冬馬対男子チーム
国王様との訓練開始から二十五日目。
"炎龍鎧"の突破口、未だ見つからず。最早俺と冬馬の中では"出されたら終わり"という認識まで出来ている状態だ。
ただ、収穫はあった。
あの鎧は最上級魔法相手には、国王様も反撃をしないと消せないようだ。最初にあの鎧が出てきた時、俺の"フォース・レイン"は鎧に当たって消滅していた訳ではなく、国王様の殴打で消されていた事が判明した。
まあそれが分かってから、最上級魔法×最上級魔法の混合魔法を使ってみたんだけど……一瞬拮抗しただけで、傷一つ与えられなかったのは結構堪えた。
冬馬も接近戦での勝ち筋を探る様に戦ってはいるが、やはり圧倒的な力の差によって阻まれているようだ。
それとはまた別の問題もある。
国王様は絶対に鎧を纏う訳ではないんだけど、基本的には使ってくる。時間制限がある魔法だからという事もあって、国王様との訓練時間が減り始めているのだ。
そのことに関しても一度国王様に話してみたが、「正直、こいつを使わないと、君たちの特訓にならなくなってしまってきていてね。私の力不足ですまない」とか言われちゃったらさ、嬉しい反面ごめんなさいだし、本当にありがとうございますとしか言いようがない。
そんなこんなで空き始めた時間を利用して始まった事がある。それは、ミーナたちみんなとの手合せだ。
今はノエル、レド、リュウの男子チームが冬馬と模擬戦をしている。
リーチのある棍を用いた物理攻撃主体のノエル。飛び道具と魔法を駆使した遊撃のレド。魔法をメインに周りのサポートも担っているリュウと、バランスのとれたチームだと思う。
ノエルが棍を使って自分の距離を保ち続けながら鋭い連撃を入れ、冬馬が反撃に出ようとする瞬間に、リュウからレドへの指示が飛び、それを飛び道具や魔法を使って阻止する。といった状態だ。
一見すると男子チームがかなり優勢に見えるが……ノエルの連撃の速度が少しずつ落ち始めてる。恐らく疲労から来るものだろう。対して冬馬からは疲労は全く見られない。冬馬優勢に戦況が動くのも時間の問題の筈だ。
やがてノエルの突きが雑な大振りになる。その瞬間、受け止めていた棍の先端を掴み、ノエルの身体を一気に自分の方へと引き寄せた冬馬。引き寄せたノエルの顔面には冬馬の拳が迫る。
突然の事態に抵抗できずに引っ張られるノエルだったが、寸でのところで棍から手を離して直撃を逃れる。だが、今の冬馬の攻撃はそれだけでは終わらない。
「――うおぁっ!?」
「ノエル!」
冬馬が振り切った拳からは逃れたノエルだったが、その風圧の影響を受けきれずに、後方へ飛ばされる。その様子をみてレドが助けに入ったが……それは悪手だ。
「っ!? いけません! すぐに離れてください!」
冬馬の体勢を見ていたリュウがそう指示を出しながら、二人と自分の前に魔力障壁を展開しようとするが、既に遅かった。
「"ツイン"ロケットォォォ、パァァァアアアンチッ!!」
両の拳を前に突き出す。ノエルの顎が跳ね上がり、レドの身体がくの字に折れる。ノエルの顎を捉えた冬馬の魔力は、そのままリュウの元へと急接近。リュウが展開した魔力障壁によって一瞬阻まれはしたものの、障壁を破り、リュウの顔面を掠めるように通り過ぎていった。
「あーくそっ。やっぱり両拳で撃つとまだ乱れんなぁ。今ので三人とも巻き込むつもりだったんだが外れちまったぜ……二人は多分もう動けねえと思うけど、どうするよ?」
両の手を振りながらリュウにそう問いかける姿は、最早悪役以外の何にも見えん。何アイツ怖すぎ。
「降参です。私一人でトウマ君に挑んでも、勝ち目はゼロですからね」
「そっかぁ、リュウとも一回サシで戦ってみてえってのが本音なんだけどなぁ」
「ふふっ。私はどちらかというとサポートがメインの人間ですからねサシでなんて戦えないですよ」
「そっかぁ……ちぇー」
リュウと話しながらノエルとレドを小脇と肩で回収する冬馬。そのまま俺のところまで運んで再度地面に寝かせる。
そして俺がそのまま回復魔法を二人に施す。外傷はみるみると消えていき、疲労が感じられた顔色も多少良くなってきた。直ぐに意識も戻るだろうし、このくらいで大丈夫だろう。
「うっし、こんなもんだろ。それじゃあ次は俺と女子チームの試合だな。三人とも大丈夫か?」
既に訓練場の中央へ移動している、血の気多い系女子三人に話しかける。三人とも軽く頷き、それぞれ武器を構える。