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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
92/211

92ページ目 模擬戦7 (躾)

クロード視点


俺は悩んでいた。

シャルの訓練の成果やティファニール姫たちの実力は簡単な模擬戦をやればすぐに解ってもらえるだろうと思っていた。

しかし、問題はイレギュラーで付いてきた大陸魔王(ヴァイアス)のクロ。

コイツは下手な奴と戦わせるわけにはいかなかった。

建て前上はこの大陸を支配する魔王である。

それも先代?のリッターを一方的に倒したほどの実力者だ。

が、見た目は完全に普通のメイドである。

シャルたちが帰って来て1番に大臣たちとも引き合わせたが誰もクロが魔王だと気づいていない、それどころか1貴族付きのメイドが入城などと文句を言っている者も多くいる。

俺は討伐依頼書が回ってきて直ぐに家臣たちに注意喚起をしたがどうやら誰もまともに聞いていなかったようだ。

まあ、あの依頼書(着替え中の肖像)では危険視しろという方がどうかしているが・・・。


まあ、相手が勇者であれ他国の王であれ嫌いな奴とは極力会おうとはしない自己中心的な家臣たちよりも接する機会が自然と多くなる子供・次期国王候補生たちが気がかりだ。

間違ってケンカを売ってしまう前に何とか実力を披露させて周りに認めさせる算段だった。

相手は俺の次に強いバートを考えていたのだが、アイツは妹のシャルと試合をしている。

結構本気だったのが窺えるので、俺としては嬉しい限りだが・・・

何で戦りやがった!?別の日に個人的にでもよかったじゃないか?こうなったら俺が戦うしかないか?だが俺は国王だぞ?その俺が負ければ国の屋台骨が傾く!

誰かにもう一戦やらせるか?

いやいや、流石にそれはダメだ、アイツらの将来の事を考えると危険だ。

やはりココは俺が・・・


などと考えていると、試合も終わり和気あいあいとした雰囲気になっている。

これは、無理に披露しなくても良いのではないか?

クロの事は普通のお付きメイドと見られているようだし、わざわざ危険を冒さなくてもよいのではないか?

うん、そうしよう!危険は回避するべきだ!

そう算段していたが、残念ながら思い通りにはいかなかった。

実力はあるが、自分よりも弱い者は全て見下し自分の嗜虐心を隠そうともしないその態度から次期国王としては難ありと判断されたアリフ・デニスが絡んできたのだ!

確かにアリフからすれば自分は戦ってすらいないのに同等の実力と見られてしまうことが辛抱できないのだろう。

まだ悪口だけならばよかった、しかしアリフは何を血迷ったかティファニール姫を教育すると言い出した。

確かに実力ではお前が勝っているだろう、しかし相手は他国の王女だ!お前のその無知な意見が通ることもそれを許容することもできない。

コスカート国がジラールに飲み込まれる?

バカも休み休み言って欲しいものだ。

誕生祭の時に見た近衛兵たちの強さはジラールの精鋭にも十分通用する。

しかもイヴァン殿とカティアナ殿、あの2人の実力は生半可なモノでは無い!さらに戦争ともなればコスカート国とを魔族(デモン)の脅威から守り続けている守護者がコチラにやってくる可能性もある。

イヴァン殿に聞いた話では今も最前線で魔族と戦い続けているコスカート国最強の騎士。

そんな奴まで参戦してきたらいくら俺でも勝てる気がしない。

当然、アリフも勝てるはずが無い。

性格に難ありと城の外の世界を知らせることなく育ててきた影響がこんなところで出てきた。


更に止めようとしたリーズ嬢たちを吹き飛ばしてしまった。

幸いイローナ姫は無事だったようだが、姫の目が普通ではなくなっている。

例えるなら、本気で切れた大型魔獣の様な感じでアリフを睨みつけている。

幸いアリフは気付いていないようで更なる被害は食い止められている。

しかし、俺は見落としてしまっていた。

今、この場で最も危険な奴が野放しになっていることを。

死神を押し留めている鎖が切れてしまった事を認識できないでいた。

俺の隣で今まで一言も話さずにただ試合を見ていた女騎士が動こうとするが手でそれを制止させ、動き出してしまった。

クロ(魔王)が・・・。

会話の流れからクロがアリフの相手をすることになった。

まあ、クロならばアリフに負ける、という事も無いだろう。

実力を知ってもらうにはいい機会だし、アリフも世の中の広さを知ることが出来るだろう。

これでもろもろ問題は解決するし、後はどう謝罪するかだな。

娘に手を出されそうになったのだ、チョットやソットの謝罪ではどうにもならんか・・・。


「か、陛下。陛下!」

!っと俺としたことが考え事で周りが見えていなかったらしい、シャルが慌てたように俺に話しかけている。

「どうした?シャル」

「どうしたではありません!クロが怒っているのですよ!?止めないと!」

なあに、クロだって加減くらい弁えているだろう。

アリフに薬になるくらいになら痛めつけもらっても一向に構わない。

「陛下!今の状態は大変に危険です!早く何かしら対応をしなくては!」

メイドのコーラルも焦ったように進言してくる。

普段は物静かなコイツがここまで焦るとは一体・・・。

「報告書にも書きましたが、クロさんはリーズ様の事になると抑えが効きません!イヴァン陛下も平気で殺そうとしたほどです!」

へ?イヴァン、クロに殺されかけてるの?

