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30話「最終章」:米国の貿易戦争と65歳でパパになる

 帰って開いてみると七郎さんへ、恵子が妊娠したという知らせを聞いて一番驚いたのは私かも知れない。だって、あんな、おてんばで勝ち気な娘が、お母さんになるなんて信じられない、でも、うれしい、本当うれしい!天国のお父さんも、さぞ喜んでいることでしょうと書いたペンの字が滲んでいた。


 たぶん、感極まって涙を落としたのだろう。なんて可愛い、お母さんなんだろうと七郎も、ほろっとした。次に気を取り直して書いたのだろうか、七郎さんへのお願い、恵子が元気な赤ちゃんを産むために仕事をさせない炊事、洗濯など重労働をさせない事を約束しなさい。


 もちろん浮気なんてもってのほか、それから恵子に常にやさしく接して下さい。妊娠中の女性は神経過敏だから・・・。最後に絶対に食べ過ぎに注意しなさい、七郎さんじゃなくて、恵子の事です。食欲が出て、ついつい食べ過ぎちゃうのですが、増えすぎると出産がキツくなります。


 その為にも、食べ過ぎないことが大切です。これは私が体験済みですので強く希望しますと書いてあった。なんて可愛い、お母さんだろうと、七郎はうれしく思った。春風が吹き端午の節句が過ぎ梅雨も過ぎ暑くなり秋風が吹き出した頃、恵子の腹は、ぱんぱんになってきた。そして9月20日、待望の赤ちゃん誕生となった。


 まさか65歳で子供を授かるとは夢にも思わなかった。七郎は生まれてきた女の子をみて複雑な感情が頭の中を駆け巡った。1つ目、この子を見て孫を見てる様な奇妙な感じ。現実なのか夢を見ているのかわからない不思議な感覚に襲われた。2つ目、この子のために何をすべきか、良い教育を受けさせたい。


 勉強を教えて上げて自立できる様にしたい。3つ目、投資の方法を伝授して食いっぱぐれない様にしてあげたい。4つ目は、いっぱいお金を残して上げたい。どんどん、湧き上がってくる妄想に悩まされた。


 そんな、空想を打ち消すように恵子が帰りが遅いわね、私こんなに大変な思いをして頑張ってるのに、まったくもうと怒りだした。40歳越えの出産って大変なんだから、この貸しは、後で、きっちかえしてもらうからねと息巻いていた。こんな大変事をさせて、この野郎と軽く七郎の頭をたたいた。


 七郎が、ご苦労さん、大変だったねとやさしく彼女の頭をなでると堰を切った様に目に涙があふれた。彼女として今まで経験したことのない痛さ、つらさだったのだろう。そして頑張って分だけ、汗のように、涙でストレスを発散したのだろうと思うと、急に、愛おしくなった。


 この出来事を考えると今まで生きてきたことが走馬燈のように、頭の中を駆け巡った。生まれて何もわからないうちから多くの大人に、いろいろ覚えさせられた。物心ついた6歳の時、家族全員で米国旅行に行くのを楽しみにしていたのに風邪・インフルエンザになり、高熱で、うなっていた。


 そして、1人だけ日本に残された事。帰りの土産を楽しみに待っていたのに家族全員が飛行機事故という不幸な出来事で1人ぼっちになり悲しかった事。横浜の外人学校に入り友達になったティムのお父さんのリチャードとの運名的な出会い。彼は、実の子以上に可愛がってくれ厳しく人生を生き抜くすべを教えてくれた。


リチャードとロスチャイルド家の援助で不自由ない生活ができた。更に木下家の巨額の遺産の事。それを元手に巨万の富を築いたこと。本当に悲しかった事。最初の妻・サリーや、恩人リチャードの死。巨額の富を前に何をすべきか考えあぐねた日々。


 最後に巨万の富を与えてくれた多くの幸運に感謝して、その幸運に恵まれなかった人々にチャンスを与える事が自分の巨万の富を有効活用することだと悟り「入間の里」学生寮を私費を投じて設立した事。


 この、ご褒美なのか、本当に身近にいた新しい妻との結婚。彼女の父との悲しい別れの次にサヨナラ満塁ホームランの様な65歳にして女の子の誕生という幸運を掴んだ。こう考えてみると人生悪い事の後に良い事がある。


 まさに、ことわざの「禍福は糾える縄の如し」幸運を独り占めしないで幸運に恵まれない人に与えれば、又、幸運がやってくる。ことわざの「禍福己による『かふくおのれによる』」禍「わざわい」も福「ふく」も、その人の行動しだいだという事を七郎は、身をもって知った。【完結】


これで、全編終了です。読んでいただき、誠にありがとうございます。

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