95ページ目 失敗と面倒事
少し遅いですが、謹賀新年。
あけましておめでとうございます。
今年も1年よろしくお願いいたします。
やってしまった、やってしまいました。
普段からお嬢様方に確認だの準備だのと言っているのにこの失態。
私は何とダメな奴なのでしょう。
「はぁ・・・」
思わずため息が漏れてしまいます。
「どうしたの?クロ。ため息何か吐いて」
「今日の魔力付与の訓練の事なんですけれど」
「どうかしたの?」
リーズお嬢様だけでなく他のお嬢様方も集まってこられます。
「実は、訓練の後にクロード陛下と今後について色々とお話をしていたのですが、どうやら魔力付与はこの国のエリートの方でも十分に使いこなせる方は少ないらしく、今日小さな子供たちも使えるようになったのはとても驚かれたそうです。」
「上級者向けの技術だから、しょうがない」
「魔力領域なんて達人とかの域だしね」
「あうう・・・」
そう、私はジラール国では使い手の限られている技術を教えてジラール国に戦闘面でアドバンテージを与えてしまったのです。
どの国が嫌いというのは今の所ありませんが、こういったモノは自力でどうにかして欲しかったです。
「それで、魔力領域も教えるの?」
「教えないわけにはいかにでしょう?あんなにハッキリ明日と言ってしまいましたし・・・」
「クロ式魔力領域なら今日のメンバーは大丈夫でしょう」
「コスカートに帰ってからお城の皆さんに訓練するかどうか聞いてみます」
最悪、他の国にも教えないといけないですかね?
でもまだそこまで仲良くないですし、突っぱねられますかね?
「それで、クロはその事だけで悩んでいたの?」
「いいえ、もっと面倒な事です」
そう、悩んでいた本命はコッチです。
どうにかしたいのですが、恐らく回避することは不可能。
ならばどう切り抜けるかを考えないといけませんが、不確定要素が多すぎます。
「何に悩んでいるの?」
「もうすぐ、この国の学校に期間限定で編入するじゃないですか」
「そうね」
「それで、陛下とバート様に学校の事を聞いたのですけれど、何といるらしいのですよ」
「何がいるの?」
「勇者ですよ!しかも、神様に直接この世界に転移させられた正真正銘の勇者様です」
「良い事なんじゃないの、勇者がいるのなら安全でしょ?」
「命は安全かもしれませんがお嬢様達が危険です!」
「私たちが危険!?どういうことよ?」
ココは意を決してお嬢様達に話して助けていただかないととても乗り切れない難局です!
「まず、前提で私が異世界から召喚された事は知っていますよね?」
コク
「そして、私の様に異世界から召喚される者には大体何かしらの特典と言いますか補正が付きます」
「補正?」
「はい。特に今学校に居られる勇者様は男性で年は16・17くらいだそうです。そしてコチラに来る前に神様に出会ったと証言しています」
「ふんふん、それで?」
「こちらに来てからまだ半年くらいしか経っていないのに魔物の大規模討伐や厄介な盗賊団などをほぼ一人で退治しています」
「凄いじゃない!何が問題なの???」
「ほとんど確定でその方には主人公補正と、ご都合主義の補正がかかっています」
「主人公補正と、ご都合主義???」
「はい」
「何それ?」
やはりこの言い方では分かりませんか。
「主人公補正とは文字通り物語の主人公が物語を進めやすくなる補正です。神様の加護、何故かステータスが高い、とても強力な武具を何故か持っている。など種類は多岐にわたりますがまず戦闘では負けなくなる補正です」
「そんなのあるわけないわよ」
「確認したところ、勇者様は陛下と同等かそれ以上のステータスという事です」
「・・・」
「更には、出会う人たちの好感度も非常に高く多少なら無理難題を言ったり、問題を起こしても問題無くと通ってしまいます」
「問題?」
「無理難題は陛下と普通に謁見や会話。まるで自分の家の様にお城にいる様になったりしますし。問題の方は打ち首級のミスをしてしまっても誰かが何故か庇ってくれて口頭注意くらいで済みます」
「え?嘘?」
お嬢様たちは信じられないようです。
当然です、私だって言っていて嘘にしか聞こえません。
しかし、そういった事を普通に起こしてしまうのがこの補正なのです!
