即、身バレ?
放課後。そして授業の結果。
無理。
ただ、数学とか地球にもあった科目があったのは驚いた。それに向こうより大分遅れてるから、特に困るようなこともないだろう。
それ以外よそれ以外。一から勉強しないととてもじゃないけどついていける気がしないね。
「くうぅ……」
「どうしたの? 顔色が悪いけれど」
悶えながら机に突っ伏していると、隣の席のミーナの声がした。つーか俺、心配されてばっかりだな。
「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと授業がムズくてな」
「そう? まだ一年次の復習の範囲だから、そんなことはないと思うけど」
「俺に対しては、殆どが新章突入みたいなもんなんだよ」
「どういうこと?」
こっちの話だよっと話を無理矢理終わらせる。イカンイカン、下手なこと喋るとついボロが出そうになる。
「だぁいごぉぉぉ……」
「大丈夫だ、言いたいことは分かってる。……頑張ろう、俺たち」
こんな感じで友情やってるときに、ほかのクラスメイトから心配と変なものを見るような目を同時にぶつけられていたことは知らない。
「あぁ、そうだ。なぁミーナ、学園寮ってどこにあるんだ?」
「……案内してあげるわ。着いてきて」
ん? なんか不機嫌な感じになってる? いや、不機嫌とゆうよりも、なんか……驚きがあったような感じかな。
「って、ちょっと待って! ほら、冬馬も行くぞ!」
「うん、うん。ありがとうよ大護。そうだよな、俺たち、この間こっちに来たんだし、こっちのこと分からなくて当然だもんな。第一……」
「だぁー! 何時まで友情ごっこやってんだよ! 早くしろ!」
結局、涙なのか鼻水なのか分からない液体で顔を濡らした冬馬を引きずりながら、ミーナに着いていくことに。
「フィアンマ様さようならー!」
「あ! フィアンマ様! また明日!」
「おい、フィアンマ様だ」
「あぁフィアンマ様……本日もお美しいお姿をありがとうございます……」
ミーナに着いていくように、学園寮を目指しているんだけどーーなにさ? この騒ぎは。え? フィアンマ"様"?
「み、ミーナさん? この騒ぎって一体……」
「本当に知らなかったんだ。じゃあ部屋に着いたら話すわ」
「う、うっす……」
流石の騒ぎに冬馬も少し引き気味のようだ。そりゃそうだよな。明らかに先輩と見える人達までも、ミーナのことを"様"付けで呼んでるし。
騒ぎが小さくなったと思ったら、もう学園寮に着いていたらしい。まぁ学園のサイズで分かるように、寮の方だって案の定……。
「……デカイな」
「そうね」
「ミーナちゃんは流石に慣れたって感じかぁ?」
「慣れもあるけど、それ以外にも色々とね。それよりアカホシ君、ちゃん付けはやめてもらえない?」
「はいよーぅ、ミーナちゃん」
「――まぁいいわ。管理人さんに部屋の鍵を貰って来るから、ちょっと待ってなさい」
そう言って奥に入っていってしまった。何から何まで動いてもらって申し訳ないな、今度昼飯でもご馳走できればいいな。
にしても寮の部屋かぁ。やっぱりあれか? 馬鹿に広かったりするのかな。一人暮らし用じゃねぇだろ、みたいな感じで。
「貰ってきたわ。アカホシ君が305で、キリュウ君が306ね。それに自分の魔力を流せば使えるようになるから」
「あんがとミーナちゃん。へぇ……カードタイプの鍵なんだ。なんか高級ホテルみたいだな」
「何言ってるの? その形以外に鍵なんて無いでしょ? ……まぁいいわ。ひとまず部屋までは案内するから、あそこの魔方陣に乗って行きたい階を言えば転移出来るから」
転移キタキタ。所謂、瞬間移動。こいつは結構楽しみにしてたんだよなぁ。
……でも、やっぱり色々文化が違うな。地球が科学で構成されてると考えるなら、ミリアルは魔法で構成されているような感じだし。となると携帯電話とかもやっぱりないのか? あとで連絡の取り方とかもそれとなく確認しておかないとな。
魔方陣に乗っていざ三階へ。ちょっとした浮遊感を味わったのち、それぞれの部屋に到着。ドアの形とかはあんまり変わらないな。
でもドアノブの横に、駅の改札口に付いてるような、カードをタッチする部分が設置してある。ここが鍵穴みたいなもんか。
