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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
97/211

97ページ目 侵食

リーズ視点


どうやらクロはあのアリフっていう人を執事にしたかったみたい。

それにまだ何か企んでいるみたいね。

聞きだして場合によっては止めないとココは自国(コスカート)じゃないんだから!

「ねえ、クロ」

「何でしょうか?シャル様」

「貴女、この後何をするつもり?」

「予定では皆さんのお父様の行動を制限しようかと」

他国で何をやらかそうとしてるのよ!?

「何をなさるおつもりですの?」

「私の手下の魔族(デモン)の監視下に入っていただいて暴走しないようにしようかと」

「暴走って何さ」

候補者の皆の雰囲気が少し変わった。

当然よね、自分の親を監視するなんて言い出したのだから。

「クロさん、流石にその発言は聞き逃せません。叔父上たちは陛下が即位される時に家臣として忠義を尽くすと誓っています。謀反を企む様な事はありません!」

「そうですか、すみません。ですが、バート様達の代になれば関係も変わるかもしれないじゃないですか。バート様が次期陛下になられるのは確定で皆さん納得されているのですか?」

「いや、それはまだ決まっていないが・・・」

「仮定の話ですが、もしご自分の息子が国王に即位できなかったとして絶対に問題は起きませんか?周りの方に利用されたり洗脳されたりはしませんか?」

「いや、そこまでは流石に言い切れないが・・・」

「ならば最悪を想定しておくべきです、それに監視と言っても護衛の役目もありますしね」

「魔族に護衛を?」

「はい。私が呼び出した魔族は私の言う事を聞いてくれますので、監視と護衛を兼ねています」

「監視は否定しないのだな」

「後で言われるより、先に言ってあった方がいいでしょう?」


まあ、クロの場合ほとんど護衛目的で使っているわね。

私達はクロの事を信頼しているから問題無いけれど、昨日今日あった人からすると信じられないわよね。

自分の命を握られているのも同じなんだから。

「何故こんなことをするんだ、放っておけばいいだろう?」

「そうなのですけどね。問題が起こってしまうとシャル様は気が気ではないでしょうし、友好国であるコスカートも何かしらの対応におわれるわけですよ。普通にされている分には問題無いので今のうちにと思いまして」

確かにシャルは実家の事だから大変でしょうし、友好国のコスカートは何らかの支援をしないといけない。

その時にはクロがその担当になる確率が非常に高い。

なので前もって準備をしておこうという事なのね。

「でもどうやってお父様たちを集めるおつもりですか?クロさんのお願いは到底聞き入れないと思いますが」

「大事な話があるとか言って個別に呼べないですかね?後は陛下にお願いするくらいしか」

「分かりました。私から陛下にお願いしてみましょう」

「バート様、よろしいのですか?」

「ええ。あくまで護衛として魔族を付けるのですよね?」

「はい、それは間違いなく」

無事に候補者の父親たちに魔族の護衛を付けることになったのはいいけど、すんなりと進むかしら?




「陛下、私共を揃って呼び出しとは一体どの様なご用向きでしょうか?」

「ああ。それなんだがな、シャルの友人である【冥土】・クロが俺たちに護衛を付けてくれるそうだ」

大陸魔王(ヴァイアス)のクロが護衛を?しかしその者はコスカートにいるのでは?」

「はぁ、入ってきてくれ」

「失礼します」

陛下の呼び出しと共に皆で部屋に入っていく。

当然、私たちが居ることにいい顔はされない。

そんな中、クロは周りを無視して更に前へ進み出る。

「どうも、改めまして【冥土】のクロです」

「ふざけるのも大概にしろ!メイド風情が魔王だと!!」

「お前たちこそしっかりと確認をしろ。討伐依頼書と同じ顔だ」

そう言われて再確認するもまだどこか信じられ無いみたい、クロって有名なのに認識されないわよね。

どうしてかしら?