「それで、ご都合主義?だったかしら。そっちは?」
「そちらは補正の中身に近いでしょうか?要するに補正の持ち主に都合の良いように周りの状況が進むという事です。その時点ではまずい状況でも、最後にはその方にとって最も良い状態に持って行こうとする力です」
「例えば?」
「超強い敵が出てきてその場の全員がボロボロにやられてしまって補正の持ち主が一念発起すると何故か都合よく秘めていた力が解放されたり、周りから超強力な味方が参戦してくれたりして戦況をひっくり返します」
「それはないでしょう・・・」
「まあ、学園の事はシャル様も含めてお話したいのですが・・・っと、丁度来られましたね。これも補正の力でしょうか?」
そう言い終わるとシャル様が部屋に入ってこられました。
お嬢様方はまじまじとシャル様を見ています。
「え?何?何かあった?」
当然、シャル様は混乱されています。
「私がご都合主義についてお話していました」
「ご都合主義?」
「ええとですね・・」
「なるほど、その補正があるのは良しとしましょう。でも、なんでソレがクロにもあると思うの?」
「今の話を聞いて何故あると思われないのですか?」
「「「え???」」」
やはり、一からお話しした方が速いですね。
「活動の場が異世界だとほぼほぼ補正かかかります。まず、私は異世界からコチラに呼ばれました。私から見ればになりますが、異世界に行く・呼ばれるのはおおよそ不慮の事故で死んだ、ある日突然神様に連れてこられた、異世界の儀式か何かの事故で急に呼ばれた。となります。ちなみに元の世界に帰る方法は無いのが定石です。この段階で私も高確率で補正者です」
「でもクロは普通に生活しているじゃない」
「普通って、まずイヴァン陛下に剣を向けて普通に生活できているのがおかしいです。どんな理由であれ、最低投獄はされます。なのに気が付けば陛下には気に入られ、城を自由に出入りする権利をいただき、あまつさえ料理を振舞う状態です。普通に考えれば起こるはずがありません!」
「その流れで行くなら大精霊様もだよね?」
「はい、出会ったのは偶然。で良しとしましょう、今までも何件かそういう事例はありますから。ですが、私達の寮で生活はおかしいです。理由も私の傍が居心地良いからというのは無理がありすぎます」
『私達。迷惑だった?。』
「あ、いえいえ。そういう事ではなくてですね、私にも補正がかかっているという事の証明にお話ししているだけですので、そんな泣きそうな顔にならないでください!お願いします」
ふぅ、大精霊様にこういった話は禁止ですかね?
「脱線してしまいましたが、私にも補正がかかっているであろうことはそれほど重要では無いのです!」
「十分に重要な気もするけれど、それなら何が重要なの?」
「学園に居る勇者様が補正者だという事です!」
「それだとどう問題があるの?」
「まず、こういった補正者にはお約束としてお色気イベントがあります。通学中に女性にぶつかってそのまま服を半脱ぎにさせてしまい、さらに自分はその女性の胸元に顔を埋めたまま胸を揉みしだけたり、着替えの移動教室の時に適当な部屋に入るとたくさんの女性が着替え中だったり、宿などで風呂に入るとたまたま女性が先に入っていてソコに出くわすなどです」
「何それ!?なんでそんなこと起きるのよ?」
「補正の力というか、その補正を付けたのも恐らく神様なので神様の力ですね」
「そんなの理不尽じゃない!」
「当然、怒られますが軽い口頭注意だったり、少し殴られて大体終わります。」
お嬢様たちは憤りを隠せないようです。
「それに、こういう場合は周りに数人惚れている方がおられてその輪に加入することになります。基本ハーレムです。また奪い合うようなことはほとんどなく皆さんで共有されます」
「へ?それでいいの?」
「勇者様はそれでいいでしょう、両手に花状態ですし、文句もないでしょう。文句が出るとすれば複数の方とお相手しないといけないことにでしょうか?まあ、緩衝材の役目を負わされることもありますが周りから見れば、『コイツ死ねよ』ですね」
「死ねよに納得はできるかも」
