98ページ目 勇者
豪視点
俺の名前は神皇 豪(じんのう すぐる)。
苗字があれ過ぎるが普通の高校1年の男子だ。
俺はいつも通り部活の朝練に行く為に家を出て学校に向かった。
その途中で俺にバスが突っ込んできて死んでしまった。
まだやり事も行きたい所もたくさんあったのに、人間呆気なく死ぬものだな。
しかし死んだ後も意識というのはあるものなのだろうか?
死んだことは当然無いし、死後はこんな世界だというオカルト話も信用できない。
意識があるということは俺はまだ生きているのではないか?
そう思い周りを見渡してみるけれど、一面真っ白。
自分の体はある。
おかしいな、バスが突っ込んだから五体満足なはずが無い。
とりあえず移動してみようとしたが、体は動かなかった。
自由に動いてはいるのだけれど、真っ白の所為で移動しているのかどうか全く分からなかった。
しばらくして不意に声が聞こえた。
「すまないな人の子よ」
「あんた誰だよ?」
「我か?我は汝らが神と呼ぶ存在だ」
「神様?嘘つけ!もしアンタが神様なら俺を救えていただろう?」
「何事にも予想外はある」
「神様のくせに、人1人救えないのかよ!」
「それは済まないと思っている」
「謝ればいいってもんじゃないだろう?こっちは死んでしまったんだぞ!」
「それは分かっている。なのでお前は生き返らせよう」
「本当か!」
「ただし、別の世界でだ」
「何で!?今までの世界だと駄目なのか!?」
「何事にも理というものがある。当然、神にもな」
「~~~。分かったよ、それで満足するよ。で、その何も知らない世界で俺にどう生きろって言うんだよ?最低限保証はしてくれよ」
「赤子から生まれ直せば問題なかろう?」
「何で赤ん坊からやり直さないといけないんだよ!今が一番楽しい時期だろう!それは年が40前後のヤツに言ってやれよ!」
「では、その年齢、姿のまま転生したいと?」
「ああ」
当然だ。また赤ん坊からやり直しとか面倒でしかない!
「言葉とか読み書きは出来るようにしてくれよ、後その他に何か保証も」
「おい!生き返らせてやるだけでもありがたいと思え!」
「何を言っている。俺たち下等な人間だって車で人にぶつかったらどんなに向こうが悪くてもこっちが賠償するんだぞ?神様なんだから俺に保証と賠償しろよ!」
「分かった分かった、読み書きと会話。後お前のステータスを強化してやろう。後は武器作成のスキルだ」
「武器作成?」
「そうだ、ただこれから転生する世界にも理はある。なので理を無視した物は造れんぞ?」
「分かった」
武器?武器が必要な世界なのか。
確か友達が貸してくれた本にあった様な展開だな。
その通りの展開なら問題無いだろう。
「次にその世界とお前のの状態だが」
「ああ、良いよ。そういうメンドウそうなのは。向こうに着いたら自分で確認する」
「・・・・・・そうか。分かった」
目の前が真っ白になって次に目を開けた時には、俺はよく分からない部屋の中にいた。
そこからは本当に瞬く間に時間が過ぎた。
呼び出された国の学校に入れられてソコで勇者として行動できるように戦いの基礎やこの世界の情勢なんかを学んだ。
戦いの訓練については余裕だった、何せ神様直々の力のおかげで俺のステータスは最強。
魔力の総量・敵性も限界レベルで苦戦なんかしなかった。
この状態の自分を再確認すると疑問が確信へと変わっていった。
同じ部活の友人が薦めてきたライトノベル?そっくりだ。
俺は強くて誰にも止められない、おまけに直ぐに可愛い彼女も複数できた。
しかもケンカどころか皆で仲良く俺を支えてくれる。
俺の時代キタ!俺が主人公だ!!
