99ページ目 勇者、おかわり!
先生からと自分たちで簡単な自己紹介をして、私たちはそのクラスに交じりました。
イローナ様だけ幼等部なので少し心配ですが、モニカ様もおられますしメリッサさんもリッターさん居ますし問題無いでしょう。
フム、あの方が勇者さんですか。
何というか、分かりやすい。
ここまで触れていませんが、この世界の人の髪はトンデモカラーばかりです。
赤に青に緑、人によっては何色か混ざっておられる方もいます。
更に目の色も赤や緑など、向こうではありえない色ばかりなので黒髪黒目の勇者さんは分かりやすいですね。
そういった点ではカグヤお嬢様と私は黒髪なので目立ちますかね?
まず勇者さんのステはしかっりチェック。
うん、無双仕様ですね。
数値だけで見れば会った事のある方の中ではトップクラス。
この化け物の様な方を放置しておいて問題無いのでしょうか?
ああ、取り押さえるのが無理そうですね。
それに本人もしっかり溶け込んでいるので問題無いでしょう。
むしろ問題があるのはこの状況です。
転校生が珍しいのか、シャル様が珍しいのかあるいはその両方か。
先生が次の授業は戦闘訓練っておっしゃってましたけど、移動しなくて大丈夫なのですか?
などと思っているとチラホラと移動開始。
移動中も色々とお嬢様たちは質問攻めにされますが、ティファ様が上手くあしらってくださっています。
シャル様は件の勇者に捕まってしまっています。
そして勇者の近くには可愛い女の子が数人、彼女たちが被害者ですね?
まずは彼女たちに取り入って勇者が必要以上に近づいてこないようにお願いしましょう。
「あの、すみません」
「ん、何かな?」
「貴女達は勇者さんと仲がいいのですか?」
「ええ、私たちは豪と仲は良いわよ」
委員長っぽい雰囲気の方に声をかけると見た目通りに柔らかな返事が返ってきました。
私が話しかけたことによって周りの方も私に興味を持たれた模様。
「確か・・・クロさん。だったわよね?」
「はい」
「私、ココット・ディディ。ココットでいいよ」
「私はキャロル・アネジャス。キャロルで・・・」
「私はコート・リナード。仲良くしてね?」
「あ、わざわざご丁寧にありがとうございます。それで、さっそく勇者さんについてお聞きしたいことがあるのですが・・・」
そう言うと彼女たちがわずかにピクリと反応しました、それほど変化は見られませんが警戒の色が見られました。
「お城で少し聞いたのですが、何でも勇者さんは偶然でよく女性の体に触れたり押し倒したりされるとか」
「え!?ええ。まあ、偶然そういうことはよくあるわ///」
あるんですか!?しかも文句を言わないという事は恥ずかしいながらも嫌ではないと?
「なるほど、それでは少し変なことをお願いしたいのですが」
「変なことって何よ?」
「私たちが編入している間は出来るだけ勇者さんの近くにいてアクシデントが起きないように注意していただきたいのですよ」
「何か問題でもあるの?」
「あの、普通に考えて他国のお姫様を押し倒すのはどうかと・・・。それにその時に怪我でもさせてしまったら国と国との問題になって普通首チョンでは?」
「「「え?」」」
「へ?ええと、この国では勇者さんは活躍をされていて色々と便宜を図ってくださる方がおられるかもしれませんが、流石に他国の王族に怪我をさせてしまっては庇いようが無いかと・・・。それに私も彼女たちの事をよろしく頼むと頼まれていますので、出来れば協力していただけるとありがたいのですが」
・・・・・
・・・・
・・
「もしかして豪、危険な状態?」
「危険かどうかは知りませんが、ティファ様達に同じようなことをして笑って済ませるというのは私の立場的に無理かと・・・・」
「分かったわ!私たちが責任を持って彼女たちを守るわ!」
「ぜひお願いします」
これで一応のヒューマンシールドは用意できましたがラノベの男主人公の攻撃力はこんなものではないでしょう。
何かしら私や彼女たちの居ないところでお嬢様達と良い雰囲気になってしまう事は間違いありません。
やはり消してしまうのが一番手っ取り早いでしょう、やるか?やっちゃいますか???
