15話:恩師、リチャードの死
日本航空の再建案は、3000億円規模の公的資金の注入や2500億円の債権放棄などの支援を必要とした。一方、日本航空側には、こうした支援を受けるため、月に25万円ともいわれる高額な企業年金のカットや1万人規模の人員削減の必要性も訴えられた。
その後、日本航空が再生するまで国営とされた。2009年に円高ドル安の進行が、始まった。2010年1月22日、寒い日、昨年12月から、体調を崩して東京大学付属病院に83歳のリチャードが、急遽入院した。
風邪をこじらせてインフルエンザにかかり肺炎を併発したとの知らせが入り七郎は急遽、彼の病室に見舞いに行った。マスクを着用して彼の顔を見ると青白く急に老けたような生気のない顔に見えた。しかし、彼は、七郎に精一杯の笑顔で、大丈夫だ、じき退院すると強がっていた。
リチャードが、君に話しておきたいことがあるんだが、話すことができないので秘書にメールを送らせるから読んでくれと言った。七郎は、何と言って良いのかわからず、リチャードの手を握るだけだった。
10分位して、病室を出るとき、
「リチャードが小さな声で『グッド・ラック・Good・Luck』と言ったような気がして永遠の別れが来たと直感した」
「振り返ると、我を忘れて泣き叫びそうになるので、じっと我慢し静かに病室をあとにした」
翌日、七郎商会に帰ると、メールが入っていたが、開けようとしても、キーワードを聞いてくるだけで、開けない。そこで、昔、リチャードが教えてくれた、秘密の合言葉「Good Luck」を打ち込んだ。すると、メールが開いた。
「最初に、もし君が、これを読む時には私は天に召されているだろうという書き出しから始まった」
「僕が、君と会ったのは、多分、イエスキリストのお導きがあったのだと思う」
「最初に、君を見た時に、すぐに、何か、不思議な縁を感じた」
「だから何のためらいもなく君を自分の息子のように迎え入れたのだ」
その数日後、私が酒を飲んで帰宅した夜、
「君に日本は敗戦国であり日本を捨てて米国人にならないかと言った」
「嫌だ、日本に、優れた文化、伝統があり、それが大好きだから日本人のままでいると言い切った」
「私が本当に日本は欧米に追いつけるとは思わないと言うと、そんな事はないとつっぱねた」
「日本人の勤勉さと正直さ結束力で、きっと10年、20年後には追いつくと思うと語った」
「そのために、七郎は、頑張って勉強していきたいと大声で、叫んだ」
「その時、正直、頭にきて金を稼ぐというのは、並大抵の努力では、できることではない」
「すごい相手と闘って勝たなければ、金は稼げないと怒鳴った」
「七郎、お前に、そんな覚悟があるのか、勝てる自信が、あるのかと、すごい形相で言った」
「君は、勝てるかどうかわからないが、勝つために努力する覚悟は持っていると開き直った」
「その時、お前は、俺の後を継げる奴だと感じ取った」
「その時、君を抱き寄せてお前を見てると昔の自分のような気がしてならない涙を流した」
「この時、本当の親子になれた気がしたんだ」
「その後、君は、僕の本を片っ端から読んで、投資の勝ち方を会得していった」
「サンノゼ州立大学にスカラシップで合格し日本を後にした」
「数年後、見違える程、立派な青年になったのを見て本当にうれしかったよ」
「帰国後、君が木下家という由緒正しき家の息子と知って、僕の勘に間違いなかったと思った」
「その後、ロスチャイルド家の経理のデータベースの更新の仕事を与えた
「仕事の内容は、教えていなかったが、多分君のことだから察しがついただろう」
「世界経済の大事件「ブラックマンデー、リーマンショクの時、RSCの財産が急に増えた」
「その事から、おおよそ、どんな仕事していたか想像できるだろう」
「しかし、僕は、君をロスチャイルド家に縛り付ける気はない好きなように生きて欲しい」
「ただ、七郎が僕に与えてくれた、数々の事を考えると、僕は、その歩んできた人生の価値の分だけの報奨金を渡したいと思う」
「数日後、君のスイス・ピクテのプライベートバンクの口座にその金を振り込んでおくよ」
「君が正しいと思う事に使ってくれ」
「そして君が望むならロスチャイルド家の経理担当の七郎商会をやめても構わない」
「本当に長い間、楽しい時間を与えてくれてありがとう心から感謝します」