「分かりやすく証明して差し上げましょう。出てきてください、【シャドウナイト】」

このシャドウナイトはクロのお気に入りで寮での訓練でクロが手が離せない時はよく代わりに訓練に付き合ってもらっている魔物だ。

「これが【シャドウナイト】?どう見ても【シャドウジェネラル】クラスだろう!?」

当然クロが配下に加える魔物がそのままのはずが無く、配下に加わればすぐに何かしらの強化を施される。

本来の【シャドウナイト】ならばただの少しヒョロメの体に何の特徴も無い鎧冑だけれど、クロによって強化・クラスチェンジをさせられた為に屈強な体と禍々しい鎧冑を装備している。

それぞれ持っている武器も禍々しくて知らない人が見たら完全に侵略者ね。

ただそれでも呼び方は【シャドウナイト】なのでクロに挑戦してきた冒険者や自称勇者は余裕だと踏んでいて実際に対峙してその姿を見て涙目になりそのまま負けている。

クロード陛下も口を開けたまま呆然としているわね。


「ク、クロよ。本当にこの・・・禍々・・・屈強な【シャドウナイト】?を我らの護衛に当ててくれるのか?」

「はい、そうですよ」

「しかし、頼りにはなるでしょうが目立ちすぎやしませんか?」

「大丈夫です。彼らは影の中に潜むことが出来ますので。普段は影の中から護衛してくれます」

「おお!!それは心強い!」

「ですが、護衛するのは相手から襲ってきたときの身です。コチラからちょっかいを出して相手に攻撃させて守ってもらうという手段は取れない様にしていますのでお気を付けください」