「でも良かったです、皆さんとても綺麗だから豪も私達を放って彼女たちの方へ行っちゃうんじゃないかと心配で・・・」
そんな心配はありませんよ、しっかりキープしたまま彼女枠が追加されるだけです。
・・・。
ふむ、勇者は今のところ好きにはなれませんが彼女たちは悪くないですしね。
彼女たちに押し付けるだけにしておきますか。
訓練場に着きました。
分かりやすく言えば昔の闘技場?
円形で階段状に椅子があって天井がないアレ。
ここで男女に分かれて訓練するそうです。
しかし今日は都合も良く実力測定の日!まずは男子からという事で女生徒は客席へ移動します。
「コーラルさん、何か問題は起きませんでしたか?」
「はい、周りの生徒もまだあまりアプローチしようとはしませんでしたね」
ココット様達とお話をするときはコーラルさんに護衛を丸投げしてしまったのでその確認です。
勇者も他の生徒と同じ程度の距離感だったそうです。
まずはこの測定で自分の強さをアピールしてから・・・という魂胆でしょうか?
まあ、男子生徒全員が変にやる気に満ちているような感じですしそうなのでしょう。
測定方法は1対1の勝ち抜き方式で、最初の1組をくじで選んで勝った方とくじで選ばれた次の挑戦者が戦うそうです。
ちなみに戦わずに降参は出来ず、戦う前に降参が出来るのは前の試合の勝者だけの様です。
私達はまとまって場所を取って試合を見学しているのですが、
「流石に勇者。無双されてますね」
「相手生徒の動きは、悪くないのだけど・・・」
「力でねじ伏せている感じね」
「あと、あの武器も効果が高いようね。近くでは剣のように距離を取れば弓の様に何かを打ち出しているわ」
「魔法はあまり使わないようね」
「総評すると酷いわね」
コクリとお嬢様達は頷きます。
「貴女達もそう思う?」
後ろから声がしたので振り開けると教室では見なかった女の人が立っていました。
はい、綺麗な人でTHE・先輩って感じです。
この方も黒髪黒目なので召喚された方でしょうか?
ステータスは、勇者の方が一回り以上高いですね。
「私の名前は神守 聖(かみもり ひじり)。ジラールの勇者ギルドをまとめている者よ」
「それじゃあ、貴女も異世界から来たの?」
「ええ、私も彼と同じ世界、同じ時代、同じ国から呼ばれたわ。私の方が数年早く来たんだけど、彼には頭が上がらないわ。もう私より全然強いし、周りからの信頼もあるもの」
「この国の勇者ギルドをまとめているのにですか?」
「ええ、彼はここ数年で呼ばれた人間のカでは一番強いそうよ」
ここ最近、という事は以前はもっと化け物もいたのでしょうか?
それにしても、彼女のステータスも十分に高いですし、スキルや魔法なんかも色々と揃っています。
それでもあの勇者には勝てないのでしょうか?
いえ、既に被害者になっている可能性もありますね。
堕とされているから勝てないと、流石はここ数年で最も強いと言われているだけありますね。
「それで、どうして彼が酷いとおもったの?」
「技や、駆け引きが無い」
「力で押し切ってる感じがするよね」
「的確ね、ここの皆は凄い凄いとしか言わないのに」
「あの動きじゃあ、まともに戦えないものね」
「恐らくですが、高ステータスとあのガンソードの所為ではないでしょうか?剣の打ち合いならばステータス差で相手が距離を取れば魔法の発動より速い銃撃で、その所為で殆ど動きませんし攻撃もされません。今までの戦いも苦労されていないのでしょうね。いえ、しようが無いというべきですか」
「貴女、どうして彼のオリジナル武器の事知っているの?それに銃って・・・」
しまった!?
ついお嬢様達とだけいる様な感じでしゃべってしまいました。
私も異世界人とバレるのは面倒事しか呼び込みません、ここは何としても誤魔化さなくては!
「ええと、私のスキ・・・」
「だってクロは私が召喚だ異世界人だもの!」
リーズお嬢様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!!