「ここが二人の部屋よ。荷物とかあるなら早めに整理して、勉強に支障が出ないようにね」
「あぁ、ありがとうなミーナ。それと、また明日からも世話になると思うからよろしく頼むよ」
「いいわよ別に……あと二人とも、部屋がある程度片付いたら私の部屋に来て、302号室だから。話があるの」
「え?……お、おう。わかったよ」
その一言を残してミーナは部屋に戻っていった。でも話ってなんだろうか。まぁ俺も確かめたいことがあるからちょうど良かった。それよりも、自分の部屋に男を二人も上げてしまって大丈夫なのか?……いややめろ俺。これ以上考えたら、あらぬ方向に行ってしまう。
と、とりあえず部屋だ。カードに魔力を流して……うし。それじゃあレッツゴー。
扉を開けて中を見ると、廊下があり、そのまま部屋に入ると、大体十畳くらいの広さのリビングになっていた。そのまま隣の部屋を開けると、リビングよりは多少狭いが、それでも十分な大きさの寝室がある。キッチンはリビングと隣接していて、カウンター席にも出来るような形になっている。
家具はソファー、テーブル、ベッド、冷蔵庫のようなもの等の必要最低限と思われるものは、全て揃っている。
……うん、広すぎる。そして便利すぎる。持ってくるものとか殆ど無いじゃん。まぁでも、のんびり過ごせそうな部屋だしよかった。
荷物の整理……って言っても手荷物を寝室に片付けただけ何だけど、一応終わらせたのち、冬馬と合流してミーナの部屋に向かう。
「それにしても何だろうな、ミーナの話って。わざわざ部屋に呼ぶってのも気になるし……」
「学園のルール的なことでも教えてくれんじゃねぇのか?」
「そんな話だったら学園でも十分出来るだろ。……ダメだ、やっぱり検討もつかない」
「んまぁ考えてもわかんねぇしいいんじゃね? 第一、女の子の部屋に上がれるって言うんだからよ、考えるより前に鼻づまりとかの心配しておけよ」
「お前は自分の頭の心配をしてなさい」
歩くこと三十秒。まぁ同じ階だし、そんなもんだよな。ミーナの部屋のチャイムを鳴らす。
「いらっしゃい、入って適当に寛いでいて」
玄関を開けたミーナはそう言うとキッチンの方に行った。そんなに気を使わなくても良いのに。
リビングに入ると、女の子の部屋とゆう感じはあまりなく、備え付けてあった家具に、ちょっとした小物が増えているくらいの質素な部屋だった。
「俺の部屋とあんまり変わらねぇなぁ。女の子らしいのは部屋の臭いだけか」
「嗅ぐな馬鹿」
そうして言われた通りに寛いでいると、ミーナがお茶と少量のお菓子を持ってリビングに入ってきた。
「お待たせ。それで早速なんだけど……私の質問に答えてもらっても良いかしら?」
「ああいいぜ。ミーナちゃんの質問なら大歓迎だ! ちなみに先に言っておくと、彼女は募集中だ!」
「そう、頑張ってね。それで質問なんだけれど……」
冬馬の奴、簡単に切り捨てられて涙目なんだけど気にしないんだね。とか軽く冬馬の心配をしていると、ミーナの口から予想もしなかった一言が飛び出した。
「貴方たちは一体"何"なの?」
「……えっ?」
咄嗟に出た一言がそれだった。
「お! 親睦を深めようってんだな! えっと、さっきも話した通り、俺と大護は昔から友達で……」
「そういうことじゃないわアカホシ君。……そうね、別の聞き方をしてみるわーー貴方たち、この世界、ミリアルの人間じゃないわよね?」
全く隠しもしないストレートな質問に俺は勿論、さっきまで探られていることに気づいてもいなかった冬馬も目を丸くする。
「それで、貴方たちは一体"何"なの?」
そうしてミーナはまた"何者"と聞かないで"何"と聞いてくる。人間であることすら疑っているらしいな。
「……わかった、全部話すよ。その変わり、頭がおかしい奴等とだけは思わないでくれよな」
そう言うとミーナはコクりと首を縦に降って答える。
「いいのか大護? 確かに口止めされてる訳でもないし、話しても問題はないだろうけどよぉ」
「ここまで確信に迫られたら逆に隠す方が怪しいだろ。それに、ミーナとももっと仲良くなりたいしな」
「……わかった。でも話すのは大護だけにしてくれ。俺が話すと纏まらなくなっちまうし」
わかったよと冬馬に軽く返事をして、俺はミーナに向き直る。さてと、どう説明すれば信じてくれるかな。