今、アリフはクロの目の前でリーズ嬢並びにクロがお嬢様と呼び仕えている娘たちに攻撃し傷付けた。

つまり


魔王に戦争を吹っかけますか?

はい   いいで


の選択肢で【はい】を選んでしまったのだ。

知らなかった。

そんなことは言い訳にもならない、先に手を出してしまったのだから・・・。

「とにかく早急にティファニール姫たちの回復を!」

最悪皆殺しもあり得るか・・・。

相変わらず、アリフは自分が負けるはずが無いと余裕の表情だ。

出来れば試合という事で極力穏便に済ましたい。

「皆もティファたちを回復させるの手伝って!」

シャルがとりあえずリーズ嬢を回復させている。

クロを止める、抑制するには彼女の復活が一番なのは言うまでもない。

「リーズ、大丈夫?」

「ええ」

「悪いけど、すぐにクロを止めて!」

顔を上げリーズ嬢が叫ぶように言う

「クロ!私たちは大丈夫だから!ケガとかも無いから!」

その声にクロが反応してコチラを見る。

俺も慌てて確認するが怪我をしている娘はいなかった。

「大丈夫ですよ。リーズお嬢様、少し躾けるだけですので」

クロが再度そんなことをアリフを完全に無視して言うのでアリフの顔は鬼の形相になっている。

これはイカン!

俺が審判に割って入り少しでも穏便に事を運ぼうと思った時だった。

「らぁ!!」

怒りを抑えきれなくなったアリフが何お前置きも無く斬りかかった、しかも真剣でだ。

「危ない!」

誰かが叫んだがもう遅い!

クロはリーズ嬢の方を向いていてアリフを全く見ていない、コレはどうやっても避けれない。


クロの体を切り裂くと思った刃はクロに当たることは無かった。

何時移動したのか?振り下ろされた時には既に懐に入り込んでおり、アリフの胸に手の平を当てていてパッと見て拳闘の構えの様に見えた。

「へぇ、やるじゃ」

「フッ」

何をしたのだろう?

クロが少し体を動かしたと思った瞬間にアリフの付けていた軽装の胸鎧を粉々に破壊し、アリフも少し後方へ吹き飛ばしている。

今のは風の魔法か?だが魔法の反応は無かった、つまり・・・。

シャルの方を見る、あの娘も拳闘をしているからだ。

眼を見開き、硬直している。

無理もない、俺たちの知る拳闘とは全く違うのだから。

「クソ、このメイドが!」

アリフが何度も斬りかかるがクロには当たらない。

まるで舞踊でしているかのような独特の動きで回避、又は振り下ろす前に懐に滑り込まれて威力を殺されてそのままカウンターをくらっている。


肩で息をして鬼の様な形相のアリフに対してクロは涼しい顔で拳を作るのではなく他の平を広げて構えている。

「フゥ~~~」

クロの息を吐く音が鮮明に聞こえてくる。

広いはずの訓練場でたくさんの者が見ている中でクロの息を吐きだす音のみが鮮明に聞こえてくる。

そして吐き出す息と共にクロの構えも変化する。

拳を作り自身の前に構える、これから本格的な攻撃に移るのだろう。

その変化だけでアリフは顔をビクつかせる。

当然と言えば当然か、今までの攻撃は当たらず、手の平による攻撃のみだったのが拳での攻撃になるのだから威力のが上がるのは誰の目にも明らかである。

もう一度言うがクロは涼しい顔で構えている、先生が生徒に構えはこうですよと教えているかの様に。

まあ、相手から見れば恐怖以外の何物でもないわな。

ジッと睨んでいたクロが動いたのに対してアリフは動けていない。

一拍置いて動き出したくらいだ、恐らくアリフの隙をついて移動したのだろうその為に反応できなかったのだ。

「シッ!」

ゴキッ!