「我らがそんなみっともないマネをするはずが無いだろう!」

「そうかもしれませんが、戦力としては下手な冒険者のパーティーより余程強いので・・・」

こんなのが並んで進軍して着たら迷わず逃げ出す自信があるわ。

訓練でも勝てる気がしないもの。


「あ、あの、クロ様」

「はい、何でしょうか?」

「先日は知らなかったとはいえ、大変なご無礼を。大変申し訳ございません」

1人がそういうと先日の事を思いだしたのか次々と謝罪していく。

1人でコレだけの戦力を抱えているのだもの、とうぜん睨まれたくないわよね。

初めて会った時の態度から難航するかと思っていた話し合いだけれど、思ったよりもあっさりと片付いた。

これでクロはジラール国のトップの首をいつでも獲れるようになったわけね。

うん、順調に侵略していってるわ。

陛下たちは気が付いていないのかしら?それとも分かっていて頼んでいるのかしら。

何にせよ私が聞くわけにはいかない、クロにだって考えがあるはずなんだから。

なんてことを考えている時だった

「た、大変です、デニス様!」

1人の男がとても急いだ様子で部屋へ駆け込んできた。


「どうした!?」

「そ、それが。イザ様の容体が急に悪化しました!」

「何!?」

「昨日まではそれほど悪くなかっただろう!?」

直ぐに反応したのはアリフとデニスと呼ばれた男だった。

「あの方はアリフのお父様よ。イザはアリフの妹でモニカと同い年なの」

シャルがこそっと教えてくれる。

それは慌てるわね。

「専属の治癒師が付いていただろう!」

「それが、本当に突然容体が変わってしまいまして、担当の治癒師でも追いつきません!」

「ぐ、・・・陛下!」

「構うな、直ぐに行ってこい!」

「俺も!」

デニス親子は慌ただしく部屋から出て行った。

「あの!陛下、俺たちも構わないでしょうか?」

「行ってやれ。お前たちにとっても家族であり妹なのだからな。他の者は症状を和らげる事が出来るモノは無いか探せ!」

「「「は!」」」

その言葉で各自が一斉に動き出した。

「凄いね、ウチ(コスカート)だったらこんなに統制取れないよ?」

「ティアの所は何か問題があるの?」

「恥ずかしいけど、クロの言う通り権力争いが少しはあるから・・・」

「そう。でも、クロの意見を否定したバートさんの気持ちが分かったわ」

「皆、家族なのね」

「私たちも行きましょう!」

私達も後に続いて部屋を出て行く。

「これもそのイザ様をお救いして関係を友好的にしろというご都合主義の因果なのでしょうか?」

「ならその主義通りにちゃんと助けなさいよね!」

そう言いながら部屋へと急いだ。


部屋では小さな女の子が苦しそうにベットに寝かされていて、すぐ隣で治癒師が脂汗を浮かべながら治癒魔法を使い続けていた。

しかしその行為もむなしくどんどん悪くなっているのが私達ですら分かる状態。

アリフと両親がイザちゃんを必死に励ましているが効果は薄いでしょうね。

治癒師が必死に回復魔法をかけているので何とか死なない状態を保てているみたいね。

他の治癒師も部屋にやってきて今まで回復魔法を使っていた治癒師と交代したり回復薬を飲ませたりしている。

私達は邪魔になってはいけないので部屋の隅に移動して見守ることしかできない。

必死になって励ましていたアリフが何かを思いついたように私たちの前に来て急に跪いた。

「クロさん、お願いだ。イザを助けてくれ!」

「おい!アリフ!」

「俺にできることなら何でもする、莫大な報酬が必要なら死ぬまで返し続ける!だから」

「私は悪魔か何かですか?・・・・・・まあ、間違ってはいませんね」

「たのむ・・・」

懇願するアリフの方に手を置き、クロは優しく話しかける。

「分かりました、報酬は後で考えさせていただきますね?それと私がイザ様に行うことの許可をいただきたいのですが」

「許可?」

「はい、恐らくですが酷く嫌われる行為であると思います。まずはご両親に私が【看破】(リーディングサーチ)をイザ様に使用する許可をいただいてください」

【看破】を使えば相手の情報がかなり見えてしまうものね。

「構いませんが、何故【看破】を?我々も試しましたが特にコレといったモノは見当たりませんでしたが・・・」

「オヤジ!」

「ああ。分かったお願いします」

「それでは失礼して【看破】!」

・・・

・・・

こういう緊急の時にはまじめに迅速に行動するクロが考えている。

そんなに大変な状態なのかしら?

「んー、確かに何も異常はありませんねぇ・・・。」

クロの言葉に皆も肩を落とす。

「ちなみに昏睡される前はどんな症状だったのですか?」

「初めは頭が少し痛いという程度だったのですが、日に日に悪化していき数日前は全身が痛いと・・・」

「全身が・・・。魔力領域(マナ・ゾーン)索敵(サーチ)・・・・なるほど」

「分かったのですか?」

「イザ様の体の中から魔物の反応があります」

「体の中!?」

「はい。恐らくはとても小さな魔物が体の中を動き回り、それが原因で体が痛いのだと思います」


魔物が体の中に!?

魔物を討伐に行って寄生型の魔物に寄生されるというのは聞いたことがあるけれどこの子は街の外になんて出ないはずよね?

