に寝かせる。アリアから手を放した瞬間、俺の周りに水の紐が出現するが、それを雷刀で切り裂く。



 水の紐の動きが止まり、ただの水となって地面に崩れ落ちる。振り抜いた雷刀を鞘へ滑り込ませ、正面にいるミーナに目を向ける。



「まだやるか?」



 俺の問いかけに対し、首を横に振ったミーナ。俺対女子チーム、無事に俺の勝利だ。



「はい、みんなお疲れさーん。大護、念のためにレイアとアリアちゃんには回復魔法掛けといた方が良いんじゃねえかぁ?」

「あぁ、そうだな。ミーナも回復魔法いるか?」

「私は大丈夫。戦いによる疲労だけだから、二人の回復を優先して」



 そう言って俺たちから少し離れた場所へ移動する。



「それじゃあ、取りあえず回復を――」

「それよりよぉ大護……なんか、危険な人みたいな戦い方に――」

「なってない……筈だ」



 なってない……よね? えっやだ……

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