クロの短い息づかいと共に拳がアリフの脇腹にめり込み嫌な音が鳴る。

誰が見ても肋骨(ろっこつ)が折れたのは確実だった。

ついでのように逆の手で顔に向かって拳を振るうが顎下をかすめる程度だった。

苦痛に耐えながらも距離を取り体勢立て直そうとしたアリフだったが、その場で尻もちをつき動こうとしない。

いや、何やら体は揺れているので動けないのだろう。

その間にクロは悠々とアリフの前に立ち、踏み抜いた。

何をってナニをだよ・・・。

響く絶叫、もはや肋骨が折れたのも忘れのたうっている。

クロ怖え~。アレは堪らんわ。

よりにもよってそこを潰すか!?

まあ、制裁には一番なのかもしれんが・・・。

しかし俺は甘かった、甘いというしかなかった。

クロはのたうつアリフの顎を掴んで持ち上げ強引に口を開けさせる。

そしてアイテムボックスからポーションを取り出し強引に飲ませた後に、軽く押し離した。

最初は意味も分からず呆然としていたアリフも痛みが取れ自分が回復させられたと分かり、更に顔を赤くしている。

当然だ、メイドにボコボコにされて更に傷まで治してもらう。

アリフのプライドはボロボロだろう。

自棄になったのかクロにまだ襲い掛かるアリフだが、クロに通じるはずもなく簡単に投げ倒されてしまう。

頭1つか2つ小さなメイドに、である。

受け身も取れなかったのか呼吸がまともに出来ず、動けないうちにクロの第2波が迫る。


響く絶叫、コレが後数回繰り返された。

途中からはアリフに攻撃の意思がなくとも回復させられて潰された。

もう悲鳴も上がらないのか、息をしているのみだ。

俺たち(男限定)も無意識に股間を締め、手で隠している。

倒れて息も絶え絶えのアリフに跨って顎に手を添え、娼婦の様な雰囲気を醸しながら色っぽい声で質問する。

「まだ、続けられますか?」

必死に首を振るアリフ。

クロは「そうですか」とポーションをアリフに渡すとリーズ嬢たちの方へ歩いて行く。

当然、近くの者(特に男)は距離を取る。

「リーズお嬢様」

「クロ・・・」

どうやら主の安否確認の様だ。

当然だな、ここまでの事をやっておいて主を蔑ろにするはずもない。

「短絡的になりすぎです。ティファ様の救いに行かれた時、魔力領域(マナ・ゾーン)を使われていませんでしたよね?使われていればあの程度の不意打ち十分に対応できたはずです。それに・・・」


何やら説教が始まった。

それもリーズ嬢だけでなく全員に、だ。

途中からティファニール姫も呼ばれて座らされている、当然シャルもである。

「と、言うわけです。分かりましたね?」

「「「はい・・・。」」」

クロのお説教が終わるとシャルたちはそのまま前に倒れ込んでしまった。

「どうした、シャル?」

心配そうに駆け寄るバートにシャルが

「あ、足がね・・・」

「大丈夫か!?」

足を確認しようとするバートに「ダメー!」と大声で静止させようとするシャルだが、少し遅くバートはシャルの足に軽く触れてしまう。

「ヒャーー」

「シャル!?大丈夫か!?」

「あ、足が痺れているだけだから放っておいて。触られると余計に・・・」

どうやら痺れているだけの様でよかった。


安堵しているとクロがやって来る。

無意識のうちに数歩下がったのは仕方が無いだろう?

「あれは大丈夫なのか?」

「大丈夫です、数分もすれば治ります。私の居た世界では正座と呼ばれ、祈祷の時などに使われたりお説教の時に使われたりします」

「何故、説教時に?」

「見て分かる様に慣れていなければ数分で足が痺れてきますので、まあ体罰の一種ですね。痺れに我慢する方にばかり意識が行くので内容なんてほとんど入って来ないでしょうが・・・」

「軽く拷問だな。ただ座っているだけであそこまでとは・・・」

「拷問でしたら後手で緊縛して膝下を露出させた格好がいいですよ。三角の木の板を敷きつめて座らせる方をほとんどど動けないように柱に固定して正座させます。そしてその上にある程度の重りを置いておけば木が脛に食い込んでそれはもう酷いことになりますよ?少しでも動けばそれはそれで別の所に負荷がかかって大変なことに・・・」

「分かった。もういい。止めてくれ!」

最初に危惧していたクロにちょっかいを出すのでは?という案件はきれいさっぱり無くなったが、今は今で問題だ。

軽く倒してくれる程度で良かったのだが、いや、死者が出なかっただけマシか?

アリフには可哀そうなことをしたと、自業自得ではあるが思ってしまった。

クロの扱いをどうするべきか・・・。

クロは怒ります。

お嬢様達に手を出したのだから当然です!

お嬢様にだって怒ります。

状況を把握せずに、突撃をしてしまったのだから当然です!

対魔物戦なら死んでしまうからです。

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