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ファミリアエッセンス  作者: 玄亀
91/211

91ページ目 模擬戦6

シャンタル視点


模擬戦の最終試合、戦うのは私とバート(にぃ)

何となくそうなるような気はしていた。

参加を希望した候補者も人数が足りていなかったし、あのバート兄が他の人を私と戦わせるわけないと分かっていた。

口ではどういっていても私の心配をしてくれている事だけは分かっている。

私の成長を見せたいと思う反面、失望させてしまったらと思う気持ちもあって気分は少し憂鬱。

「シャル様!」

中央へ向かおうとしているとクロがパタパタと近寄ってきた。

「シャル様、まずは魔力付与で近づいて属性付与と魔力付与を同時に使って軽く攻撃してみてください」

明確な作戦の指示、他の皆には無かったこの指示に私はそれほど頼りないのだと痛感させられ、更に落ち込んでしまう。


パスン


軽く頭を叩かれた、その手にはいつも訓練で使っているハリセンが握られていた。

クロは優しい笑顔で言葉をかけてきてくれた

「大丈夫ですよシャル様。今まで手も足も出なかった相手に急に勝てる!なんてことは滅多にありませんから。最初からできることをやっていきましょう」

え?私、今励まされている、よね?

「ダメだった部分はジラール国に居るうちに私が徹底的に叩き直して差し上げますので、どうぞお気になさらず全力で試合に臨んでください」

実に良い笑顔である。

そしてその笑顔の行く先には何があるか私は身をもって知っている。

向こう(学園)でクロが行った訓練を思い出す・・・。

ヤバイ!ヤバイヤバイヤバイ。

負けたら訓練。負けたら訓練。負けたら訓練。

一瞬で私の頭の中は試合の事よりも負けた後に待っている拷問(訓練)で埋め尽くされる。

やるしかない!と。

「シャル様、気分はどうですか?まだ緊張しますか?」

あ、クロは明らかに緊張している私の為にワザとあんなことを言ったみたい。

「大丈夫。いつも通りできるわ!」


審判はクロが代わりにすることになり、バート兄と向かい合う。

「それでは。試合、始め!」

クロの合図と共にとりあえず教えてもらった通りの攻撃をしてみる。

魔力付与の高速移動からの単純な攻撃力を上げる魔力付与+属性魔法による左手(サイドアーム)のストレート。

バート兄は驚いた表情で2本の剣を交差させて私の攻撃を防ぐけれど吹き飛んでしまった。

私としては様子見のつもりの一撃。

それが長い間遠い目標であったバート兄を簡単に吹き飛ばした。

もちろんバート兄が油断していたのも分かっている、それでも今までは全力で打ち込んでもビクリともしなかったバート兄を吹き飛ばせたのは私の中に大きな自信を生まれさせた。

”最低限”私でも戦えると、試合にすることが出来ると。

自分でも信じられないとバート兄を見つめた。


見るとバート兄は普段の温和な感じから戦闘態勢の雰囲気に変わっている。

それは私を相手と認めてくれた証拠であり、それだけで私には十分だった。

しかし、これで満足していては皆に笑われてしまう。

私の目標はもっと上であり、ここで止まるつもりは毛頭なかった。

バート兄は剣を構え、その剣に雷を纏わせる。

バート兄は雷属性の使い手であり2本の剣から繰り出される雷を帯びた剣戟は厄介極まりない。

私も初撃と同じように魔力付与と属性魔法で戦いやすいように準備を整える。

とにかくあの雷による麻痺が厄介、ステータスを上げて風で雷に対抗する。

月属性の魔法を使わないのは周りに自分の手の内を知らせない為、何よりギリギリで出す方が格好いいというよく分からないことをクロが言っていたから。

1つ目は納得できる、手の内を知られて対策を立てられると厄介だ。

2つ目は、よく分からない。

もし使うならバレないようにとの事だった。


バート兄と正面から打ち合う。

流石に突きは躱すしかなかったけれど、斬撃に対しては撃ち落して反撃する。

バート兄の姿が急に掻き消える!

コレは属性魔法を利用した移動系スキル【雷歩】。

小さいい時に聞いた話では直線の移動の速度を限りなく早く行うスキル。

それをバート兄は複数回繰り返して直線的ではあるけれど曲がって別の向きから攻撃を仕掛けてくる。

当然その移動分は魔力も使うし体にも負担がかかる。

それでもほぼ一撃で相手を沈めるスキルに繋ぐことが出来る。

そして、私には動きを捕らえることが出来ないのでどちらにしても脅威でしかない。

タダではやられない、私だって訓練してきたスキルがある!

魔力領域(マナ・ゾーン)

探知スキルを自分の魔力で指定した範囲のみに限定する代わりに探知の精度を著しく上昇させるアレンジスキル。

クロはこのスキルを私たちに徹底的に叩き込んだ。

それだけに自信を持って使うことが出来る!


私はどこからでも対応できるように構えてじっと待つ。

横!

私はサイドステップで距離を少しでも稼ぎながら体の向きを変え、バート兄の両手突きを両手で逸らす。

当然、雷のダメージが入ってしまうが微々たるもの、私はすかさず蹴りで反撃するものの既に距離を【雷歩】で取られていて風の切断系魔法もあっさり防がれてしまった。

受けに回っていたらダメージ蓄積で私が不利!

私は切れかかかった属性魔法を付与しなおして攻撃を仕掛ける。

残念ながら今の私にバート兄を一撃で倒せる様な技は無い、それならせめて精一杯攻撃をするだけ。

自分の成果を見せる為に!

