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飛ばされまして……  作者: コケセセセ
超強化月間
107/148

強化を極めて、物理で殴れ

 国王様との訓練開始から十三日目。

 見慣れた訓練場には轟音が響き渡る。



「"ライトニング・スフィア"ッ!」

「"炎龍――龍波"ァ!」



 互いの魔法がぶつかり消滅する。その瞬間に足のみに雷属性を付与し、国王様へ急接近。近づきながら右手に作り出すのは、いつぞやレドと戦った時に生み出した"雷刀"。

 "雷刀"を持つ右手を少し後ろへ引き、逆に左手を前に出す。雷属性付与を足から全身に戻し、腕に意識を集中――



「"刺雷"!」



 繰り出すのは突きの連撃。雷属性を付与した、俺の中で最速の攻撃の攻撃だろう。これで……。



「"炎龍――咆哮"ッ!」

「な――ッ!?」



 炎の龍が見せたのはその名の通りただの"咆哮"。勢いはあったが、俺の体勢に影響は出なかった。しかしそのただの"咆哮"により、俺の雷属性付与だけが"吹き飛ばされた"。身体強化のみの状態の突きでも問題ないだったろう……普通の相手であれば。



 僅かに速度を失った突きが連撃となる事は無く、たったの一突き目で大剣によって阻まれた。

 そのまま振り上げられた大剣によって俺の"雷刀"が消失。眼前に剣先を向けられた。



「……降参です。今回はいけると思ったんですが……あんな方法で破られるなんて」

「いや、今回は中々肝を冷やしたさ。あれを防げなかったら、私は穴だらけになっていただろうしな」



 悔しさを滲ませながら呟いた俺の一言に対し国王様は、大剣を背中に戻し、流れ出る汗を軽く拭きながら笑ってそう答える。



「それに魔力操作も大分身についてきたみたいだね。今の実践の中であれほどまで巧みに操るとは……正直もう少し時間がかかると思っていたが、感服したよ」



 大人の魅力を全面に押し出したかのような微笑を俺に向けてそう言う国王様。俺が女性だったら惚れていたかもしれない、いいや、惚れていたね。そんな事を思わせてくる笑顔だ。カッコいいぜチキショウ。



「さて、次はトウマ君……と言いたいところだが、少し休ませてくれ。二人を連戦で相手取るのはもう厳しいようだ」

「分かりました。なら俺から冬馬に伝えておきますよ」

「すまない、助かるよ」



 タオルで汗を拭きながら訓練場を後にする国王様。

 ……いつの間にタオルなんて用意してたんだろう?






  ◆  ◇  ◆






 ってな訳でぇ、大護に話を聞いてから大体十分ちょっと。パパさんが戻ってきたところで俺との模擬戦の時間だぁ。

 大護は結構良いところまでパパさんを追い詰めたわけだし、俺も良い感じで戦えればと思うけど……果たしてどうなる事やら。



「さて……と。待たせて悪かったねトウマ君。準備は良いかな?」

「おう! バッチリだぜ! 今回はちょぉっとした秘策も用意してるから楽しみにしてくれ!」



 後ろで僅かに聞こえた「秘策なら言うなや……」という大護の言葉は無視して、身体強化の第三段階を纏わせる。そういやこれをやり始めた時はちょっと時間が掛かってたけど、今はかなりスムーズにできるようになってんな……これも魔力操作の訓練の賜物ってヤツか。



「うっし……じゃあ――行くぜェッ!」



 空いていたパパさんとの距離を詰めるために飛び出す。けれどパパさんは逆に、俺との距離を一定に保つように動き回る。動き回りながら、俺へと初級魔法を連続で撃ち込んでくる。それをかき消すように、俺も初級魔法を打ち続ける。これができるようになるのも大変だったんだぜ?



 初級魔法での牽制が続く。埒が明かないと感じた俺は、足に部分強化を施し、一気にパパさんとの距離を潰しに掛かる。

 だが、パパさんも待ってましたと言わんばかりの勢いで、俺へと向かってきた。



 想像していなかった行動で一瞬身体が硬直した俺。その行動の悪手振りに気がついた時には既に遅え。パパさんの拳を止める事ができずに、腹への直撃を受けちまう。――ところがどっこい。



「むッ!?」



 部分強化した腹で受け止めた事で、威力に負ける事無く受け止めることに成功。



「お返し、だァッ!!」

「ぬお――ッ!?」



 右の拳を振り上げてパパさんの顔面を狙いに行ったが、その攻撃は、僅かに頬を掠めただけで留まる。その掠めた勢いだけで、パパさんの体勢がグラりと揺れる。



 その僅かな事が……今の俺にとっちゃあとてつもなくデカい。



「キレーにクリーンヒットとは行けなかったけどよぉ、初めて俺の拳が当たったぜ、パパさん」

「……部分強化を扱いこなせれば、掠めただけでこの威力か。私の身体が持つかが心配だな」

「へッ、嘘ばっかり」

「ばれたか」



 言葉が交わされた後にパパさんから繰り出されたのは、大護との戦いでも姿を見せた炎の龍だった。



「魔力操作の精度も高まったようだし、さらに出力上げていくとしよう。頑張って付いてきてくれ」

「ヘッ! 言われなくとも――!?」



 そう啖呵を切ろうとて横へ跳ぶ。瞬間、俺が元居た場所には炎のレーザービームみてえな魔法が過ぎ去った。



 ――炎が通過した地面に目をやると、その部分だけ真っ黒に焦げてやがるし、近づいただけで、熱がこっちにまで伝わってきた。



「これ当たったら……俺、溶けるんじゃね?」

「一定魔力以上の身体強化を使っている場合は溶けたりしないさ。火傷くらいはするかもしれないがね」

「……となると、俺の身体強化なら大丈夫と踏んでの一撃って事っすか、そーですか――っと!」



 距離が開いたままじゃ危険と判断し、一気にパパさんへと近づこうと試みる。けどまあ、然うは問屋が卸さない……ってな感じか、開かれた距離は一定を保ったまま縮まらねえ。



 となると……"あれ"をやってみるっきゃねえか。完成には程遠い代物だけど、不意を点くにゃぴったしだろう。

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