「更に言えば、対象は美女・美少女限定です。普通の方は上手く除外されています。この補正の恐ろしい所は補正の被害者はほぼ無条件で相手に惚れるという事です。国も身分も種族も敵味方も関係なく」
「身分も種族も敵味方も関係無いの!?」
「はい、美女の姿をしていれば大体は効果が適用されます」
「身分もってことは王女でも?」
「はい。異国からやってきた美しいお姫様なんて格好の的です。後、惚れる理由もよく分からないものが多いです。何故か初めて会ったときから好意的になります。ソコは物語をテンポよく進める為でしょうが他の人に好意を寄せている人もほとんど補正者に靡きます」
「え?つまりそれって私たちもその勇者様が好きなるってこと?」
「はい」
「そんなの嫌よ!何でそんな会って直ぐのヤツに惚れないといけないのよ!」
「神様の力ですので何とも」
「それでクロの話だと私たち全員、特に私とティアが危ないのね?」
「はい、身分が身分ですので」
「何か対策は無いの、クロ」
「ぱっと思いつくのはこんな所です」
①勇者を殺す
②学校へ行かない
③勇者となるべく関わらない
他
「以上になります」
「①って、本気?」
「はい、一番確実ですが補正の所為で無理でしょう。同様に他の選択肢も結局の所、勇者様の都合のいいように動いていくかと・・・。」
「じゃあ、国外に逃げれば・・・」
「時間を掛けていつか出会います。絶体絶命の所を助けられて一目ぼれ状態ですね」
「実質、回避方法は無いという事?」
「はい。後は私の補正が勇者様を上回ることを期待するくらいでしょうか」
「分の悪い賭けね」
「でも、どうしてクロはそんなに嫌がるの?聞いてる限り嫌だけど、悪い事ばかりでもないんでしょう?問題を解決してもらえるんだから」
聞きますか、それを聞いてしまいますか。良いでしょうお答えします。
「大事な大事なお嬢様達をどこの馬の骨とも知れない男に好き勝手にされるなんて我慢できますか!?」
ダン!!っと机を叩き言いました。
「「「は?」」」
お嬢様達は呆然としていますがお付きの方々は違います。
「確かに!その通りです!」
「姫様を勇者の手になど渡せません!」
ガシ!!!
固い固い握手が交わされます、私たちの意思は今、一つになったのです!
勇者からお嬢様達をお守りする為に!
あ、でもお2人も気を付けてくださいね?どう見ても攻略対象ですよ?
お付きの方も結構複雑な経緯がありソコを助けられてコロリンしてしまう事も少ないですよ?
「って言ってるクロは大丈夫なの?」
「大丈夫です」
私が勇者に?ナイナイ。
芽生えてもただの友情ですよ、何故に私がヤローに惚れないといけないのですか?
「クロは大丈夫よ!」
「リーズ、でも神様の力が働いているんだよ?」
「クロなら問題無いわ!」
「それで、結局どうするの?」
「聞いたところによりますと、既に数人被害者が出ていますのでその方々が頑張って勇者様をナデナデしてくれることを祈るのと、極力勇者様に近づかない、固まって行動するですね」
「被害者って・・・」
「運任せじゃない・・・」
「被害者の方の中に本命に近い方がおられると思いますのでその方を立てつつ私たちは勇者様を避けるという方向で行きたいですね。イローナ様がお1人になってしまうので心配です」
「お任せください!必ずやお守りして見せます!」
力強くおっしゃられるメリッサ様。
「それでは、勇者様は極力避ける方針でお願いします」
「「「わ、分かったわ」」」
と言っても補正の力で強引にねじ込んで来るでしょうが・・・。
ある程度は我慢しますが度が過ぎる様なら・・・。
え?何ですかシャル様、アリフ様に言ったお話の内容ですか?
明日皆さんの前で言いますよ。
?なんでそんなに驚いた顔をするのですか???
異世界チーレムって自分が主人公だとウハウハでいいかもですが、モブに転生とかだとは気が気ではないですよね?
どんなに好意を持っていても出会った瞬間に主人公様にコロリンです。
しかも補正の所為で相手を悪く思えないという効果までついています。
さーてさて、クロちゃんは無事にお嬢様達を守り抜けるでしょうか?
神様、平等という言葉の意味を辞書を引き直して再確認してください。