私が攻勢に出るとバート兄は何故か少しだけ及び腰になっている。

なぜ?私の攻撃なんて簡単に見切れるはずなのに?

理由は少し戦っていて分かった、私の攻撃には少しだけれど斬撃の属性も追加されている。

バート兄の武器の緩衝材や服が切れているのを見つけてようやくわかった。

ダメージはほとんどないかもしれないけれど、コレは私の戦術を大きく変える発見だ。

今までもそうだったのかもしれないけれど、それは分からなかった。

私が直ぐに負けてしまっていたから・・・。

でも今は何とか食い下がれるようになって初めて効果を現した!

かといって直ぐに威力を上げて使うようなことはしない。

下手をすれば自分も傷つけてしまう、実戦で本格利用は訓練で確かめてから。


試合は再び打ち合いになっている。

というか攻めさせてもらない、打ち合いと言えば聞こえがいいけれど本当はバート兄の攻撃を迎撃しているだけ、それだけで精一杯・・・。

「全体的に強くなっているな。中でも魔力の総量がずいぶんと上がっている」

訓練した(拷問に耐えた)からね!」

クロが魔力領域にこだわった理由。

「魔力のコントロールと持久力(総量)アップに使えますからね。あとスキル熟練度も稼げますよ!とってもお得ですよ!!!」

コレは今でも欠かさず毎日行っている。

正に今の様な戦いを意識して伸ばしてきたスキルと魔力総量なのよ!

と言ってもさすがに限界が近いわ。

魔力切れ特有の倦怠感が体を蝕んできている。

次の攻防で決めないと!

バート兄の顔を見る、何かを決意した様な顔で構えている。

これを読み外すと負けだけど、仕方ない。


【雷歩】で近づき、連続攻撃をしてくる。

躱す、いなす、弾く。

まだ、まだこのタイミングじゃない!

連続攻撃の中のあの一撃を・・・・

キタ!剣2本を使った同時斬り、バート兄の勝負を決める時によく使う攻撃!

私はこの攻撃を片腕に月属性の斥力を付与した状態で、弾く!

武器を弾き飛ばされたバート兄の顔が驚愕に染まる、私はその隙を逃さずに腹部に一撃を入れる。

バート兄の雰囲気が普段通りになり私の頭を撫でながら

「お前の勝ちだ、シャル。よく頑張ったな」

バート兄・・・。

その顔は今まで見たどの顔よりもやさしく見えた。

「勝者、シャンタル様!」

クロの勝利者宣言で更に勝てたという実感が湧いてくる。

私はフラフラになりながらもクロたちの方へ歩いて行く。

バート兄は案の定、普通に歩いてくる。

「クロ、勝てた!私、勝てたよ!!!」

皆私を称賛してくれた、仲の悪かったはずの他の候補者達ですら私を称賛してくれた。

私の努力は実を結んでいるんだ!



「だらしねえなお前等。ほとんど負けてるじゃないか、ジラールの王族の名が泣くぜ!特にバート拳闘使いになんて負けやがってよ」


他の観戦者を押しのけて現れたのはアリフ・デニス。

実力はあれど、性格に難ありと候補者から降ろされた男だった。

「なあ、陛下!こんなザコ共を候補者にしておくなら俺を候補者に戻してくれよ!こんな奴ら直ぐに蹴散らしてやるからよう。特に、この拳闘なんてくだらないことをやっているシャンタルとその一派をよお」

本当にごく少数だけれども、私と一緒に拳闘の修行をしている者もいる。

この男は自らの要望を通すのに暴力を振るう事を厭わない、そして実際に強い。

皆、数ある武器の中から不遇される拳闘を選んだ大事な仲間だ。その人たちに迷惑はかけられない!

「やるなら私が相手になるわ!」

魔力切れでフラフラだけれども、逃げるわけにはいかない!


しかしアリフは私ではなく、後ろのティファたちを見ている。

「おい。お前、来い!」

迷うことなくテファの腕をつかんで引っ張る。

「いや!辞めて、痛い!」

「おい!アリフ、やめろ!コスカート国の王女だぞ!?」

「だからじゃねえか、今からしっかり教育しておくんだよ。どうせ俺たちの国に飲み込まれるんだしよお」

な、何てこというのコイツ!?

友好を深める為にも来てもらっている相手に向かって。

陛下、何で何も仰ってくれないの?

陛下が止めて下さったらアリフでも従うしかないというのに。

「「「ティファを離しなさい!」」」

「フン!」

剣の一振りでリーズ、ミューズ、カグヤが吹き飛ばされる。


「心配するな、お前らにもしっかり教育してやるからよ」

アリフ~~~!

「それは困ります」

目の前が真っ赤になって飛び掛かろうとした私は横から聞こえた落ち着いた声に正気に戻った。

「お嬢様方の教育は私がイヴァン陛下から直々に仰せつかっています。アナタの様な方に勝手に教育されては困ります」

うん、クロ怒ってるよね?怒ってないわけないよね?

普段からリーズを傷つけたら殺す宣言してるもんね。

今、リーズ以外にも吹き飛ばされたし怒っているよね?

「強い事を是とするこの国の方針に文句を言うつもりはありませんが、アナタはあんまりです。私が(ツブし)ます」

「俺を、躾?お前が?ハハハハ、それは逆だ!お前はされる側だ!この俺になぁ」

「ティファ様の手を離していただけますか?」

クロの声のトーンが一段階下がった。

何かとても怖いんだけど!?

「なら、まずはお前から教育してやるよ」

ティファを押し飛ばし、アリフは余裕の表情でクロを見ている。

クロもクロで話しかけられる雰囲気ではなくなってしまっていた。

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