「最近、街の外へ外出されましたか?」

「ああ、半月ほど前に」

「ではその時ではないでしょうか?寄生型の魔物の様ですね」

「早く何とかしてやってくれ!」

「分かりました。治癒師さん、まだ大丈夫ですか?」

「?ああ、大丈夫だが」

「それでは、このままお願いします。私は準備をしますので。皆さんも申し訳ありませんが部屋の隅へ寄ってください」

「クロ、何をするの?」

クロのすることは信頼できるけれど、説明が無いので安心張り貼ります。治癒師さんは張り終わるまでこのままお願いします」

そう言ってクロは絨毯にいそいそと何かを書き始めたのだけれど、何も見えない。

私達は部屋の隅から少しでも見えるようにと色々してみるけれどやっぱり何も見えない、ただ絨毯の上に指を滑らせているだけだった。

ベットの周りを囲う様に数か所、クロは結界を張った。

張ったはずである。

私達の目の前でも絨毯を滑らせていたがやっぱり何も見えなかった。


「結界を起動してっと、それでは治癒師さんも皆さんの方へ」

そう言って自分だけが結界?の中へ残って何やらアイテムを取り出した。

あれは確か前にシャイナ様とウンディーネ様にお願いして創っていた聖水じゃ・・・

聖水と名の付くアイテムはたくさんあるけれど、どれも効果が低く対象も限られてくる。

よくて近寄ってこない、離れていく程度だ。倒すほどではない。

クロにそのことを話したら濃度が薄いのではないですか?と返されてしまった。

確かに聖水はウンディーネ様から少量いただける精霊水(スピルウォーター)を加工するのだからどうしたって濃度は下がってしまう。

湯水のごとく使うのはクロだけよ。

そんな貴重な聖水を少量イザちゃんの口へ入れる。

途端にイザちゃんは咳き込み口から何やら黒い(もや)の様な何かが出てきた。

靄は勢いよく移動し、部屋から出ようとしたけれど壁にぶつけた泥団子みたいな形に広がってしまうだけで結界?の外に出ることは出来ないみたいね。

靄は結界?内で唯一の的であるクロを見つける?と直ぐにクロ目掛けて移動し、クロの胸辺りからクロの中へ入って行ってしまった。

突然の出来事に呆然としてしまったけれど、少しして落ちつきイザちゃんを確認すると静かに寝息をたてていたわ。

「おお!ありがとう、ありがとう。クロさん!」

「ほんとに助かった!」

皆が口々にお礼を言い、クロを褒めているけれど私は素直に喜べない。

だって、さっきの靄はクロの中へ入っていったのだから、クロもこれからさっきの魔物に苦しめられる可能性があるのだから。


「クロ!さっきの魔物クロの中に入っていったみたいだったけど、大丈夫なの!?倒せるの?」

私の言葉に皆気が付いてハッとした。

イザちゃんは助かった。だけど原因はクロの中へ逃げてしまったのだから解決になっていない。

クロも結界?から出てきているので他の誰かにのり移るかもしれない。

私がそんな心配をしていると

「大丈夫ですよ、ゴートさん。お味の方はいかがでした?」

「薄くて味がしねぇ、ちょっとザラザラしただけだったぜ?」

「だ、そうですよ?」

「「「・・・・」」」



「「「め、メイド服がしゃべった!!!!????」」」

見事にハモった。

「この子はゴートさんと言いまして私の護衛です。」

「初めて見るな」

「私が初めてなのではないですか?メイド服に形取らせたのは」

皆何か言いたそうだったが、面倒になったのか諦めてしまった。

「数日で元気になるはずですよ。私ももうしばらくお世話になりますし、何かあればご連絡ください」

そう言ってクロは私達を部屋から出るように促した、うるさくしては迷惑だろうし邪魔な私たちはいない方がいいわね。

私達はそのまま部屋へ戻っていった。

翌日アリフとデニス公爵が来てお礼と経過の報告をしてくれた。

この一件でクロはジラール国の重鎮たちから確かな信頼を勝ち取ったみたい。

だって最初のトゲトゲしさは全くないもの。

皆とても接しやすくなったわ。

「あの魔物おかげで手間なく入り込めましたね。感謝されるのはありがたいですが、コレはコレで心配ですね」

クロの魔の手はコスカートに続きジラールでもじわりじわりと侵食し続けているようだった。

「ふう、これで一件落着だな」

「そうですね、陛下。しかしクロさんには大きな借りが出来てしまいましたね」

「ああ、イヴァン殿の手紙の内容もあるし気を付けないとな」


「クロ、結局報酬はどうしたの?」

「何ですかリーズお嬢様、はしたないですよ?」

「ただ気になっただけよ!」

「そうですねー、この国ではまだまだトラブルが起きそうですからその時に返していただきましょうか?」

「おこる事前提なのね・・・」



物語で大勢の人間が施設や名所へ移動すれば何かが起こるのは必然である。

一定の人が移動する先で常に殺人事件が起きるのも必然である。

そして何も起きなければ記録にも残らないのもまた必然である。

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