「貴女も異世界人なの?・・・でもそんなに強くなさそうね」
「皆が皆強いわけではないでしょう?」
「そうなの?私の知り合いの異世界人は皆強いわよ?」
「それでは私は例外という事なのでしょう」
「ちなみにどんな時代から来たの?」
「20XX年です」
「わあ!私の数年後ね。よろしくね、クロちゃん。あれ?でもそうだとしたら貴女本名は?日本人ならクロなんて名前まず無いわよね?」
チッ、嫌な所を付いてきますね、流石は勇者の一人。
「非常に言いにくいのですが、私、向こうでは引き込りでして、コチラに召喚された時に心機一転する為に本名からもじりました。なので、その・・・」
「ごめんなさい。嫌なことを思い出させてしまったわね・・・でも、心強いわ」
いえ、私は面倒なだけですよ?何がどう心強いのですか?面倒な感じにしか聞こえませんよ?
日本人がいると発言に注意しなくてはイケナイ事が一気に増えてしまうので、もう心労がマッハですよ?
お願いですからあの勇者にばらさないでくださいよ?お願いしますから!
とお話ししている間にも勇者は順調に勝っているようですね。
ワザワザこっちに向かって手を振っています。
ですが、せっかく話しやすい現地人?を見つけたのでこの機に聞いておきましょう。
最近起きたイベント内容を!
「え?彼がここ最近で起こした騒ぎ?」
「はい、出来れば公の機関や、国の行く末に関係するようなことを」
「???それなら数週間前に大きな盗賊団をいつも周りにいる彼女たちと壊滅させたわね」
「そうですか、そうなるとそろそろかもしれませんね」
「何がそろそろなの、クロ?」
「イベントですよ、リーズお嬢様。そろそろ何かしらのイベントが起こる時期かと。丁度シャル様が一時帰国されるというイベントと重なりますし。そうしますと起こりそうなのはお嬢様達の誰かが盗賊・・・は潰されたので魔物に攫われるイベントでしょうか?」
「どうして私たちが攫われるのよ?」
「勇者的には仲を深める最高のイベントですよ?攫われて心許ない所へ颯爽と助けにやって来る勇者!街へ帰るまでも様々な困難が2人を待ち受けその過程で2人の仲はより深いものへと・・・って感じですね」
「私たちはそう簡単に攫われる気はないわよ?」
「あの方の視点から見ればそんな展開が最良というわけですよ。そんな危険から救い出してくれた相手を好きにってしまっても何の問題も無いですからね?」
「クロはそういうことに詳しいの?もしかしてオタク?」
まごうとこなきオタクです。
「ねえ、クロ。【オタク】って何?」
「特定の趣味を持つ方の総称です。大抵は専門の職人などでは無いのに関わらず深い知識を持つ、何某かの分野に熱中・没頭している人物を指しているはずです」
「へぇ~」
「ゴメン。私、地雷踏んだ?」
申し訳なさそうにコッソリ謝ってこられる聖様。
「聖様、私のプライベートは地雷原ですので出来れば・・・」
「分かったわ、でもその聖様って止めて!様付けで呼ばれるのもだけど、何か字面がいや・・・」
「分かりました、では【さん】付けで」
「うん、お願い。後はお互いの事は出来るだけ不干渉で」
「分かりました」
謎の協定を結び、再び訓練の方に目を戻します。
後は勇者にとって分かりやすい敵性存在の出現が思い当たりますが、どうでしょう?
この晴天の中、頑張って切磋琢磨されている少年少女の中に突如現れる様なそんな無粋な事をする輩は
ヒュ~~~、ドスン!!
いましたね、でもどうせなら勇者に直撃してくれて構わなかったのですよ?
そんな勇者が圧倒的に有利になりそうな距離に着地しなくても良かったのですよ?
構えさせる暇なく襲撃して下さっても(ry・・・
土埃が晴れると中からコチラを見下したような笑みを浮かべた魔人?が立っていました。
「魔人が現れたわね!丁度良いわ!最近あんまり運動してないから体が訛っていたところなの!」
そう言って戦闘態勢に入り今にも飛び出しそうになるお嬢様達。
「ダメですよ!コレは勇者の恰好の良さを見せる為のイベントなのですから!大丈夫です。大体この後、更に強い敵が現れますから」
ならば良しと腰を落ち着ける皆さん。
しかーし、私は聞き逃しませんよ?
「訛っているのなら今日は帰ってからヒィヒィ言うまでしっかりしごいて差し上げますね?」
ピシリと凍り付くお嬢様達。
「私は何も聞いていない、私は何も聞いていない・・・・・」
聖さんは耳を拭ぎながら何かブツブツ仰っていました。




