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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
超強化月間
109/148

力を、抜け

 距離を取り、身体強化を施した上で雷属性も付与させる。この人に一泡吹かせるためには、やっぱりあれしかない。



「キリュウ君、準備はいいかい?」

「大丈夫です」



 今までと比べると、大分杜撰な返事だな。でも国王様は何か嬉しそうだし、このままでも良いのかもしれない。

 っと、そんな事は一先ず置いといて……この戦いで、俺も次へ進むんだ。



「それじゃあ――模擬戦開始だ」



 ――開始の合図と共に俺は"混合魔法"を作り出す。



「"火炎旋風"ッ!」



 【氷帝】と戦った時に始めて撃った混合魔法。あの時よりも魔力操作の精度が上がっているから威力はけた違いに上がっている。

 そんな俺の魔法に対し、国王様は避ける事もせず正面から突っ込んでくる。



「"炎龍――龍波"!」



 放たれた魔法は俺の混合魔法を直撃。一瞬の拮抗が見られるも、すぐに打ち破られ、俺の前に国王様が迫る。だがこうなる事は承知の上だ。



 指先に魔力を集中。俺の構えをみた国王様は"ライ・ガン"を予想しているのか、背中の大剣に手を掛けながら進んでくる。

 俺の魔法を弾きながら距離を潰すつもりだと思うが――そうは行くかってんだ。



「"サンダーキャノン"ッ!」



 名前の通り、雷の砲撃が俺の指先から放たれる。国王様の表情が明らかに驚きに染まるが、事前に手を掛けながら動いていたのが功を奏したのか、ギリギリのところで大剣に弾かれる。



 咄嗟に弾いたことにより、多少体勢を崩す国王様。その姿から、懐へ入り込む事を一瞬考えるが、国王様の目を見た瞬間、前に出る事を止める。



「ほう、今のは良い判断だ。あのタイミングでの接近なら、私はどこからでも反撃に移れる」



 その場で、崩れたと思ってた体勢のままで、縦横無尽に大剣を振ってみせた。体勢を崩していたと思っていた国王様は、その実、下半身は滅茶苦茶安定していた。何だよそれ、何で冬馬の時は肉弾戦に見せかけた魔力の戦いだったのに俺の時は逆なんだよ。異世界なのに。



「しかし……トウマ君と言いキリュウ君と言い、こんな状況で新しい技を使ってくるとは、本当に大したモノだ」



 国王様の言葉に返答はせず、俺は"雷刀"を具現化する。余計な事を考えて、手の内を見透かされたくないからな。



 次の攻撃の為に一度深呼吸を入れて、心を落ち着かせる。



 完全に見よう見真似……寧ろ"本物"は見た事が無い技だから、見真似でもないかもしれないが、多分、今の俺には一番合っている技だと思う。



 雷刀を右手に、左手にはまた別の道具を雷で生成。ホントに魔力の扱いが上手くなったもんだと我ながら思う。



 そうして作った道具……"鞘"に、雷刀を滑り込ませる。所謂、納刀状態だ。

 そしてそのまま腰元に刀を置き、右手を柄に掛ける。



 左手で鞘を持ち、鞘引きが出来る状態に。どこかの小説や漫画とかで、この鞘引きが凄く重要的なことが書いてあった気がするから、抜かる事無く準備を整える。



 国王様を視界に捉えたまま足を肩幅に開き、少し前傾姿勢になる。



 ――まだだ、もっと力を抜け。



 俺の体勢を見た国王様が何かを言っている気がするけど、靄が掛かっているような状態になって上手く聞こえない。

 いや、今はそれでいい。余計な情報は全て遮断し、国王様の動きに意識を集中。そして、一瞬に全てを込めろ。



 ――俺の最速を見せる為に。



 国王様が僅かに重心を前方へ傾ける。その瞬間を狙って、俺はそのまま地面に身体を倒し始める。



 鼻先が地面へと迫る。触れようとしたその寸前、右足で地面を蹴りつける。重力によって加速した身体は、蹴りつけた勢いで更に加速。国王様との距離を一気に詰める。地面を蹴りつけた瞬間、左手で持っていた鞘を引く事も忘れない。



 一瞬で国王様との距離を詰めたその時、何故か景色がスローに見え始める。俺の動きは見えているようだけど、反応する事が出来ていない様子の国王様。その表情が徐々に驚愕を露にしていくのがわかる。



 そんな表情を見送りながら俺は刀を抜き、そのまま国王様の後方へと駆け抜けた――






 一陣の風が吹き、伸びてきた黒髪を撫でる。



 横に広げていた右手を身体へ戻し、左手に持った鞘へ雷刀を納めたその瞬間、後ろから国王様の呻き声が聞こえた。一撃与えることには成功したらしいが、自分の目で確認できないのが残念だ。



 極限の集中状態に陥ったためか、たった一振りで俺の体力は根こそぎもっていかれた。正直立っているのがやっとの状態だし、少しでも動こうものなら、問答無用でぶっ倒れるだろう。



 とか思っていたけど、結局何もしなくても限界が来て、仰向けで地面に倒れる破目になった。



 あー……疲れた。すげえ疲れた。



 ただ――気分は最ッ高だ。



 どデカイ壁を乗り越えたんだ。今だけでもそう思っていていいだろ。明日以降、本気になった国王様と訓練しないといけないし、その時にまた絶望するだろうから、せめて今だけでも悦に浸ってもいいだろ。



 誰に攻められてる訳でもないのにそんな事を思いながら、俺は静かに目を閉じる。



 今日の教訓、体力つけよう。


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