本で読んだときはこんなのツマンネーよと思ったが自分が体験するとなると、うん、良いものだ。
この世界には俺以外にも勇者は複数いると聞いた時は衝撃だったが関係ない。
俺を勇者ギルドに勧誘に来た女勇者は俺よりもずっと弱かった。
そして、この国では一番強い勇者らしい。
一番強い奴でこの程度なのだ、行動範囲を無駄に広げなければ問題無く暮らしていける。
しかしあの本の場合、登場する美女・美少女は皆主人公に惚れていた。
つまり、あの女勇者も俺に惚れるというわけか、いいね。
色んなタイプがより取り見取り、笑いが止まらないね。
周りの男の目が痛かったり、時には絡まれたりしたけれどもステータスに差がありすぎて勝負にならない。
はあ、敗北ってやつが懐かしいぜ。
もっとも、暴君になるつもりは毛頭ない。
良い思いをしている分、しっかりとクエストはこなす。
森に大量に発生した魔物の討伐にたまたま通りかかった店で強盗をしていた悪漢の下っ端から始まり組織丸々拿捕。
俺のステータスでは片手間の内容だ。
そしてクエストなり事件なりを解決して俺の評判はうなぎ上り、今や国を代表する勇者と言われている。
そのおかげか俺は国王陛下にお城へ呼ばれた。
まあ、日本を知っている俺からすればなんてことは無いがこの世界の人からすれば凄い建物だろう。
感謝の言葉と褒美をもらった。
その間に少し調べてみたがこの王様、俺と近いステータスを持っている。
が、魔法などの才能は圧倒的に俺の方が上。
つまりその気になれば国王様だって倒すことが出来るわけだ。やらないけど。
それから少し時間が過ぎて俺が完全にこの学校に馴染んだ頃だった。
何と別の国に留学に行っていたお姫様が少しの間だけ帰って来ていてこの学校に登校するというのだ!
国のお姫様なんて王道のヒロインじゃないか。
が、更にそのお姫様。
留学先の国のお姫様とそのお友達も一緒に連れてきたらしい。
らしいというのは今日が帰国されてから初めての登校日だからだ。
チラっと見た生徒の話によれば皆美少女らしい。
2国の王城から言い寄られるのか、フッ持てる男はつらいぜ。
ホームルームが始まった。
姫様達は皆一緒にこのクラスになったらしい。
まあ、トラブルを避けるためには一緒にしておくのが手っ取り早い。
俺も一気に声をかけられる。
簡単な自己紹介をしていく姫様達。
ああ、皆とんでもなくカワイイ。
ずっとはいないらしいけど、これからの学校生活を考えると楽しみでたまらないぜ!
神様達の集う酒場 §やおよろず§
「はぁ~・・・」
「お?どうしたい、ため息何か吐いて」
「今日、人の子を1人転生させたんだわ」
「それで?」
「その人の子がやれ保証だやれもっとオプション付けろだと煩くて・・・」
「ああー、最近多いよな。面会したら保証やら何らや求めてくる奴」
「あいつら普段は俺たちの事はほったらかしで自分たちの都合のいい時だけ頼って出会おうもんなら更に不当な要求をしてくるんだぞ?昔の人間は良かったんだがなー・・・・」
「まあ、最近の流行だよなー・・・。コッチも手一杯なのに自分の都合ばっかり押し付けるよな。で?その人の子はどうしたんだ?」
「マニュアル通りに基礎強化して適当なスキル付けてあの世界に通したわ」
「あの世界って、あの世界か?」
「他にどこがあるよ?丁度俺も参加したかったし、良い駒が手に入ったと思う事にするよ」
「確かに」
「よう!今日お前のIDタグの付いた人間が来たけど、間違いないか?」
「ああ、送ったよ。俺もアイツで参加するよ。期限ぎりぎりだな」
「ちゃんと説明したのか?」
「いらないだろ?会うなりコッチの非ばかリ指摘して保証だ何だ言ったげくもらうもんもらったらすぐに転生させろだぞ?」
「一応、義務何だが?その世界の常識とかその辺」
「説明が必要かと聞いたらそのまま送れって言われたから要望通りにしたよ」
「そうか。まあ、あの世界で俺たちが出来ることなんてたかが知れてるしな。どうなるもソイツ次第だな」
「ああ!っとそうだ。お前等聞いたか?どいつかは知らないが参加できなくなったヤツがいるらしいぜ」
「ああ、それ知ってる。確か悪戯好きのあのアイツだ」
「あー、アイツかー。何やらかしたんだ?」
「自分の駒にオプション付けまくってバランスブレイクさせたらしい。んで、その駒は普通にどっかの世界で普通に転生。アイツは参加禁止だって」
「そうか、そりゃあ良かった。アイツが絡むと碌なことにならないからな!」
「これからライバルだが楽しくやろうや!」
「「ああ!」」
そう言って酒を酌み交わす神様達だった。
神様だって愚痴を言いたくなることだってあるのです




